現時点で最も信頼に足る情報を集めると「この食事で癌になる!癌を防げる!」について何が言えるのか?
「この食事をすると癌のリスクがあがるかもよ!」ってのを調べたアンブレラレビュー(R)が出てたんで、その概要をざっくりまとめておきましょう。
もちろん、癌のリスクと食事の関係について調べた研究は多いんですけど、大きな問題がひとつありまして「これらの研究の多くが信頼できない」ってのがあるんですよね(笑) これは研究をディスってるわけじゃなくて、食事の観察研究ってのは「研究者が食事の内容をどのように測定したか?」や「癌の発生率の低さによって推定値に不確実性が生じてないか?」といった複数の原因が積み重なるものなんで、誤差が生じる可能性がめちゃデカいんすよ。
ってことで、かなり参考になるのがアンブレラレビューです。これは過去に行われたメタアナリシスを集めて、それぞれの精度を評価して、どれぐらい信頼できるかを判断したものです。シンプルに観察研究をメタ分析しただけでも、上記の問題の一部を解決することはできるんですけど、それだけだと元々の研究の問題はクリアにならないし、メタ分析自体でデータが適切に取り扱われていない場合もありますんで。
その意味で、アンブレラレビューは上述のトラブルを克服するのに有効して、今回の調査もまた「どんな食事で癌になりやすくなるの?」って疑問についてより良い知見をもたらしてくれるのではないかと。このレビューでは、体内に発生する11種の癌に関する食事リスクのメタ分析を集め、それぞれのエビデンスの強さと信頼性を評価してまして、かなり参考になりますねー。
ちなみに、今回のレビューでは、それぞれの結果を「強い」「とても示唆に富む」「示唆に富む」「弱い」の4つのカテゴリー分類してまして、 「強い」と「とても示唆に富む」と判断されたものは、これから新しい研究が出ても結果が変わる可能性が低いって意味でして、信頼は高めだと考えていいでしょう。
ってことで、このエントリでは、「強い」および「とても示唆に富む」に分類された「食事と癌」の関係をチェックしておきます。必ずしも「この食事がヤバい!」と明らかになったわけじゃないですけど、心に留めておく価値は十分にありましょう。
- アルコールの摂取は癌リスクが上がる。リスクが上がるものは、食道癌、大腸癌、肝臓癌、乳癌など
- 牛乳、チーズなどの乳製品の摂取は大腸癌のリスクが下がる
- コーヒーを飲むと、肝臓癌や皮膚癌(基底細胞癌)のリスクが下がる
- 野菜をたくさん食べると、口腔癌のリスクが下がる
- 果物をたくさん食べると、咽頭癌のリスクが下がる
- 全粒粉をたくさん食べると、大腸癌のリスクが下がる
ってことで、あらためて並べてみると「そりゃそうでしょうなー」みたいなラインナップになってますけど、現時点で信頼に足る情報を精査するとこんな結論になるんだなーってのは、知っておいて損はありますまい。どうぞよしなにー。