収入が多くて子だくさんな人は"あれ"が違うぞ!という観察研究の話
「他人にいろいろ与える人は幸福だよー」ってのは、アダム・グラント「GIVE & TAKE」が喝破した話。自分より他人のために動く人のほうが人生の満足度はバカ高いってデータ(1)がたくさんあるんですよねぇ。
でもって、近ごろ「与える人と奪う人」の幸福について調べて論文(2)が出まして、これがなかなかおもしろいんですな。
これはストックホルム大学の研究で、論文のタイトルを直訳すると、
- 寛大さは報われる:利己的な人々は子供が少なく稼ぎも悪い
って感じです。タイトルに結論がすべて表現されてますんで、ここで納得された方は続きを読まなくてもOK。
ここで研究チームは「イギリス世帯縦断調査」っていう有名なデータセット(3)を使ってまして、2009年から約40,000世帯の家族をチェックしたリサーチになっております。
具体的にどんな調査だったかと言いますと、
- 2010年の時点での、参加者たちの利他的な行動を調べる(ボランティア活動をしたり募金をしたりとか)
- 2016年に、参加者の収入と子供の数を調べる
みたいになっていて、その結論は論文タイトルのとおり。
- 親切な人は年収が高くて子だくさん!
って傾向があったんですな。研究チームいわく、
利己性がもっとも低いグループは子供の数が非常に多く、ほどほどに利己性が低いグループはサラリーが一番多かった。
多くの人は、利己的な人ほど大金を稼ぐものだと思いがちだ。しかし、これは事実にもとづいていないし、悪しき行いを促進させてしまう。
とのこと。子供については利他的な人ほど多くなり、収入については”そこそこ利他的”な人ほど高くなるんだ、と。収入については、行きすぎた利他性は障害になっちゃうみたいですな。
なんでこういった結果が出たかと言いますと、
利己的な人々は人間関係の質が低いことが多いため、必然的に子どもを作るチャンスも減る。さらに、そもそも利己的な人は子どもに興味がないケースも多く、自己犠牲を払って時間や金を投じようともしない。
と研究チームは推測しておられます。利他的だと人間関係が良くなって子供にもお金にもめぐまれやすいって話で、そりゃそうでしょうね。
というと、「利他的なほうが有利なのに、なんで利己的な人はいなくならないのか?」って気になるわけですが、さらに研究チームいわく、
進化の過程で利己的な行動を促進する遺伝子は少なくなる可能性はあるが、それでも社会的な基準や制度、その他の心理的な要素によって強く左右されているのだろう。
とのこと。まー、このへんの議論については異論がありましょうが(わがままな遺伝子が生き残る経路も十分に考えられるんで)、多くのデータが「利他的な行動はお金につながる!」って事実を示してますんで、とりあえず肝に銘じつつ行動するのが吉かと思われます。