「人間の集中力ってどれぐらいなの?」って問題を「現代人の集中力は金魚より短い」説から考えるエントリ
https://yuchrszk.blogspot.com/2019/05/blog-post_68.html
集中力に関するご質問をいただきました。
現代人の集中力持続は金魚以下!という記事を見つけたのですが、これについて鈴木さんはどう思われますか?マイクロソフトの研究で人間の集中力は8秒にまで下がったというのですが。そもそも金魚の集中力をどう測るのかなと思いました。あと人間の集中力はそれぐらいのものなのかなというところも。
とのこと。「現代人は金魚より集中力が続かない!」ってのは日本だと2016年ごろから話題になった話(R,R)で、海外だとTIME誌が2015年に報じてたりします(R)。なかなかセンセーショナルな内容で、思わずビビっちゃいますな。
そこで、まず「金魚の集中力をどう測るのか」ってポイントですが、これについてはよくわかりません。ちょっと調べてみると、そもそも「金魚の集中力は9秒」って話の出元はスタティスティック・ブレインって会社のレポート(R)だったようなんですが、これを裏づける研究がどこにもないもんで。
さかのぼると2002年にBBCが「金魚の集中力は9秒」って話を紹介してるんで(R)、ここが出どころな気もしますけど、2017年にはBBC自らが「そんなのデタラメだ!」っていう専門家のインタビューを紹介(R)してたりとか。いやー、混沌としてますね(笑)
まぁ昔から「金魚の記憶力は超短いよ!」って俗説(R)ならあるので、これが集中力の話に転じたのかなーという気もしなくはないです。とにかくここらへんは謎っすね。
続いて、正味なところ人間の集中力ってどれぐらいなの?ってところですが、こちらはいくつかの研究例(R,R)がありまして、「注意をとぎれずにひとつのタスクに意識を向けられる時間」を調べてくれております。
例えば子供を対象にした90年代のリサーチ(R)だと、
- 2歳児の平均は7分で、5歳になると14分にまで増える
ぐらいの結果になってます。この時点で「人間の集中力は8秒!」って説はなんだったのか?という気もしますが、実は”集中力のとらえかた”によっては意外と正しい数値だったりもします。
というのも、集中力にはいくつかの段階がありまして、すごーくざっくり分けると、
- 一過性の注意=電話の音みたいなちょっとした外部刺激に反射的に注意が向かう状態
- 持続性の注意=ひとつのタスクにずーっと意識を向けられる状態
みたいになります(本当はもっとあるんだけど話が複雑になるので割愛)。
この「一過性の注意」がどれぐらい保つのかについてはまだ統一見解があるわけじゃないんですけど、「だいたい8秒ぐらいでは?」と言われてたりするんですよ。広告宣伝の世界でたまに「お客さんの目を8秒以上ひきつけろ!」と言われるのは、ここらへんの影響があるのかもですな。
さて、当然ながら作業の効率を上げるのに大事なのは「持続性の注意」なんで、「8秒」って数字にこだわるのは意味がない話です。そこで2001年のレビュー(R)などを参照すると、
- 大人が注意を持続できる時間はだいたい20分!
- ただし、この数字はタスクによって大きく変わる(当然、楽しいタスクのほうが集中力は長持ちする)
みたいになってますんで、およそ20分前後ぐらいに見とけばいいんじゃないでしょうか。この点で、毎度おなじみのポモドーロ法なんかはやっぱ良さげっすね。
ってことで話をまとめると、
- 「金魚の集中力は9秒」はどこから出てきたのか謎
- 「人間の集中力は8秒」って説は「一過性の注意」が出元かもしれないが、「現代人の集中力が下がった」って説はどこから出てきたのか謎
- 大人の集中力は20分前後はキープし続けられる(ただし環境とタスクの内容による)
みたいになります。最終的には謎だらけのまま終わりましたけど、ネットロアなんてそんなもんですからねぇ……。