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ネットに出回る「睡眠のウソ」を、ダメな順番にランク付けしてみたよ!という研究



科学的な見解とは食い違うにも関わらず、「睡眠」に関する間違った思い込みは世の中から消えない。「睡眠にまつわるウソ」は、多くの人の健康を損なっているのだ。

と主張する論文(R)がおもしろかったのでメモ。脳科学と同じように「睡眠の世界」にもデタラメな知識が蔓延しているぞ!って話っすね。


これはニューヨーク大学の調査で、研究チームは8,000以上のウェブサイトをチェックして「どれぐらい睡眠にまつわるウソが取り上げられているか?」をピックアップ。それぞれの誤情報を、悪影響が大きい順にランキング化してくれたんですよ。


ってことで、以下に研究チームがあきらかにした「睡眠のウソ」を並べていきます。


10位:夢を覚えているのは睡眠の質が高い証拠だ!

私はこの説を知らなかったんですが、わりと欧米では広まっている考え方みたい。が、科学的な結論は真逆でして、

  • 本当は夢を覚えていないほうが睡眠の質はいい!

ってのが正解なんだそうな。研究チームいわく、

どんな人でも睡眠中に4〜5回は夢を見ている。しかし、睡眠が乱れず中途覚醒も起きない場合は、夢を覚えている可能性は低くなる。

とのことで、先行研究でも、夢を覚えている人ほど騒音などの外部刺激に弱く、夜中に起きてしまう確率が高いとのこと。


9位:目覚ましのスヌーズ機能を使うのはいいことだ!

スヌーズは目覚まし時計の基本的な機能ながら、科学的に見れば使用はNG。研究チームいわく、

スヌーズ機能を使うと、あなたの脳はとても浅い眠りにもどってしまう。この眠りは非常に浅く、睡眠の質も低い。

とのこと。スヌーズ機能を使うと脳が新たなREMサイクルに入っちゃうそうで、結果として、目が覚めても朦朧とした状態が長く続いちゃうみたい。スヌーズの弊害については、ダン・アリエリー博士も過去に指摘してましたな。



8位:寝る前はテレビを見てリラックスしようぜ!

 パレオな男をお読みの方なら、これがいかにヤバい考え方かは常識でしょう。研究チームいわく、

テレビやスマホはブルーライトを発し、私たちの脳に「朝だ!」と指令を与える。寝る前のデジタルはひかえて、ぜひリラックスできる作業をしてほしい。

とのこと。寝る前にブルーライトを浴びちゃうと、8時間以上寝ても疲れたままになるらしいんで、くれぐれもお気をつけください。



7位:寝る時間帯は睡眠の質に影響をあたえない!

これが間違っているのも常識でしょう。というか、こんな主張をしているサイトがあることにビックリと言いますか。


研究チームいわく、

ベッドに入るタイミングは毎日同じ時間を保つことをオススメする。そうでないと私たちのホルモンや体温、消化のーエースなどが狂い、体内時計の働きに悪影響が出てしまう。

ってことでして、寝るタイミングは一定にしておくのが基本であります。



6位:眠れないときはベッドの中でひたすら目を閉じ続けよう!

 寝床に入ってもなかなか眠れないため、がんばって寝ようとし続ける人は多いかもですが、これも睡眠の質を上げるためにはNGであります。

起きたままベッドの中にい続けると、私たちの脳は「不眠」と「ベッド」を結びつけてしまう。

とのことなんで、目安としては、15分を超えて眠りに落ちれないようであれば、いったんベッドを出て別のことをするのがベストであります(違う部屋で瞑想するとか)。



5位:寝る前のアルコールで寝つきが良くなるぞ!

いわゆるナイトキャップってやつですね。こちらも意外とやってる人は多そうな気がしますけど、寝酒は睡眠の質を下げるだけであります。

確かに、アルコールは入眠をスムーズにしてくれるかもしれない。しかし、寝酒のメリットはそこまでだ。

眠りに入った後は、アルコールは睡眠のステージを浅くしてしまい、驚くほど眠りの質を下げる。そのため、いくら寝ても疲れた気分は改善しない。



4位:イビキは他人に迷惑だが本人に害はない!

うーん、こんな迷信があるものなんですな。当然ながら科学的には間違いでして、イビキは人体への悪影響が大であります。

イビキは呼吸を止めてしまうため、無呼吸症候群や睡眠障害の原因になる。これは、心臓病、心房細動、喘息、高血圧、癌、糖尿病、腎臓病、認知機能の低下などを引き起こす。

ってことで、イビキは全力で改善しときたいところです。無呼吸症候群の疲労感ってすごいらしいですしね。



3位:人間の脳は短眠に適応していく!

いつもは8時間睡眠を守ってる人でも、がんばって短眠を続ければ体が慣れていくのだ!って考え方ですね。


が、実際のことろ、良い睡眠を得るためには4段階のフェーズを通過しなきゃいけないんで、どうしても短時間睡眠だと不都合が出ちゃうんですよ。ざっくりいうと、

  • ステージ1で軽い睡眠に入る
  • ステージ2で周囲の環境から切り離される
  • ステージ3〜4で体が深い休息状態に入る

みたいになってて、さらにREM睡眠のサイクルを何度かくり返すようになってるんですよ。そんなわけで、どうも人間が短眠に慣れていくのは無理っぽいっすね。



2位:いつでもどこでも眠りに落ちれるのは健康な証拠

電車や公園ですぐに眠れるような人は少なからず存在してますけど、これは健康な証拠どころか、よく休息が取れてないサインであります。

いつでもどこでも眠れるような時は、前の夜に十分な睡眠が取れなかった証拠だ。体が十分な休息を取れていないせいで、マイクロスリープと呼ばれる小刻みな睡眠に入ってしまうのだ。

とのことで、いつでもどこでも眠れちゃうのは、前夜から続く睡眠負債を返してるだけなわけですねー。



1位:成人なら一晩の睡眠は5時間ぐらいで十分

 特にビジネスマンの世界では「睡眠は5時間でOK!」みたいな風潮もまだ強いみたいなんですけど、だいたいのデータでは、7〜10時間の睡眠を取らないと心と体は満足に機能しないとの結論が出てたりします。


たとえば、2007年にイギリスで行われた長期研究では、一晩の睡眠が7時間から5時間に減った人は、ちゃんと寝てる人にくらべて早期死亡率が2倍にはね上がったとか。その死因は主に心疾患でして、5時間を下回るとどうしても高血圧になり、免疫システムが壊れてしまうらしい。

いまだに多くの人が「自分は5時間睡眠で大丈夫」と考えているのは、もっとも大きな問題だ。

ってことで、早死にを防ぐためにもぜひ7時間は寝ておきたいところっすね。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。