感情に名前をつけると頭が良くなる……だと?----「拡張された精神」
というわけで、ちょっと前に紹介した「拡張された精神」の覚え書きの続きです。
前回は「万全の知能を発揮するためには自分の脳に頼ってるだけじゃダメ!身体が伝えてくる情報にも耳をすまそう!」って話をしましたが、今回はその続きで、
- 身体の知性を鍛えるにはどうすればいいのか?
ってポイントを見てみましょう。私たちの無意識にためこまれた大量の知識にアクセスするには、いったいどんなトレーニングが考えられるのか?ってポイントですな。
では、具体的なトレーニングがあるかをチェックしていきましょう。著者のポールさんは、以下のような訓練を推奨しております。
マインドフルネス瞑想
最初に著者が勧めているのが、このブログでもおなじみのマインドフルネス瞑想。このエクササイズには、体内信号に対する感度を高め、島皮質のサイズと活動を変化させる働きがあるんだそうな。
その具体的な手法については、「あらためてマインドフルネスの科学的なメリットをならべてみる」をご参照ください。
ボディスキャン瞑想
身体感覚を鍛える瞑想系のエクササイズとして、もっともおすすめなのがボディスキャン。自分の体に意識を向けていくタイプのエクササイズでして、内受容感覚に効くのも当然と言えるでしょう。個人的にも好きなトレーニングですね。
その具体的な手法については、「あらためてボディスキャンのやり方を簡単に説明するよ!」をご参照ください。
感情ラベリング
感情ラベリングってのは、「無(最高の状態)」でも軽く紹介したような「感覚を記録して名前を付けようぜ!」みたいな考え方です。
この手法を調べた具体例としてはUCLAの実験がありまして、まずは被験者に聴衆の前で即興のスピーチをしてもらい、ストレスを与えたんだそうな。その後、全体をふたつのグループに分け、
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感情のラベリングを練習:「私は○○と感じている」ってフレーズの穴埋めをするように指示。例えば、「緊張して落ち着かない。心臓がドキドキして、手のひらに汗をかいている」みたいな感じ
- なにもしない:自分の感情にラベルを貼らずに、まったく関係のない別の活動をする
それから、みんなのストレスレベルを調べたところ、あきらかに感情ラベリングをしたグループの方がリラックスしていたんだそうな。
その他、脳スキャンなどの研究からも「感情ラベリング」には他のメリットが確認されてまして、
- 感情の理解が上がる:興奮と緊張を間違えたり、怒りのような強い感情が起きた原因を間違えたりといった問題がなくなる
- 感情コントロール力が上がる:感情や身体的感覚を理解した結果、衝動的に行動するケースが少なくなり、理性を保ちやすくなる
- ストレスの軽減:自分の感情に名前をつけると、体のストレス反応が即座に抑制され、心を落ち着かせる効果がある
みたいになってます。感情に名前をつけるだけでこれだけの変化が得られるってのは、すばらしいことですね〜。
感情ラベリングを実際に行うためには、
- 語数を増やす:「無(最高の状態)」でも書いたように、いろんな単語を覚えておき、自分の感情を複数の言葉で表すほど、生理的な興奮が抑えられやすくなる
- 細かく説明する:「緊張した」だけでなく、「緊張、イライラ、不安、おぼつかなさを感じている」のように、できるだけ自分の状態を正確に描写してみる。こちらも「無(最高の状態)」に書いた話ですな
といったあたりを押さえておくのが吉。なにかネガティブなことがあったら、「私は○○と感じている」ってフレーズを思い出し、どんな言葉が当てはまるかを考えてみるといいでしょう。
ってことで、今回も長くなりましたのでこのあたりで。身体的な認知の話はまだ続きまして、次回はエクササイズやジェスチャーのお話などを見ていきましょうー。