糖質制限で心疾患のリスクは上がるか?を調べたメタ分析を見てみましょう
「糖質制限ダイエットって危険なんじゃない?」って考え方は昔からあって、このブログでもいくつかの可能性を取り上げてまいりました。なかでもよく言われるのが「糖質制限で心疾患のリスクが上がるんじゃない?」みたいな話で、実際に過去のメタ分析(R)でも「LDLコレステロールが増える!」って結果が出てたりするんですよ。
が、ここらへんはまだ決定的な説でもなくて、別の研究(R)では「糖質制限をしてもコレステロールは増えない!」って報告もあったりとか。なかなか難しいもんですね。
このような食い違いが出る理由はよくわかりませんが、個人的には実験デザインが個々に違いすぎるからかなーとか思っております。それぞれのデータは参加者の体型や健康状態が違いすぎる上に、そもそも「糖質制限ダイエットとは何か?」ってとこにハッキリした基準があるわけでもないですからねぇ。
その点で、新しく出たメタ分析(R)は、「ちゃんと糖質制限ダイエットのレベルを決めた上で、本当に心疾患リスクが上がるかを確かめたよー」って内容になってて有用でした。
これは数ある糖質制限研究の中から、以下の条件に当てはまるものを選んでおります。
- 参加者が過体重か肥満体型だが、これといった病気にはかかっていない
- 参加者のLDLコレステロールや中性脂肪値の変化をチェックしている
- 糖質制限と脂肪制限の効果をくらべている
ってことで、できるだけ参加者の条件を同じにそろえつつ、さらに糖質制限ダイエットの内容を3段階に分けてます。
- ゆるい糖質制限:総摂取カロリーの26〜45%を炭水化物にする(1日の糖質量は130〜225g)
- 普通の糖質制限:総摂取カロリーの10〜25%を炭水化物にする(1日の糖質量は50〜129g)
- ハードな糖質制限:総摂取カロリーの9%以下を炭水化物にする(1日の糖質量は49g以下)
この区分けをしたおかげで、より正確に糖質制限の影響をチェックできるわけですね。その意味で、従来よりもかなり信頼度は高いと言えるんじゃないでしょうか。
結果、トータルで1,633人のデータが集まって、実験期間は6〜24ヶ月ぐらい。そこで、以下のようなことがわかりました。
- どんなタイプの糖質制限でも、LDLコレステロールの数値がちょっとだけ上がる(0.07 mmol/L)
- どんなタイプの糖質制限でも中性脂肪は下がるが、2年も続けると意味がなくなる
みたいな感じです。
というと、「糖質制限は怖い!」みたいな結論になりそうですが、0.07 mmol/Lの増加ってのをどう見ればいいかというと、
- 心疾患リスクが5年で1.5%上がる
- 40年のスパンでは心疾患リスクが3.78%だけ上がる
ぐらいの計算になりまして、「まぁそんなビビるもんでもないかなぁ…」ぐらいの印象ではあります。もちろん「ちょっとでもリスクが上がるのは嫌だ!」って意見もあるでしょうけど、今回の研究では「糖質制限でHDLが上がる!」って現象も報告されてまして、これも加えれば心疾患リスクはさらに下がるんじゃないかと。
ってことで、とりあえず太った人が糖質制限をした場合は、特に心疾患リスクの上昇は気にしなくてもよさげ。というか、糖質制限で痩せたぶんだけ心疾患リスクは減るでしょうしね。
また、心疾患リスクの上昇については「どれぐらい良質な脂質や糖質をとるか?」のほうが大事なんで、三大栄養素のバランスよりもカロリーの質に気を配ったほうがいいですよー、といういつもの結論で締めておきます。