脳の力を瞬時にアップさせるちょっとしたコツ
緊張するとパフォーマンスが下がるのは当然の話で、その対策として、よく「ゆっくりと呼吸しよう!」みたいなことをよく書いてるわけです(パワーブリージングとか)。
ただ、いっぽうでは速い呼吸のメリットもありまして、そのあたりについて調べたのがノースウエスタン大学の論文(1)であります。
息を吐く時のほうが集中力も記憶力もあがる
これは62人の学生を対象にした実験で、全員に数十枚の顔写真を見てもらい、
- 顔写真がどんな感情を表現しているか、できるだけ速く言い当てる
- 顔写真をすべて記憶する
って作業を指示したんだそうな。その際、同時にみんなの呼吸の状態をモニタリングしたところ、
- 息を吐くよりも、息を吸うあいだに顔写真を提示されたほうが、感情を言い当てるスピードが速く、記憶の成績もよくなった!
って結果だったんですな。
息を素早く吸うと脳の力がアップする
なかなかおもしろい結果ですが、このデータを「息を素早く吸うと脳に良い影響があるのでは?」と解釈しておられます。
混乱するような状況になると、人間の呼吸リズムは自然と速くなる。その結果、私たちの呼吸は、息を吐く時間よりも吸う時間のほうが長くなっていく。
すなわち、私たちが恐怖に反応して呼吸が速くなるのは、脳の機能に良い影響をもたらす。そのおかげで、私たちは危険な状況に対してすばやく反応することができるのだ。
ゆっくり呼吸するとリラックスできるように、素早い呼吸すると私たちの脳は危険に対してスタンバイ状態に入り、結果として集中力や記憶力がアップするんだ、と。
その理由につきましては、
息を吸い込むと、扁桃体や海馬、大脳辺縁系といったシステムが有意に活性化する。
とのこと。扁桃体は感情のコントロールを担当するエリアで、海馬は記憶などに関わるエリアであります。
ダレるような状況では吸う息を長くするといいかも
小規模な実験なんで即断はできないものの、進化の視点からみても十分にありえる話ではないかと思います。猛獣に食べられそうになったときは、大量の酸素を脳に送り込んで、集中力と記憶力を上げたほうが生存には有利ですもんね。
つまり、この実験を現実に活かすとするならば、
- 緊張でパフォーマンスが下がるような場面(人前のスピーチとか)では、吸う息よりも吐く息を長くして扁桃体の活動を低下させる
- リラックスしすぎでダラけるような場面(1人での勉強とか)では、吐く息よりも吸う息を長くして大脳辺縁系を活性化させる
みたいな使い分けができそうな気がいたします。
ただし、おもしろいことにこの効果は鼻呼吸でしか起きず、口呼吸だと集中力と記憶力はアップしないんだそうな。
どうやら呼吸の仕方も、この効果に大きな影響があるようだ。口呼吸をした場合、認知機能は大幅に低下した。
ってことなんで、ぜひ鼻呼吸をご利用ください。これもまたおもしろい現象ですよねぇ。