今週の小ネタ:魚で頭が良くなるぞ!朝日で睡眠の質が上がるぞ!ブラジルナッツで炎症が収まるぞ!
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
魚で頭が良くなるぞ!のメタ分析
「魚は頭に良い!」と昔から申しまして、この考え方を支持するデータもチラホラあるわけです。魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸は抗炎症作用が大きいので、認知機能の低下から脳を守るのに役立つと考えられているんですな。
が、従来の研究は結果が一貫しておらず、なかなか明確な結論を出すまでには至ってなかったんですが、最近のメタ分析(R)は、
- 魚を食べると認知機能、認知症、アルツハイマー病の予防になるよ!
って結論を、割と精度が高い感じで出してくれていて良かったです。
この研究は、50歳以上の人々の食習慣を調べた観察研究をチェックしたもので、魚の消費量と認知障害、認知症、アルツハイマー病との関係を評価したデータに焦点を当てております。
具体的には、世界中の849,000人以上が参加した35の研究を対象に、参加者を魚の摂取量によって摂取量の多い人と少ない人に分類。これをもとに、認知機能の低下が起きるリスク比を計算したんだそうな。従来の研究よりもかなり精度が高い研究になっていて、非常によろしいのではないでしょうか。
その結果を簡単に申し上げますと、
- 魚を最も多く食べる人は、最も食べない人に比べて認知機能の低下や障害を経験する可能性が有意に低い。
- 特に、魚を最も多く食べる人は、認知機能障害や認知機能低下のリスクが18%低かった。
魚を食べる量が多くなるほど認知障害のリスクは下がり、1日あたり約150グラムの魚を食べる人が最もメリットが大きかった。
みたいになります。予想どおりの結果ではありますが、「やはり魚は脳に良い!」ってのが確度の高いデータで示されたのはナイスですね。1日150gぐらいってことは、毎日サバ缶を1個ぐらい食べてれば良いって感じでしょうか。
まぁ、この研究については、扱ったデータごとに認知症の診断方法が違うし、研究間のバラつきもめっちゃ大きかったりしますんで、決定的なものではない点は御留意ください。また、アルツハイマー病には複数の原因があるので、魚の摂取だけで進行を防げるとは思わないのが吉であります。
とはいえ、従来の研究に比べると、かなり良い感じで魚のメリットを明らかにしてくれたのは間違いないので、個人的にも「もうちょい魚の量を増やすか……」って気にさせられましたねー。
朝日を浴びると睡眠の質が上がるぞ!
「午前中に日光を浴びると睡眠の質が上がるよー」ってのはよく言ってることですが、新しい研究(R)でも、そのあたりを深掘りしてくれていて良かったです。まず結論から言えば、
- 午前中に日光を浴びた人は、1日の総日照時間に関係なく、睡眠の質が向上した。
みたいになります。とにかく朝のタイミングで光を浴びると、どれだけ日光を浴びたかに関わらず体内時計が整うのではないか、と。日光が体内時計に良いのは間違いないんだけど、そのタイミングが睡眠にどのような影響を及ぼすかを調べたデータは少ないので、この調査はありがたいっすね。
研究では、103人の男女を70日間にわたって追跡し、みんなに日光浴と睡眠の質に関するアンケートに毎日答えてもらったそうな。その上で、みんなが日光を浴びた時間と睡眠の質を比較したら、結果はこんな感じになりました。
- 朝に日光を浴びると、その日の夜の睡眠の質が向上する。
- 朝に外で過ごした人は入眠が早く、睡眠時間が長く、夜中に目が覚める回数が少なく、睡眠効率も高かった。
- 以上の結果は、前夜の睡眠の質など、他の変数をコントロールした場合でも同様だった。
- 参加者が1日に日光を浴びた総時間は、睡眠の質に影響を与えなかった。
いくつかの二次分析では、夕方に日光を浴びた人は、翌朝に早く目覚める傾向があった。 しかし、全体として、より良い睡眠を予測したのは朝日だった。
ってことで、この結果を見る限り、より良い睡眠に必要なのは日光を浴びる総量ではなく、日光を浴びるタイミングだろうって気がするわけです。一方で、日中または夕方の日光の量と睡眠の質との間には一貫した関連性が認められなかったのも、おもしろいところですね。
もちろん、すべての研究にも言えるとおり、この調査にも限界があるのでご注意ください。この研究で言えば、すべてのデータが自己申告にもとづいているせいでバイアスが生じた可能性があるし、太陽光の強さとか、人工光を浴びた量など、睡眠に影響を与える特定の変数が考慮されていないのも結果に影響を与えているかもなーとか思うわけです。
とはいえ、「朝日をちょっとだけ浴びれば良いのかも?」ってのは可能性としてあり得る話ですんで、そこはご注意いただければ幸いです。私も朝日を浴びるように意識はしてますが、日射時間はあんま気にしないようにしとくか……。
ブラジルナッツで炎症が収まるぞ!
ブラジルナッツが体にめっちゃ良いかも!って研究(R)が出ておりました。ブラジルナッツは、ブラジル、ボリビア、ペルーなどに生息する木の種子で、セレンが非常に豊富なため、抗酸化作用が高いと言われてたりするんですよ。
でもって、この実験では、過体重または肥満の女性46名(平均34歳)を対象に、8週間の非ランダム化対照試験を実施。1日8グラムのブラジルナッツを含む低カロリー食(体重の維持に必要なカロリーから1日500キロカロリーぐらい引いた量)を食べてもらい、これをナッツを含まない食事と比べたんだそうな。
ここで調べたのは、炎症のバイオマーカーで、 C反応性蛋白、TNF-α、インターロイキン6、 インターロイキン1-β、インターロイキン8、およびインターロイキン10など。これに加えて、リーキーガットのレベルも調べたらしい。
その結果、なにがわかったかと言いますと、
- 対照グループと比べて、ブラジルナッツを食べたグループは、C反応性蛋白、TNF-α、インターロイキン1-β、インターロイキン8の低下など、炎症のバイオマーカーが改善した。
- その他の結果の変化について、両グループ間に差はなかった。
ということで、ブラジルナッツを食べることで、体内のいろんな炎症マーカーが下がったらしい。これは素晴らしい……。
まー、実験としては、割とゆるめなのでアレですが、数あるナッツの中でも割とよさげなものとして、ブラジルナッツを押さえておくと良いでしょう。