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今週末の小ネタ:脳と運動とデスクワークと、自制心がある子供の特徴、「完璧主義」増えすぎ問題

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ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

歳を取っても脳を健康に保つには認知負荷のほうが大事かも?

「運動で頭が良くなる!」ってのはかなり確実な話なんですが、いっぽうで脳の働きがエクササイズだけでは決まらないのも確かな話。新しいデータ(R)では、「歳を取ったら脳の負荷のほうが大事かも?」って結論になっておりました。

 

 

これはケンブリッジ大学などの研究で、40〜79歳の成人およそ8,500人の調査データを使ってます。このデータには記憶力、注意力、視覚処理、速読、認知能力などの能力を20年近くも測定していて、加齢にともなう認知の変化を全員のライフスタイルと比べたんだそうな。

 

 

そこでどんな傾向が浮かび上がったかと言いますと、

 

  • デスクワークのようにあまり体を動かさない仕事についている人は、教育レベルの高さとは無関係に、認知機能が低下しづらかった(デスクワークをしている人は認知テストの上位10%に入ってることが多かった)
  • 肉体労働をしている人は、デスクワーク従事者よりも3倍の確率で認知機能が下がる可能性があった

 

だったそうです。3倍って数字がにわかに信じられないところですが、とにかく日常の仕事で体を動かさない高齢者の方が実は認知機能が衰えなかったんだ、と。

 

 

研究チームいわく、

 

今回の分析では、身体活動と認知力の関係は一筋縄ではいかないことがわかった。定期的な身体活動は多くの慢性疾患から身を守るメリットがあるが、認知機能の低下については他の要因が影響を及ぼす可能性も大きい。

 

運動量の少ない仕事(オフィスでのデスクワークなど)をしている人は、学歴に関係なく認知テストの成績が良かった。デスクワークは単純労働よりも精神的な負荷が高い仕事なので、認知機能の低下を防ぐことができるのかもしれない。

 

とのこと。まぁデータを見てると肉体労働をしてる人ほど余暇の活動が少ない傾向もあるんで、ちょっと判断が難しいとこなんすけど、「歳を取ったら活動量よりも認知負荷の方が大事かも?」って可能性は覚えておこうと思った次第です。

 

 

 

父親と遊んだ子供はセルフコントロール能力が高まる説

自制心がある人は子供時代に父親と遊んでいる!」ってデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは40年以上にわたって行われた78件の先行研究をレビューした調査で、「0〜3歳のころに父親と遊んだ子供はどうなるか?」って問題について大きな答えを出してくれてます。その結果だけをざっとまとめると、こんな感じです。

 

  • 父親とたくさん遊んだ子供たちは、多動のリスクが低くなり、後に感情や行動の問題を抱える可能性が低かった

 

全体的に赤ちゃんから幼児期にかけて父親と遊ぶと、将来の精神的な問題が少ない傾向があるみたいっすね。

 

 

研究チームいわく、

 

身体的な遊びは、子供たちのセルフコントロールをうながすような刺激的な状況を作り出す。子供たちは遊びのなかで自分の力をコントロールしたり、どこまでやったら怒られるのかを学んでいくのだ。

 

「遊び」は子供たちが自分の反応を練習することができる安全な環境を提供する。間違った反応をしたら叱られるかもしれないが、それで一生の終わりにはならないし、次には違う行動を取ることを学ばせる。

 

ってことで、子供は遊びのなかで適切な行動を学んでいくんだよーってことっすね。もちろん、これは父親に限ったことではなくて、お母さんでも同じ状況は再現できますので、その点はご注意ください。あくまで「子供が安全してリスクをおかせる環境作りが大事だ!」ってことですな。

 

 

 

若者の「完璧主義」増えすぎ問題

以前も「完璧主義が増えてる!」ってメタ分析を紹介しましたけど、新しいデータ(R)も同じ結論にいたっておられました。こちらはバス大学などの調査で、1989年から2016年にかけて、アメリカやイギリスの大学生41,641人を対象にしたメタ分析になってます。

 

 

ここでは完璧主義を3つのジャンルに分けていて、

 

  1. 自己本位な完璧主義:自分の内面から「完璧でいるぞ!」という欲求がわきあがるタイプ
  2. 社会規定の完璧主義:他人が要求する完璧の基準に合わせて生きようとするタイプ
  3. 他者志向な完璧主義:他人に非現実的なレベルの完璧さを求めるタイプ

 

それぞれのタイプがどれだけ増えてるかをチェックしたんですね。すると、全体的にわりと高めの数値が出まして、

 

  • もっとも増えたのは社会規定の完璧主義で33%の増加
  • 自己本位な完璧主義は10%の増加
  • 他者志向な完璧主義は16%の増加

 

だったそうです。他人の視線を意識して完璧を求めてたら、いかにもメンタルにはよくなさそうですねぇ……。

 

 

完璧主義が増えてる原因は謎ながら、とりあえず言えそうなのは、

 

  • 自由度が高まったせいで競争が激化してるから?
  • 経済格差のせいでより金稼ぎの重要性が増したから?
  •  SNSの普及により他人との比較が増したから?

 

といったところでしょうか。いったいどの影響が大きいのか、または他の原因があるのかはわからんですけど、とりあえず私も失敗を怖がるタイプなので、ここらへんは意識しておきたいなぁ、と。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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