仕事とプライベートを分けすぎると逆に仕事のパフォーマンスが下がっちゃうぞ!問題
「ワークライフバランス大事!」などとよく叫ばれる昨今。仕事の時間とプライベートの時間にハッキリとした境界線を作って、もっと自分の時間を大事にしようぜ! という考え方ですね。
非常に納得感のある発想でして、「やっぱプライベートは大事にしないとねー」ってのが現代の常識になりつつあるわけですが、「ワークライフバランスの考え方にはちょっと問題点があるんじゃないか?」っていうおもしろい論文(R)が出てましたんでご紹介。
これはボールステート大学とセントルイス大学の研究で、619人以上のビジネスマンが対象。どんなことを調べたのかと言いますと、
- 毎日の仕事でどのような思考が浮かんだか?(仕事に関することでもプライベートのことでも何でも)
- その思考によって仕事のパフォーマンスはどう影響されたか?
って2ポイントを被験者に記録してもらい、4371件のエピソードを分析した内容になっております。
たとえば、なにかの作業中に「週末に行く予定の映画が楽しみだなぁ」と思ったときに、「仕事と私生活にはハッキリ境界線を作るぞ!」と考えている人ほど、「いかんいかん!すぐ仕事にもどらないと!」と感じるケースが多いはず。この感覚が仕事のパフォーマンスにどのような影響を与えているかを確かめたわけです。
で、すべてのデータを分析して何がわかったかと言いますと、
- 仕事とプライベートを切り離そうと頑張っている人は、そのせいで仕事のパフォーマンスが下がりやすかった
- 逆に仕事とプライベートの境界がボンヤリしている人には、パフォーマンスの低下が見られなかった
だったんだそうな。「僕は仕事とプライベートはきっちり分けてます!」と言えるような人は、実は逆にパフォーマンスが下がっちゃうかもしれないわけっすね。
なんでこのような事態が起きるかと言えば、仕事とプライベートを切り離そうと頑張るせいで「認知の役割変換」って現象が起きるからです。ざっくり説明しますと、
- 仕事中に別のことが頭に浮かんでくる(「昨日の焼肉うまかったなぁ」とか)
- 仕事に意識を戻すために認知を変換する(「あ、焼肉のこと考えてる場合じゃないや」みたいな)
- このとき、仕事とプライベートをハッキリ分けている人ほど、認知転換に多大なエネルギーを使う(「焼肉は仕事と無関係なのだから、すぐに切り替えねば!」みたいな)
って流れがおきまして、ワークライフバランスを重要に考えている人ほど、切り替えに認知のエネルギーを使っちゃうわけですな。
逆に仕事とプライベートがあいまいな人は、そもそも大きく認知を切り替える必要がないんで、そのぶんだけエネルギーも保存されるのは当たり前の話。別に焼肉が頭に浮かんでいても、割と自然に元の作業へ意識をもどせるわけっすね。
研究チームいわく、
多くの会社は、従業員のマインドワンダリング(ぼーっと思考をさまよわせること)や、プライベートな電話に出ることをすすめたほうが、仕事と私生活にハッキリとした境界線を作るより長期的にはメリットが大きいかもしれない。後者の作戦を採用すれば、逆にワークライフバランスが崩れる可能性がある。
とのこと。もちろん、これは「ワークライフバランスなんて無駄!」って意味じゃないのでご注意ください。実際、家に帰っても仕事のことばっか考えてる人はメンタルを病む傾向も出てますので。ここで大事なのは、仕事とプライベートをギチギチにわけすぎると逆に不幸が起きるよーってことです。
そんなわけで、もっと仕事とプライベートの充実を図りたい方は、逆に肩の力を抜いて両者の違いをハッキリさせすぎないようにした方がいいのかもですな。なんでも完璧主義はよくないっすからね。