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反転学習、やっぱり効率が良いみたいだよ!というメタ分析のお話

 
 

反転学習」ってワードを聞いたことがある方は多いでしょう。近ごろ各教育機関や企業で流行りつつある勉強法で、特にコロナ禍での授業やセミナーなどに役立つんじゃないの?と考えられております。

 

 

反転学習がどんなもんかと言いますと、

 

  • 普通の授業は、まず講師から授業を受けて、その後で内容を復習する
  • 反転学習では、まず自宅でビデオ講義をチェックして大まかに知識を入れておき、その後の授業では講義の演習や知識のディスカッションを行う(いわゆる「宿題」のような学習を講義中に行う)

 

みたいになってます。反転学習で使われる「授業前の勉強」は、

 

  • デジタル化された講義
  • オンライン講義

 

の視聴がメイン。その一方で、授業中にどんなことをするかと言いますと、

 

  • ディスカッション
  • ピアティーチング(生徒同士で教え合う)
  • プレゼンテーション
  • 問題解決
  • グループ活動

 

といったアクティブラーニングを行うわけです。要するに、反転学習では普通の授業とインプットとアウトプットの順番が異なるわけっすな。

 

 

2012年以降、反転学習がどれぐらい有効なのかを関する文献の数はめちゃくちゃ増加してますし、さらに近年では東大などでも導入されたりしてまして、「どれぐらいの効果があるの?」ってのは実に気になっちゃうわけです。

 

 

で、ここんとこホープ大学が行ったメタ分析(R)では、反転学習に関する研究をまとめて詳しい効果を検証してくれていて、まことにありがたい内容になっておりました。

 

 

このメタ分析では、同じ講師が「反転授業」と「通常の講義」を行った場合の効果を比べた317件の研究(参加者は51,437名)のデータを分析したもの。具体的には、大きく3つのカテゴリーに分けて検証を行ってます。

 

  • 学業への効果:基礎知識は増えるか? 高次の思考力は鍛えられるか? 応用力や専門的なスキルは身につくのか?

 

  • 対人技能への効果:学生のモチベーションやメタ認知スキル、対人スキルなどに変化はあるか?

 

  • 勉強への満足度:学生たちは勉強への満足度がアップするか?

 

ってことで、反転学習の効果を複数の範囲にわたって検証したみたいっすね。その結果、メタ分析の結果わかったのはこんな感じでした。

 

  • 反転学習を受けた学生は、調査したすべての学業成績において、普通の授業を受けた学生よりも優れた成績を収めた


  • 反転学習は基礎的な知識の構築にプラスの影響を与え、高次の思考にも(わずかながらではありますが)プラスの影響を与える


  • 反転学習は、専門的なスキルやアカデミックなスキルを身につけるのに特に効果的だった

  • さらには、学生の対人スキルの向上、モチベーションの向上、時間管理のうまさの改善などについても、反転学習は普通の授業よりも優れていることがわかった

 

  • 反転学習を受けた学生は、普通の講義を受けた学生に比べて、授業に対する満足度が高かった。ただし、この全体的な効果はかなり小さかったので、そこまで期待するほどではないかも

 

そんなわけで、反転学習の効果をざっとながめると、まさに「良いことづくめ」みたいな結果ですね。データを見てると、特にスキルベースの学習に特に適しているようでして、個人的にも「これは導入したい!」って気分になりました(ただし、数学と工学のコースについては、割と反転学習を導入した際の効果が小さいようですが)。

 

 

ちなみに、その他おもしろかった点としては、

 

  • 一般的に「反転学習では授業前に小テストや課題を行おう!」みたいなことが言われるが、今回の分析では、授業前の小テストや課題は学生の学力向上レベルを低くする働きがあった(なぜこのような結果になったのかは不明だけど、授業前にテストを行うと、教材の中身を理解しようと努力するよりも、小テストで良い結果を出すことがモチベーションの中心になるからかも)

 

  • また、反転学習をやればやるほど良いってわけでもなく、ほぼすべての授業を反転学習にした場合と比べると、反転と通常の講義を組み合わせたやり方の方が、成績が向上しやすい傾向があった

 

というわけで、完全に全てを反転学習にするよりも、部分的に反転させた方がいいかもよ?ってのは、ためになる知見でしたねー。なんでもかんでも反転させりゃいいって話でもないんですね。

 

 

念のため、反転学習の効果が高い理由をざっくりまとめておくと、こんな感じになります。

 

  • 反転学習を行うと、学生たちは「あらかじめ知っている知識」をベースに授業に取り組むことになるので、受動的な講義よりも深いレベルで積極的な学習が可能になる

 

  • 学生が授業の前に基礎的な情報を記憶に組み込むことができるため、授業中にムダに脳のリソースを使わずにすみ、より深い理解や、より複雑なアイデアの発展のほうに頭を使うことができる

 

いずれも昔から「学習効率を上げるために欠かせない要素」と言われてきたポイントを満たしてまして、「こうして見ると反転学習が効くのも当然かもなー」とか思いましたね。あとは自分の勉強にどう活かすかですなぁ……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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