ほんの1時間のトレーニングでも「確証バイアス」ってそこそこ解除できるんだなぁ……という実験
「バイアス怖い!」というのは常識的な話。バイアスってのは人間の脳が生まれつき持っている思考のエラーのことで、このブログでも過去に大まかな例をざっと並べたことがありました。
バイアスに気づかぬまま暮らしてると、大事な意思決定を間違えるケースが増えまして、致命的なミスを犯しちゃったりしがち(欠陥住宅を買っちゃったり、とんでもない医者に引っかかったりとか)。ぜひとも対策しておきたいところです。
といっても、なんせバイアスってのはヒトの脳の奥底に埋め込まれてるんで、そう簡単には対策もしづらいところではあります。そもそも「いまバイアスに取り込まれてる!」と気づくこと自体が難しい作業ですからねぇ。
といったところで、「バイアスを1時間で解除する方法がある!」と主張するデータ(R)が出ておりました。これはHEC経営大学院の実験で、290人の学生を対象にしたものです。
実験の内容は非常に簡単でして、
- 被験者の半分に「バイアス解除用」のゲームをプレイしてもらう!
って感じです。バイアス解除用ゲームは「ミッシング」ってタイトルで、そもそもはアメリカの国家情報長官が情報分析の精度を高めるために開発されたというすごい由来を持ってたりします。
といっても堅苦しい内容ではなく、ミステリータイプのエンタメ寄りなアドベンチャーゲームになっている模様。Vimeoに公式トレーラーがありましたんで、気になる方はどうぞ。「消えた女性を探す」ってストーリーのなかで、バイアスを引き出すようなシーンが何度も出てきまして、そのたびにプレイヤーは自分の意思決定にフィードバックをもらうような流れになってます。
ちなみに、このゲームがあつかうバイアスは主に「確証バイアス」ってやつです。自分にとって都合がいい情報ばっか集めてしまうバイアスのことで、最終的にしょうもないガジェットを買ってしまったりするハメになりがち(私のことですが)。
ただ、数あるバイアスのなかでも「確証バイアス」はまだ取り組みやいことがわかってて、
- バイアスが起きやすいパターン
- バイアスが起きている時の心の状態
といった情報を前もって頭に入れておけば、意外と大丈夫だったりするんですよ。これに対して、解除が難しいバイアスもありまして、たとえば「暗黙バイアス」(人種差別や性差別につながるバイアス)や「アンカリング」(直前に出された情報に判断がひきづられるバイアス)などは、トレーニングでも難しかったりします。ここらへんのバイアスの差もおもしろいもんですが。
さて、最終的に「ミッシング」をプレイした人にどんな変化が起きたかと言いますと、
- ゲームをプレイしたグループは確証バイアスにダマされる確率が29%減り、判断の質が向上した!
だったそうです。もちろん、この結果をキープするには継続的なトレーニングが必要なんでしょうが、それにしても短時間の成果としてはすばらしいのではないかと思われますねー。誰かこのゲームのライセンスを取ってローカライズしてくれないものか……。