グリットの生みの親「まだまだグリットは現実に活かせる段階ではない」
グリットはどこまで成功を予測できるのか?
知人の編集者さんいわく「やり抜く力 GRIT(グリット)」が、近年のビジネス書ではトップのベストセラーなんだそうな。あー、うらやましい。
という話はさておき、「グリット」については当ブログでも軽く書いております。要は忍耐力に情熱をプラスした特性で、これが高い人ほど人生に成功しやすいよー、みたいな話です。
が、グリットは新しい概念なんで、いまんこと「後から伸ばせる能力なの?」とか「本当に成功の予測力があるの?」ってあたりはまだまだ未知数だったりします。そこで新しい研究(1)では、グリットと遺伝子の関係について調べてくれていておもしろかったです。
4,500人の双子でグリットを調べた
これはロンドン大学の研究で、16才の双子4,500人を対象にしたもの。まずは全員にグリット検査表(2)をわたして、「私はどんな障害でもくじけない」や「2〜3カ月以上かかるプロジェクトに集中するのは難しい」といった質問に答えてもらったんですな。
続いて全員の性格(ビッグファイブ)も計測し、そのうえでGCSE(イギリスの統一試験)の点数とくらべたところ、
- ビッグファイブは成績の6%を説明できる
- グリットでは成績の0.5%しか説明できない
みたいな結果だったんですな。要するに、グリットがあろうがなかろうが、学校の成績はほとんど変わらなかったんだ、と。
今回の実験では、グリットを調べても学業の達成レベルは測れないことがわかった。
ってことで、従来のグリット研究にとって不利な感じが出ております。
グリットって結局は誠実性のことなんじゃないの?
また、個人的におもしろかったのが、
- グリットはビッグファイブと同じぐらい遺伝の要素が大きい
- 「グリットの高さ」は、ビッグファイブの「誠実性の高さ」とほぼ被っている
ってところですね。要するに、グリットが高い人は自動的に誠実性も高いって話でして、こうなると「そもそもグリットの概念って意味なくね?」って話にもなっちゃうわけですな。
くり返しになりますが、グリットは新しい考え方なんで、どこまで使えるアイデアなのかは不明。だいたい「やり抜く力 GRIT(グリット)」のアンジェラ・ダックワース博士自身が、2015年の論文(2)で「グリットの診断テストは信頼性が低い」「まだまだグリットは現実の教育などに活かせる段階ではない」とおっしゃってますので。
そんなわけで、現時点における人生成功のポイントとしては、グリットよりも「誠実性」を使ったほうがいいかも。こちらは数十年におよぶ知見がありますし、後天的に変化を起こせる可能性も高いですからねぇ。