今週の小ネタ:筋トレ前のビーツジュースでパフォーマンスと回復力が上がる?プロテインを飲んでも筋トレ効果は変わらない?植物エキス+ビタミンシロップはUVケアとしてアリか?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
筋トレ前のビーツジュースでパフォーマンスと回復力が上がる?
「ビーツジュースで筋トレの動きが良くなり、疲れが抜けやすくなる!」みたいな話(R)が出ておりました。ビーツジュースが体に良いって話は昔から書いてますが、今回は「筋力アップ」と「回復促進」の効果も得られるんじゃないかって話ですな。
これは12人の男性を対象にしたランダム化二重盲検クロスオーバー試験でして、
- トレーニングの前後にビーツジュースを飲む
- トレーニングの前後に偽ジュースを飲む
という両方の条件を順ぐりでこなしてもらったんだそうな。その際に測定したのは、
- 合計レップ数(=パフォーマンス)
- 動作スピード
- パワー出力
- 最大心拍数(=心臓への負担)
- 回復力(=24〜48時間後のジャンプ力や筋肉痛の自己申告)
などでして、運動中のパフォーマンス+回復の質という、筋トレ好きにとってはかなり実用的なデータを取ってくれております。
さて、ビーツジュースの力はどのくらいのものだったのか。以下、主な結果をざっくりまとめてみましょう。
- 筋トレ中のパフォーマンス
- 総レップ数がアップ→ つまり、「あと1回いける」が本当にいけた
- 動作スピードも向上→ 挙上速度が上がる=筋出力の効率化
- 最大心拍数が低下→ 同じ運動をしても、心臓への負担が少なかった
- 筋トレ後の回復力
- 24時間後のジャンプ力が向上→ 回復が早まっているサイン
- 筋肉痛が少ないと自己申告→ 炎症やダメージが軽減している可能性がある
ということで、要するに「ビーツジュースを飲んだ場合は、トレーニング中に動けて翌日の調子も良い」という、非常に良い結果が出たわけですね。
このような結果は、ある意味で非常に納得できるものでして、ビーツジュースにふくまれる硝酸塩ってのは、体内で一酸化窒素(NO)に変換され、こいつが以下のような効果をもたらすんですな。
- 血管を拡張する → 筋肉への酸素&栄養供給が増える
- 筋肉のカルシウム取り込みを改善する → 収縮の効率が上がる
- 抗炎症作用 → 回復プロセスを早める可能性
ご覧のとおり、いずれもトレーニングと回復に直結する働きがありまして、特に「動作スピードが上がる」という点は、スピードトレーニングやパワーリフティングをしている人には見逃せないポイントでしょう。まあビーツジュースをそのまま買うと高いんで、気になる方はビーツパウダーを使ってみると良いのではないでしょうか。
プロテインを飲んでも筋トレ効果は変わらない?
「筋トレ前のプロテインでパフォーマンスは上がるか?」ってのを調べた研究(R)が出てましたんで、軽く内容をチェックしておきましょう。これは6週間のクロスオーバー試験で、参加者は23~55歳の男女30人(男性20人/女性10人)。みんなに週3回の高強度ファンクショナルトレーニングをやってもらい(いわゆるクロスフィット系)、その際に、
- 通常のたんぱく質を摂取する(1日に体重1kgあたり1g)
- 通常のたんぱく質に加えて、卵白、ホエイ、マルトデキストリン(プラセボ)のいずれかを、それぞれ体重1kgあたり0.6gで摂取する
みたいな差をつけてます。要するに、もともとそこそこたんぱく質を摂っていた参加者に対して、追加でプロテインかプラセボを飲んでもらい、「運動効果に差が出るか?」を調べた実験になっております。
この研究で測定されたアウトカム(=成果指標)は以下のとおりです。
- スミスマシンの1RMショルダープレス
- 握力
- 60秒間のシットアップ回数
- VO2max(持久力)
- ハムストリング・大腿四頭筋の筋力
- 筋持久力(アイソキネティックダイナモメーターによる)
で、これらの結果がどうだったかと言いますと、
- プロテインを飲んだグループと飲まなかった(プラセボ)グループに、有意差はなし。
だったそうです。要するに、「プロテインを飲んだからといって、運動効果が上がるわけではなかった」って結果ですね。
じゃあ、筋トレのパフォーマンスアップにプロテインは意味ないの?と感じる方もいるかもしれませんが、
- 今回の参加者は、すでに体重1kgあたり1g/日のたんぱく質を摂取していたので、そこにさらに0.6g/kgのプロテインを追加しても「それ以上の効果が出なかった」ってことなのかも?
- 参加者は自由にトレーニングプログラムを選べたため、トレーニング負荷にかなりのバラつきがあったと思われ、「プロテインによる差が出にくい構造だった」とも言える
ってのもあったりします。なので、筋トレ初心者や高齢者の場合は、たんぱく質摂取による効果は大きいんじゃないかなーとか思ってたりもします。さらに言えば、
- たんぱく質が不足気味の人
- トレーニング負荷が高い人
- 筋肥大や回復力を最大化したい人
にとっては、依然としてプロテインは有用な選択肢であろうと思うわけです。ここらへんに該当する方は、あくまで身体の“土台”を整えるサポートとしてプロテインをご利用いただくとよろしいのではないでしょうか。
植物エキス+ビタミンシロップはUVケアとしてアリか?
「植物エキス+ビタミンの力で、日焼け耐性が上がる?」という興味深い研究(R)が出ておりました。いわゆる「飲む日焼け止め」ってのは、果たしてどれぐらいの効果があるのかって問題ですな。
これは日焼けしやすい肌色の成人54人を対象にした試験で、実験の期間は8週間。参加者の半分に植物エキス+ビタミン入りのシロップを飲んでもらい、残り半分にはプラセボのドリンクを飲んでもらって肌の様子を見たんだそうな。すると、植物エキス+ビタミン入りのシロップを飲んだグループには、以下のような変化が出たそうな。
- 日焼け(赤み)が出るまでに必要な紫外線量が 24%増加
- 炎症後の赤みの強度が 46%減少
ということで、このシロップには「日焼け耐性を高め、赤みを軽減する効果がある」みたいっすね。ほほーって感じですな。
では、この実験で使われたシロップの中身がどうだったかと言いますと、
- Polypodium leucotomos(シダ植物エキス)300 mg=抗酸化作用、UVダメージを軽減の効果があると言われる
- Red-orange(レッドオレンジ由来エキス)100 mg=抗酸化物質リモネンなどを含む
- ビタミン A, C, D, E
になってます。要するに、「紫外線からの防御」と「炎症抑制」の効果に定評がある成分を片っ端からかき集めたら、実際にそれなりの効果があったってことですな。
というと、「飲む日焼け止めには意味があるのだ!」って気になりそうですが、果たしてこれがどれぐらいの効果だったのかをチェックしてみると、
- 日焼けするまでに24%多く光を浴びても赤くならない→ たとえば紫外線を100J浴びて赤くなるタイプが、124J浴びても赤くならなくなるイメージ
- 日焼け後に出る赤みが半分以下になる(46%減)→ 実感として「いつもより赤みが出にくい、痛みも軽いな」と感じられるレベル
みたいな感じでして、SPFに換算すると、だいたい「SPF 4相当」みたいになります。なので、SPFとしてはかなり低い数値なので、もし「飲む日焼け止め」を使うとしても、SPF30以上の日焼け止めをしっかり使うのが前提にはなるでしょうな。「飲む日焼け止め」はあくまで「追加の補助」「サプリ的に併用すれば相乗効果があるかもね」ぐらいの立ち位置に考えておくのがよさそうであります。まあ結局はSPF30以上・PA+++以上の日焼け止めは必須なんで、個人的には今後も「飲む日焼け止め」的なものは使わないかなーって印象でありました。