鉄の調理器具は健康に悪いかもしれないよなーみたいな話
こないだ、パレオチャンネルの質疑応答で「鉄のフライパンってどうなんすか?」みたいなご質問をいただきまして、そこで「鉄製の調理器具は健康に悪い可能性があるかも?」みたいな話をちらっとしたんですよ。そうしたところ、「もっと詳しく!」ってご要望をいくつかいただいたんで、要点を軽くまとめておきます。
で、まず鉄のフライパンに関して大きな結論を申し上げますと、
- 鉄製フライパンが体に悪いって証拠はない。が、可能性はある
ぐらいなレベルの話になります。鉄のフライパンは長年にわたって人類が使ってきた調理器具だし、そのせいで目立った健康被害が確認されてるわけでもないんで、あくまで「体に悪い可能性もあるかなー」ぐらいの話です。
では、なぜ鉄製フライパンに不安材料があるかと言いますと、「料理で鉄分がフライパンから食材へ移り、最終的にそして体へ運ばれていくから」です。もちろん、鉄分そのものは人体がうまく働くのに欠かせないミネラルなんですけど、体内に鉄分が多くなりすぎると、体内から取り除くことができずにフリーラジカルを生み出す傾向があるんですよ(R)。つまり、フライパンのせいで体内がサビちゃう可能性があるわけっすね。
実際、鉄分の過剰摂取は多くの病気と関係がありまして、
- 252,164名の男女と15,040名の心臓病患者からなる13件の論文を調べたところ、ヘム鉄分過剰摂取は心疾患リスクの増加と密接な関係があった(R)
- ヘム鉄の摂取に関する8件の研究をまとめたメタ分析では、ヘム鉄の摂取量が増えるほど大腸癌が増える傾向が見られた(R)
といった感じで、わりと精度が高めな報告が出てたりするんですよ。生理中の女性やベジタリアンの人だとそこまで心配しなくてもいいんでしょうが、普通に赤身肉を多く食べるような方は注意しとくと良さげです。
でもって基本的に鉄製のフライパンにはかなり鉄分が含まれてまして、鉄のスキレットでトマトソース1食分を調理しただけでも、ざっくり5mgの鉄分を摂取することになるんだとか(R)。男性の場合は1日に8mgの鉄分があれば十分なので、これだけでも結構な量を取り込むことにはなりますね。
もちろん、調理器具にふくまれる鉄分は非ヘム鉄なので、肉にふくまれるヘム鉄に比べたらかなり安全ではあります(吸収されにくい)。が、料理の食材に入ってる酸には非ヘム鉄の吸収率を大幅に高める働きがありまして、例えばレモンやトマトなどを使った料理だと不安は高くなるかもしれないんですよねー。
ちなみに、そう言うと「ステンレスは?」って疑問を抱く方もいるでしょうが、ステンレス製の鍋には酸化クロムの薄い層がありまして、鉄の調理器具と違って水分に強くて錆びにくいんですよね。そのぶん鉄分が器具の外に出にくいと性質を持ってますんで、鉄分の過剰摂取にはつながりにくいだろうって感じです(クロムにアレルギーを持ってる人だとまた別のリスクがありますが)。
まぁ、鉄のフライパンは安価だし、保温性が高いし、長く使えるし、高温のオーブンにも使えるしで、メリットが多いのも確かではあります。その意味で「鉄のフライパンなどとんでもない!使ってはいけない!」って話じゃないのでご注意ください。
ただし、一方では鉄製のフライパンが健康に影響するかも?って懸念があるのも事実なんで、気になる方は、
- いろんな素材の調理器具を使い回す
- 酸が多い食材(ビタミンCとかが多い野菜)は鉄で調理しない
といった対策が有効かもしれません。なかでもクルクミンは鉄分の過剰摂取には有効だと思われますんで、肉好きには良いかもしんないっすね(あとは定期的に献血をするって方法もありますけど、これは簡単にできる方法じゃないので、お好みにお任せしますが)。とりあえず、そんな感じでー。