嫌な記憶がよみがえってくる!を解決するための超シンプルな方法はこれだ!みたいな実験の話
「鬱になる人は反すう思考が多い!」って話は何度も書いてる話。過去の失敗みたいなネガティブなイメージが何度も脳内によみがえってしまい、そのせいでどんどんメンタルがヘコんでいく現象のことっすね。
反すう思考が起きる原因はいろいろあるんですけど、わりと大きな役割を果たしているのが「感情」であります。人間ってのは強い感情をおぼえたものごとほど記憶する傾向がありまして、激しくネガティブな体験ほど忘れられなくなるものなんですよ。
では、この「脳に残る感情の問題をどうすればいいの?」ってことで、イリノイ大学などがちょっとしたTIPsを公開(R)してくれておりました。
これは「ネガティブな記憶が何度もよみがえっちゃう問題」について調べたもので、研究チームは次のように申しておられます。
感情が記憶を呼び起こすトリガーになることはよく知られている。感情には記憶を促進する働きがあるのだ。
この働きはメリットになることもあるが、トラウマ的な出来事を何度も思い出してしまう人にとっては、問題になり得る。
嫌な記憶がぶり返す現象に「感情」の問題がかかわってるから、これをなんとかしないといけないよねーってことですね。
そんなわけで、研究チームは19人の男女を集めて、こんな実験をしております。
- 被験者たちに、エグい写真(血まみれの男とか)または普通の写真(木々の画像とか)を見せる
- その際に、一部の被験者には「エグい写真を見るときは、背景のニュートラルな映像に意識を向けてくださいねー」と指示する(血まみれの男の背景にある普通のドアとか)
- 全員の脳をfMRIでスキャンし、どの脳領域が作業中に活性化されたかを見る
って感じでいったん被験者にトラウマ的な写真を見せて、どれぐらい記憶に残りやすいのかを調べたんだそうな。
で、そこから3〜5日後に再び被験者をラボに呼んで、前と同じエグい写真や新しい写真を見せたうえで、ネガティブな感情がどう変化したかを再チェックしたところ、
- 当然ながら、トラウマ写真のエグい部分に注目した場合、みんなその写真をより多く記憶していた
- しかし、トラウマ写真のニュートラルな部分に集中した場合、そこまでネガティブな感情がわき上がらず、写真の詳細な記憶もほとんど残っていなかった
だったそうな。実際のところ、映像のニュートラルな部分に集中した人の脳は扁桃体(感情をつかさどるエリア)の活動が少なかったそうで、そのぶんだけ記憶が形成されにくかったみたい。
研究チームいわく、
なんらかのネガティブな出来事が起こっているときには、その状況への焦点の当て方を変えることで、記憶の形成に直接的な影響を与えることができる。
とのこと。嫌なことを忘れたいときは、とにかくその記憶への焦点を変えればいいんだ、と。非常に簡単な介入ですけど、これは確かに効きそうですなぁ。
つまり、この研究を実生活に使うならば、
- 嫌な記憶がよみがえってきたら、その脳内の映像の「ニュートラルな部分」に意識を向け直して(背景にある木々とか空の映像とか)、自然と映像が消えるのを待つ
- なにか嫌なことが起きたら、その場面の「ニュートラルな部分」に意識を集中してやり過ごす(怒る上司の背景にかかってるカレンダーとか)
みたいになりましょうか。まぁ上司に怒られてるときに視線を背景に向けてたら、さらに怒られそうですが…‥。
ちなみに、反すう思考については以下の対策もありますんで、合わせてお使いください。