A1ミルクが腸にダメージを起こす!心疾患の原因に!はどこまで正しいのか問題
ちょい前から健康業界で言われ始めるようになったのが、「A1ミルクってどうよ?」ってテーマです。
A1ミルクっていうのは、ベータカゼインA1っていうカゼインたん白質をふくむ牛乳のことで、日本で普通に売ってる商品はほとんどがこのタイプ。一方でA2ミルクってのも存在してまして、オーストラリアやニュージランドで育つ牛や山羊などからとれる牛乳はこのタイプ。
では、なんで「A1ミルクって良くなのでは?」と言われてるのかと言いますと、
- ベータカゼインA1が消化されるとBCM-7っていうオピオイドペプチドを生み出す
- BCM-7が腸管のオピオイドレセプターにひっついて、お腹の調子に問題を起こす!
って可能性が、”理論上"はあり得るからです。他方でA2ミルクはBCM-7を生み出さないので、同じような問題は起きないだろうと考えられてるんですな。
ってことで、近ごろはオーストラリアなんかでは「A2ミルクこそ至高の牛乳である!」みたいなノリがありまして、健康食品のひとつとして売られてたりします。
では、正味なところA1ミルクってどうなのよ?ってことで、その辺をガッツリ調べた研究(R)が出ておりました。
これはフライブルク大学などの研究で、過去のA1ミルク論文から15件のRCT、8件の観察研究、2件のケースコントロール研究をまとめた系統的レビューになっております。実験デザインがバラバラすぎてメタ分析は行われてないんですが、なかなか信頼性が高い内容でよろしいのではないでしょうか。
で、すべてのデータをひっくるめてどんな傾向が確認されたかと言いますと、以下のような感じ。
- 糖質コントロールの問題
- 1型糖尿病の発生率=A1とA2のあいだに違いはなし(エビデンスレベルはとても低い)
- 血中インスリンの改善=A1とA2のあいだに違いはなし(エビデンスレベルは低い)
- 心疾患リスクの問題
- 心疾患による死亡率=A1のほうが心疾患死亡率が上がる可能性はある(エビデンスレベルはとても低い)
- コレステロール値の改善=A1とA2のあいだに違いはなし(エビデンスレベルはとても低い)
- LDLコレステロール値の改善=A1のほうがLDLが9 mg/dL上がる可能性がある(エビデンスレベルはとても低い)
- 脳神経への問題=A1のほうが脳神経の疾患が発症しやすくなる可能性がある(エビデンスレベルはとても低い)
- 腸内環境への問題
- 下痢の問題=A1のほうが下痢になる可能性がある(エビデンスレベルは中程度)
- 便通の改善=A1のほうが排便タイミングが速くなる可能性がある(エビデンスレベルは中程度)
- 便秘の改善=A1とA2のあいだに違いはなし(エビデンスレベルは中程度)
- 運動関係の改善=A1とA2のあいだに違いはなし(エビデンスレベルは低い)
ってことでざっとまとめてみましたけど、全体的にエビデンスレベルは低いもんで、まだなんとも言えないわなーってのが正直なとこっすね。
これぐらいだとまだ「A1ミルクは危険!」とは言えないし、個人的にも普通に牛乳を飲むだろうとは思います。ただし、腸内環境へのダメージについてはやや精度が高い結論が出てますので、気になる方はA2にこだわったほうがいいかもしれませんねー。