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貧乏から脱出するには子供の頃の良い教育が必要!はウソ?

Poor

 

 貧乏を抜け出すには教育が必要って本当?

将来に豊かな生活を送るには子供のころの良い教育が必須!」などとよく言われるわけですが、「実は教育って貧乏から脱出させるような影響はなくない?」ってワーキングペーパー(1)がおもしろかったです。

 

 

これはカリフォルニア大学のジェシー・ロススタイン博士によるもので、1980年以降に生まれた男女4千万人分の収入データを分析したもの。そのネタ元になったのがハーバード大の2014年論文(2)で、こちらは「子供が成長したあとの収入を左右する要素はなに?」ってところを分析したもの。

 

 

 

貧乏脱出にもっとも必要な要素とは?

このハーバード論文では政府の統計データを使って、「貧しい子供が大人になって高収入を得た場合、そこにはどんな違いがあったのか?」ってところを調べたんですよ。

 

 

というと、普通は「教育レベル」とか「健康」とか「IQ」みたいな要素が頭に浮かびますけど、分析の結果はさにあらず。貧乏を抜け出すためにもっとも重要なのは「どの地域に住んでるか?」だったんですな。

 

 

具体的には、貧しい子供がサンホセやソルトレイクで育った場合、バルチモアやノースカロライナで育ったときよりも、大人になって貧困から抜け出せる確率が格段に高かったんだそうな。その理由についてはよくわからないものの、研究者たちの推定では、

 

  • 人種差別
  • 世帯構成
  • 所得不平等
  • 学校の質
  • 社会関係資本(地域の人間関係とか)

 

といった5つがデカいんじゃないの?と考えている模様。まぁ説得力がありますよね。

 

 

なんだかんだで不労所得が最強だが…

で、今回のカリフォルニア大論文は、ハーバードが行った分析をさらに細かくみて、上の5つから「本当に重要なものはなに?」ってあたりを調べ抜いたんですな。その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • もっとも将来の収入を左右するのは「不労所得」と「配偶者の稼ぎ」だった(全体の36%)
  • 次に収入への影響がデカいのは、「労働市場ネットワーク」(労働組合とか地元産業の振興レベルとか)と「差別」だった(全体の31%)
  • 3番手がようやく「学校の質」や「特定の職業スキル」だった(全体の16%)
  • 4番点が「テストの成績」や「学校の成績」(全体の12%)

 

みたいな感じ。結局、貧しさを抜け出すのには、運良く何らかの不労所得や優秀な配偶者を見つけるのが最強で、あとはちゃんと労働者の権利が守られてるような環境に身を置いたほうがいいんだ、と。うーん、なるほど。

 

 

というと、「あれ?学力テストの成績がいい人ほど収入も高いのでは?」って疑問がわく方がいるかもですが、今回の分析はあくまで「貧乏脱出」に主眼を置いてるのが大きな違い。生まれが貧しい場合は、教育の影響力は下がっちゃうみたいなんですな。

 

 

まとめ 

もちろん、これは「学校は大事じゃない!」って話ではなく、研究者もそのへんは強調しておられます。学校教育は良い社会を作り出すためには絶対に必要なんだけど、あくまで「貧困の解決までは期待しないでね!」ぐらいの話です。

 

 

また、これはあくまでアメリカのデータなんで日本にどこまで当てはまるかは謎なところ。ただし、過去のデータを見ても、貧乏を抜け出すには教育よりも周囲の人間環境だ!ってのは世界的な傾向のような気もしております。金がない場合は、まずそっちから気にしたほうがいいのかもですねー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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