プロバイオティクスでアスリートのパフォーマンスは本当に上がる?メタ分析が示す効果とは
「プロバイオティクスでアスリートのパフォーマンスが上がるか?」という疑問をガッツリ調べたメタ解析(R)が出ておりました。
これは、イラン&イラクの研究チームが手がけたメタ分析でして、アスリートでプロバイオティクス(腸内細菌のサプリ)の効果を確かめた35本の文献をまとめて、大きな結論を出そうとしてくれております。エビデンス評価がしっかりしているんで、アスリート的にも使える内容になってるんじゃないでしょうか。
では、細かいところは置いといて、まずは大きな結果をいくつか見てみましょうー。
- ポイント① 体重・BMI・体脂肪にはどんな影響があるか?
- BMI(肥満度の指標)=710人のデータで評価したところ、プロバイオティクスの効果はなかった(WMD=0.009、p=0.899、異質性I²=0.0%)
- 体重=710人のデータで確認したところ、プロバイオティクスで体重が0.55kg減少した(p=0.010)。中でも、プロバイオティクスを6週間以上続けた高齢者のグループに効果が見られた
- 体脂肪率=20件のデータを分析したところ、プロバイオティクスで体脂肪率が0.46%ほど低下する傾向が見られた(p=0.014)。特に、30歳以下の標準体重女性などで効果が顕著だった
- 除脂肪体重(筋肉量)=13件のデータで評価したところ、プロバイオティクスによって筋肉が増えるような効果は見られなかったが、ただし個人差はかなり多い(p=0.508)。男性やトレーニーのみ、ほんの少し筋肉が増える傾向が見られた。
ということでして、このポイントをまとめると、プロバイオティクスを飲むことで、
- 体重・体脂肪は少し減る可能性がある
- BMIにはほぼ変化なし
- 筋肉量は基本的に変わらない
みたいになりますね。全体的には厳しい結果でして、特に「筋肉が増えるといいなー」っていう期待をしている人には、現時点ではちょっと厳しい結果かもしれませんね(あんまいないと思いますが)。
- ポイント② 筋肉のダメージ回復を補助する兆候はある
- 筋損傷のマーカーはいくつかありますが、ここでは以下の2つをチェックしております。
- クレアチンキナーゼ(CK):37の効果量でメタ分析を行ったところ、クレアチンキナーゼは-47.57 IU/L低下した。
- LDH / ミオグロビン:有意差なし。
クレアチンキナーゼは「筋が壊れましたよサイン」の代表格なので、運動直後や3時間後にこいつの値が下がるってことは、筋ダメージからの回復にプロバイオティクスが働いている可能性が大であります。回復速度を求めるアスリートには、ある程度気になるデータですが、ただし、これは個人差が非常に高いので、あんま筋肉のダメージの改善を期待してプロバイオティクスを飲むと期待外れになるかもなぁ……ってとこですね。
- ポイント③ VO2max(最大酸素摂取量)にも影響アリ?
- VO2maxは持久力の最大の指標なので、こいつに変化が起きるならまことにありがたいことなわけです。この点に関しては、10件・11効果量で解析してまして、1.55 mL/kg/分の上昇が見られております(p=0.001)。
有酸素系のトレーニングをしている人にとっては、心肺パフォーマンスが1.5mL/kg/分ほどアップするのは侮れない感じでして、これはなかなかよろしいですな。もちろん個人差は大きいですし、劇的な改善とは言えませんが、「ちょっといいかも」くらいの期待感は持てそうな気がしますな。
全体を通じて見えてくる「今のエビデンス」の立ち位置
ってことで、全体をチェックしてみると、体重&体脂肪についてはわずかな減少効果があり、筋肉には効果がなく、筋肉のダメージにはちょっと効果があり、VO2maxはわずかに増加するって感じになりますな。ここでいう「わずか」とか「ちょっと」ってのは、「期待できる範囲だが確約はできない」ぐらいのレベルだとお考えください。“ある程度効きそうだが、これだけで劇的にパフォーマンスアップする!”ぐらいのイメージですな。
個人的には、筋肉痛や回復速度が気になる人がクレアチンキナーゼの回復用に使うのと、持久系競技をやってる人が「ちょい上のVO2max」を狙いたいって時ならダメもとで使ってみような感じかなーと思っております。
もし上記の用途でプロバイオティクスを使おうと思うなら、ぜひ以下のポイントを押さえておいてくださいませ。
- 食品 vs サプリ:発酵食品(ヨーグルト・味噌・納豆など)をできれば日常的に摂取。今回の解析では、単一株を使った研究の方が効果が出やすかったと報告されているため、サプリ選びも1〜2種の菌株に絞ると良いでしょう(Lactobacillus plantarumとか)。
- 続けるなら6週間以上:一部の効果は介入期間が6週未満ではあまり見られていないので、最低でもこれぐらいは続けたい。
- 記録はマスト:トレーニング日に摂取し、体脂肪・VO2maxや疲労感・筋肉痛の推移を自分なりに記録していく。
こんな感じで進めていただけると、体重や体脂肪の微調整、腸内環境改善、筋ダメージ回復、VO2maxのわずかな向上などが得られるかもしれません。まあ、もし効果があっても2〜3%レベルの改善って感じだと思いますんで、これをどう評価するかによって話は変わってくるでしょうな。