「パスタは食べても太らない!それどころか痩せる!」はどこまで本当か?
「パスタは食べても太らない!」って記事がニューズウィークに出てまして、ちょっとおもしろいんでメモ。どんな話かと言いますと、
糖質の源として他の炭水化物と一緒に目の敵にされてきたパスタが、実際は食べても太らないどころか減量にもよいことが研究で明らかになった。
なんだそうな。糖質制限界では嫌われ者のパスタが、実は太らないどころかダイエットにも役立つんだ、と。これは興味深いですねー。
ネタ元はBMJ Open(1)で全文を読むことができるんで、さっそく見てみました。これはカナダで行われたメタ分析で、過去に出た32件のRCTから2448 人のデータをまとめてくれております。
だいたいどんな実験かと言うと、
- 参加者の食事をGI値が低い食事にする(=食後の血糖値が上がりにくい食事)
- パンと米を止めてパスタにする(だいたい1週間に188グラム前後)
って感じで、中央値が12週間ぐらいのフォローアップで、どれぐらい体重に変化が出てるかをチェックしております。特にカロリーコントロールはしないで、シンプルにいつものパンをパスタに変えたらどうなるか?ってのをみたらしい。
さて、どんな結論が出たかを箇条書きにしていくと、
- パスタは体重の増加や体脂肪は増えていなかった
- どころか3ヶ月の時点ではパスタグループの方が0.5キロほど体重が減っていた
って結果だったんですな。パスタは太らないどころかダイエットに効くのではないか、と。研究者いわく、
低GIの食事パターンにおいては、パスタを食べたからといって体重や体脂肪に悪い影響は見られなかった。これは肥満や過体重の予防には非常に重要だ。それどころか、パスタは高GIの食事パターンに比べて体重やBMIを減らす作用もあった。
とのこと。もはやパスタがダイエット食になりそうな勢いであります。
ということで、これが事実ならまことにナイスな気がしますが、個人的に気になる点がいくつかありまして……
1 どのデータもパスタ自体の減量効果を調べてるわけじゃない問題
ここでリストアップされた研究は、いずれも低GIダイエットをしつつパスタにしたらどうなる?ってのを調べてまして、決してパスタそのものの影響は調べてなかったりします。これだと、本当にパスタが良かったのかはよくわからんのですよね。
2 低GIダイエットをやると、自然と健康的な食事になっちゃう問題
低GIダイエットってのは血糖値が上がりにくい食事を推奨するんで、必然的に緑黄色野菜、フルーツ、肉類の量が多くなるんですよ。逆に高GI食の場合は米やパンなどの主食からお菓子などの加工食品全般を取り除く傾向があるんですね。
つまり、低GIダイエットをやるとどうしても健康的な食事にならざるを得ず、パスタのおかげというよりも、そっちのおかげで痩せたんじゃないの?って気もしてくるわけです。当ブログではおなじみの「カロリーの質」ってやつですな。
3 そこそこ数値がショボい問題
言わずもがなですが、そもそも週に188gぐらいのパスタって少なくないですか?という。これだとだいたい3食分の量なんで、パスタの影響を調べるにはかなり心もとないと申しますか。ついでに、3ヶ月で0.5kgって成果も非常に小さいもんで、これが長期の影響力があるかといえばよくわからない感じではあります。
ってことで、いろいろ書いてみましたが、個人的には「パスタは特に太らない」って結論はおそらく確実だろうなーとは思ってたりします。そもそも、大量にパスタを食べる「地中海式ダイエット」が体重の維持に効果的なのは間違いないわけですからねぇ。
ただし、これが「減量にも良い」ってとこまで進んじゃうのは無理があるかも。つまり、
- パスタを食べるなら「地中海式ダイエット」みたいな食事法とセットでね!
ってことでしょうか。非常に穏当な結論ですが、このメタ分析から言えるのはそのへんでしょうねーってことでひとつ。