毛穴に蒸気を当てれば本当に美肌になれるの?
美顔スチーマーって効果があるの?
毛穴に関するご質問を2ついただきまして。
鈴木さんは美容家電をオススメしないみたいですが、美顔スチーマーはどうお考えでしょうか?毎日やって蒸気で毛穴を開けばきれいな肌になれるものでしょうか?
鼻の黒ずみを綺麗にする方法はありますでしょうか?ご存知あれば、記事にしていただけると嬉しいです。
みたいな感じ。美顔スチーマーってのは蒸気を顔に当てる商品で、パナソニックとかから出てますね。蒸気によって毛穴が開き、鼻の黒ずみなどが取れると言われております。
そもそも毛穴は開いたり閉じたりしない
それではスチーマーで美肌になれるか問題ですが、その前に大事なポイントを押さえておきましょう。それは、毛穴は開いたり閉じたりしないという事実です。
というか、そもそも毛穴って開閉するメカニズムが備わってないんで、いくら蒸気を当てようが開きようがないんですよ。このあたりは皮膚科学の教科書にも載ってるレベルの話なんで(1)、「毛穴が開いてうんぬん」とマジメに書いてあるような美容サイトは結構ヤバいとお考えください。
では、なんで蒸気が毛穴の汚れにいいと言われてるかといえば、たんに高温でが顔の脂が溶けるからであります。要するに、
- 毛穴に脂が詰まって広がったように見える
- 蒸気で脂が溶けて毛穴から流れる
- 毛穴が小さくなったように見える
というシンプルな仕組みになっております。脂の詰まり方によって、毛穴が開いたり閉じたりするように見えるわけですな。
ちなみに、ヒトの皮脂はだいたい30℃ぐらいで溶けますんで(2)、蒸気を当てるだけでも取り除くには十分。その点で、美顔スチーマーで肌がキレイになるって話は、あながちウソでもありません。
蒸気は肌の浸透性を高めるが、角質にダメージも与える
また、もうひとつ美顔スチーマーで顕著なのが、肌の浸透性を高める効果があるとこ(3)。蒸気によって肌バリアの脂質構造が変わることがわかってるんですね。つまり、美顔スチーマーを使えば、スキンケア商品の成分が角質の奥まで届きやすくなるかもしんないわけです。
が、この効果も良し悪しでして、逆に言えば蒸気は肌バリアを破壊してるとも言えるんですよ。上で参照した2008年論文によれば、
蒸気による浸透性の変化は、1)角質の脂質構造の障害、2)ケラチンネットワーク構造の乱れ、3)ケラチンの崩壊と気化によってできた角質の穴によって起きる。
とのこと。つまり、肌の浸透性が高まったのは、蒸気で角質が乱れたおかげなんだ、と。
いまのところ、美顔スチーマーの長期試験データはないんで、果たして蒸気を当て続けた場合に肌がどうなるかは不明であります。しかし、上の研究を見る限りでは、とりあえず敏感肌の人とか、すでに角質がダメージを受けているような人は使わないほうがいいんじゃないかと。
また、14人の女性を対象にした2004年の実験(4)では、「45度の蒸しタオルを5分当てるだけでも肌の浸透性は上がりまっせ!」って結論が出てまして、わざわざ角質を壊すリスクをおかしてまで美顔スチーマーを使う理由がないように思います。
まとめ
以上の話をまとめると、
- 確かに蒸気で毛穴汚れは落ちるが、蒸しタオルを5分当てるだけで十分!
- 肌が弱い人にとっては、蒸気は逆にダメージになる可能性がある
って感じ。まぁ、この手の商品は、リラックス効果を求めて使うケースも多いでしょうから、「買うな!」とまでは申しません。ただし、スチーマーにはリスクもあるよーってとこは考慮に入れたうえで、お使いいただければと思います。