今週末の小ネタ:クルミで頭が良くなるか?カッピングは慢性痛に使える?孤独で身体のダメージはどこまで増える?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
クルミで頭が良くなるのか?問題
以前に「ナッツで頭が良くなるかも?」みたいな研究を紹介したんですけど、新しいデータ(R)ではイマイチな結果が出てて、ありゃーって感じでした。
これはアメリカまたはスペインに住む640人近くの高齢者(63 〜 79歳)を対象にした調査で、
- 半分の参加者に毎日クルミを食べてもらう(1日に必要なカロリーの〜15%)
- 残りのグループはクルミをひかえてもらう
- 2年後にみんなの認知にどう変化があったかを調べる
みたいになってます。この手の研究としては最大クラスでして、過去のデータよりも精度が高そうっすね。
で、2年後の結果がどうだったかと言うと、
- クルミを食べても、認知には特に良い影響は確認されなかった
- ただ、タバコを吸ってる人であれば良い影響があるかも
ぐらいの感じです。いちおうチームは「もっと長期にわたって研究すればより良い結果が出るかも?」とも言ってますけど、うーん、これを見る限りそんなに期待はできなそうっすね。
まぁそう言っても、クルミがオメガ3脂肪酸やポリフェノールたっぷりな食材なのは間違いないんで、常用しといて損はないはず。あくまで認知についてはそんな期待しないほうがいいよーってことで。
カッピングは本当に慢性痛をやわらげてくれるのか?問題
「カッピング療法」については以前も取り上げたことがあって、どうやら体を痛みをやわらげる働きはありそうだなーとか書いたりしました。カッピングってのは↓みたいなやつで、真空のガラスカップで皮膚を吸い上げる療法のことです。
前述どおり、カッピングが痛みに効くって説については一定の評価があったんですが、近ごろ慢性痛への効果を調べたメタ分析(R)が出てましたんで、ざっと結果をメモっときます。
ここでは2018年まで出版されたカッピングの文献から18のRCTをピックアップして、1,172人分のデータをまとめてくれております。でもって、その結果をざっとまとめていくと、
- なんにも治療しない場合と比べて、カッピングは短期的にかなり痛みをやわらげてくれる
- ただし、ニセのカッピングと比べた場合、カッピングの効果には有意な効果がない
- 他の療法と比べた場合も目立った有意差はない
- というか全体的にテストの質が低く、バイアスのリスクも超デカい
みたいになります。この結果を見てると、「結局のところカッピングの効果ってプラセボなのかなぁ」って感じがガンガンしてきますね(笑

まぁ、一方で短期的には意味があるのは間違いなさげなんで、どうしてもも痛みがツラいなら試すのもありじゃないでしょうか。思い込みだろうが何だろうが痛みがやわらぐなら素晴らしいことですし、副作用も特になさそうですしねぇ。
孤独で身体のダメージが増えるぞ!というメタ分析の話
孤独は体に悪いよーって話は「最高の体調」でもさんざん強調したポイントですが、近ごろさらに詳細なメタ分析(R)が出てたんで簡単にメモしときます。
これはサリー大学とブルネル大学の共同研究で、「社会的な孤立は体の炎症を増やすのか?」ってのを調べたものです。「社会のなかで居場所がない!」とか「特定の集団に所属できない!」といった人たちは、体内の炎症レベルが上がるのではないか、と。
炎症も「最高の体調」で強調したポイントでして、ざっくり言えば免疫システムが体のダメージを修復したり、ウイルスや細菌から体を守ったりするときに起きる反応のことです。本来は良いことなんだけど、炎症が長く続くと最終的に健康な細胞を壊し始めて、早死ににつながったりするんですよ。
ってことでチームはこの分野における30件の先行研究をまとめまして、その結論がどうだったかと言うと、
- 社会的に孤立している人は、ハッキリとCRP(体がダメージを追ってから数時間で血流中に放出されるタンパク)のレベルが高い
- 孤独感と炎症との関連はそこまで明確じゃないけど、IL-6(炎症性の物質)との相関は示唆された(ただし研究間に不一致があるので、孤独感が炎症反応に直接の影響を与えてるわけじゃないのかも)
- 社会的孤立と身体の炎症は女性よりも男性で観察される可能性が高い
だったそうで、社会的に孤立してるとやっぱ炎症マーカーは悪化するみたい。女性より男性のほうに悪影響が出てる理由は謎ですけど、社会的なストレスへの反応には性別の差があるのかもですね。
研究チームいわく、
孤独感と社会的孤立は、私たちの健康リスクを増加させることが示されている。多くの研究者が、その理由の一部は体の炎症反応によるものだと推測している。
とのことなんで、やっぱ健康のためにも孤立対策は必須ですねー。