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筋トレで「2セット目が減る」のはなぜ?平均回数減少と効果的なトレーニング法

 

ジムでのトレーニング中、ふとこんな疑問を抱いたことはないでしょうか?

 

「1セット目は10回いけたのに、2セット目で7回しかできない……」

「3セット目なんかもう腕が動かない……。これ、みんなも同じなの?」

 

「セットが進むごとに回数が激減する」現象が起きるのは当たり前なんですが、「自分って、もしかして回復力が低いのでは?」と不安になることもありますわな。私もそんな気分になることがあります。

 

ということで、「セットごとに回数が減るのって、どのくらいが“普通”なのか?」という疑問を、最新のメタ分析でチェックしてみましょうー。

 

 

29本の研究を集めたメタ分析:筋トレのリアルな回数減少率

まず取り上げたいのが、ジェームズ・ヌッツォという運動科学者さんによるメタ分析(R)です。この研究は、筋トレにおける「セット間のパフォーマンス低下」に注目したもので、対象となったのは以下のような条件を満たした29本の研究であります。

 

  • それぞれの研究では、同じ重量(たとえば70%1RM)で最低4セット行い、すべてのセットを限界(=筋肉がヘロヘロになるまで)まで実施。
  • セットごとの回数は自然に減っていくにまかせて、途中で重量を軽くしたりはしない。

 

ということで、「毎セット、同じ重さで全力を尽くしたら、回数はどれくらい落ちるのか?」ということを、現実的な条件下で調べた内容になっております。

 

その結果はなかなか興味深いものでして、セットごとの“平均的な回数減少率”が、以下のようにまとめられております。

 

  • 1セット目を「10回挙げられた」と仮定すると…
    • 2セット目:平均でおよそ70%(=7回)
    • 3セット目:平均でおよそ55%(=5.5回)
    • 4セット目:平均でおよそ50%(=5回)
    • 5セット目:平均でおよそ45%(=4.5回)

 

さらに6セット目以降もデータはあるんだけど、面白いのは「5セット目あたりから疲労の進行がある程度“頭打ち”になる」傾向が見られてるとこっすね。つまり、3〜5セット目までは急激に落ちていくけれど、6セット目以降はそこまで顕著に下がらないわけで。いわゆる「疲労のプラトー」が起きるわけですな。

 

 

 

回数が減る原因は?──サンプル誤差と“ペース配分”の心理

とはいえ、こうしたデータには当然ばらつきがあるもので、同じ条件下でも「2セット目でガクンと落ちる人」もいれば、「3セット目までは持ちこたえる人」もいたりします。やっぱこういうところでも個人差は大きいみたいですな。

 

この違いについて、研究者は以下の2つの要因を指摘しておられます。

 

  1. サンプリングの誤差(統計的なばらつき):これは統計学ではおなじみの現象。たとえば、「本当は70%が平均だけど、たまたま集まった被験者は65%だった」みたいなケース。

  2. 心理的なペース配分:「あと6セットもあるって分かってたら、1セット目で100%出すのは怖いよね」って心理が働く。無意識のうちに「まだ先があるからセーブしておこう」と力を温存する現象で、実験でもよく観察される。この“ペース配分”は、トップアスリートですら無意識にやってしまう行動で、逆に言えばそれだけ人間の脳はエネルギー消費を嫌うようにできているということでもある。

 

ということで、どちらも非常にありそうな話なわけですが、ここでもう少し実践的な話をしてみましょう。「2セット目以降で回数が激減してしまうとき、どう考えるすべきか?」って問題についてですが、具体的には以下のような選択肢があったりします。

 

  1. 重さはそのままで、回数が落ちてもOKとする
  2. 重量を軽くして、回数を一定に保つ
  3. 同じ重量で、限界まで追い込む意識を強める(=失敗ギリギリを狙う)

 

このうち「どれが正解か?」ってのは残念ながら決定的な研究データが存在しないのでよくわからないんですが、現時点での知見を見ていると、だいたい目的別に以下のようなことが推奨できるんじゃないでしょうか。

 

  •  筋力アップを狙う場合
    • 筋力向上の鍵は「高い強度(=重さ)」です。これは多くの研究でも一貫していて、多少回数が減っても重量を維持することが推奨される。
    • なので、筋力アップが目的ならば、回数が10→7→5と落ちていってもOK。重要なのは「高い負荷で神経系に刺激を与えること」であり、「重さはそのままで、無理せず粘る」というスタンスが推奨されるのだと思われる。

 

  • 筋肥大(バルクアップ)を狙う場合
    • 一方で、筋肉のサイズを大きくしたい場合は、もう少し柔軟なアプローチが可能となる。というのも、筋肥大に関しては、5回〜50回の間でちゃんと筋トレをこなせば、どんな回数でも効果があると考えられているから。
    • したがって、「次のセットで5回切りそうだな…」と感じたら、重量をちょっと下げる、あるいは重量そのままで「より限界に近づける意識」で追い込む、という選択肢のどちらもアリ、ということになる。

 

 

 

実際のプログラムでどう応用するか?

ここまでの話をふまえると、「複数セットあるエクササイズで、毎セット同じ回数をキープすべきか?」という問いには、やはり“目的次第”という答えになりそうっすね。ざっくり言えば、

 

  • 筋力重視:重量キープ+回数ダウン
  • 筋肥大重視:重量柔軟+限界意識

 

みたいな感じです。また、ここで重要なのが「1セット目の回数」を基準にして、セットごとのパフォーマンスが平均から大きくズレていないか?を確認することです。仮に、1セット目10回→2セット目9回→3セット目8回……なんて感じで“ほとんど落ちない”ようであれば、ちゃんと力を出し切っていない可能性もありますからね。この場合は、「もう1〜2レップ粘れるのでは?」とチェックしてみる価値アリでしょう。

 

ということで、セットを重ねるごとに回数が減っていくのは「自然な現象」であり、パフォーマンスのバロメーターだとも言えましょう。

 

  1. 2セット目は1セット目の約70%
  2. 3セット目は55%
  3. 4セット目は50%
  4. 5セット目は45%

 

このへんを参考に、「自分のトレーニングは妥当か?」を判断してみるのがよさげであります。逆に言えば、「いつも同じ回数を繰り返せている人」は、強度や追い込み度を見直すべきかもしれませんな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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