今週末の小ネタ:健康食でなぜ幸せになるのか?休憩で幸福度が下がる人がいるのはなぜ?ストレスは役立つ!は本当に役立つ
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
野菜とフルーツを食べると幸福感が上がるのはなぜなんでしょう?
その昔、「野菜とフルーツを食べると必ず2年以内にガッツリと幸福度があがる」みたいな話があったとおり、健康的な食事をしている人たちは主観的な幸せの感覚が大きい傾向があるんですよ。なんでそういった現象が起きるかについては諸説ありまして、
- 野菜とフルーツのおかげで脳の炎症がおさまるから?
- 野菜とフルーツを食べてる人は、運動もたくさんするから?
といった考え方があったりしますが、まだまだ調査が必要な段階であります。
で、新たにケント大学とレディング大学の研究チームが行った研究(R)は、14,159人の男女に調査を行い、みんなに「長期的な報酬を得るために満足感を遅らせたり、目先の満足感を捨てたりする能力があるか?」ってポイントを測定しております。具体的には、「特別で健康的な食事を続けるのは難しい」や「長期的な利益になるのでいつも健康的な食事をしている 」など、自制心に関連した調査項目に答えてもらったんだそうな。
その結果わかったことについて、研究チームはこんなことを言っておられます。
満足を遅らせる能力は、ライフスタイルと幸福度に有意な影響を与えることがわかった。性別、所得階層、教育、年齢階層、農村/都市居住者の間の異質性を検証したところ、プラスの影響の大きさはカテゴリーごとに異なるが、全体的に有意だった。
野菜とフルーツを食べるような人は目の前の満足を捨てる能力が高いので、そのおかげで人生全体の満足度が高まってるんじゃないのか?ってことですね。
もちろん、この結果は相関関係なんで、満足を遅らせる能力のおかげで人生の満足が高まってるとは言いづらいとこもあるんですけど、満足感を遅らせることができれば「日々の生活を自分の力でコントロールできている!」と感じられるでしょうから、そこから自信と主観的な幸福感を高めるのはあり得るでしょうな。
事実、研究チームも、
満足感の遅延は、個人が自分の人生をコントロールできていると感じることで、飲食物の消費と生活満足度の両方に影響を与える可能性がある。外的な統制の所在ではなく、内的な統制の所在を持つ個人は、食事や運動を定期的に行い、適度な飲酒をし、タバコを吸わないなど、健康的な習慣を持つ可能性が高い。
などとコメントしてまして、やっぱ自己コントロール感は大事よなーって気持ちを新たにしたわけです。
休憩で逆に幸福度が下がっちゃう人の考え方とは?
人生の満足には休暇が大事!とはよく聞く話ですけど、「こんな考え方をすると、休日のせいで逆にストレスが増える!」みたいなデータ(R)が出てておもしろかったです。
細かいことを書く前に、いきなり結論からまとめておくと、こんな感じになります。
余暇にはメンタル面でのメリットがあり、生産性を高め、ストレスを軽減する。この作用を示唆する研究は数多い。しかし、私たちは、もしあなたが『余暇は無駄だ』と考えると、鬱病やストレスのリスクが高まることがわかった。
「休日なんて非生産的!無駄だ!」と思ったら、休日が逆に精神的なダメージを与えちゃうんだ、と。いかにも心身に悪そうな考え方ですけど、「人生は生産的でなくては!」って思いに取りつかれてる人は少なくないでしょうから、わりと多くの人に役立つ知見かもしれないですね。
これは4つの実験で1310人を対象にしたテストで、たとえばこんな調査をしてます。
- みんなに退屈な作業をしてもらう
- その後で、休憩時間と称してかわいい猫の動画を見てもらう
すると、「休憩なんて非生産的だからなー」みたいな考えを持っている人は、猫の動画すら楽しむことができなかったそうで、こりゃ困ったもんだなーって結論ですね。
もっとも、なかには「生産性を重視する人」でも休日によってメンタルが低下しない人もいまして、そのコツについてチームはこんなアドバイスをしておられます。
もし、レジャーに何らかの生産的な目的があると考えることができれば、レジャーが無駄だと思っている人でも、同じようなメリットを得ることができる。
休日の活動を「長期的な目標」につなげる方法を考えてみよう。楽しい活動を人生の大きな目標の一部にする方法を見つけてください。それがどのように生産的で、手段的で、役に立つかを考えるのだ。
たとえば、先の「猫動画」の例でいえば、「かわいい猫動画にはストレス解消の効果が認められている!ゆえに、この休憩は脳を休めて次のタスクに向かうために欠かせない行為なのだ!」と思い直すことで、せっかくの猫動画をしっかり楽しめるようになるわけっすね。
さらにチームいわく、
私たちはグローバル社会に生きており、忙しく生産的であることがいかに重要かというメッセージにさらされ続けている。このメッセージを信じ、余暇は無駄であるというメッセージを心に刻むと、どこに住んでいても憂鬱になり、幸せを感じられなくなる。
ということなんで、生産性至上主義者の方はお気をつけください。
ストレスは役立つ!で実際にパフォーマンスが上がる件
不安な時は「オレは燃えてるぜ!と自分に言い聞かせた方がいいっすよ」みたいな話を、かつて取り上げたことがありました。なんでも、緊張や心配に取りつかれたときは、深呼吸で気持ちを落ち着けるのもいいですが、自分の考え方を変えてみるのもかなり有効みたいなんですよね。
ロチェスター大学の新しい研究(R)も似たようなポイントを調べてくれていて、おもしろかったです。これはコミュニティカレッジの教室に通う若年層を対象にしたテストで、339人の男女が試験を受ける直前に、全体を2つのグループにわけてます。
- ストレス再評価:「ストレスを感じる場面では、私たちは手のひらに汗をかいたり、心拍が速くなったりするなど、交感神経の興奮が高まる。これは必ずしも"悪いこと"ではなく、パフォーマンスの向上につながる有益なものだ!」っていう生理学的な事実を学ぶ
- アクティブコントロール:ストレスについて何も教えず、そのままテストに臨んでもらう
その後、実際のテストの結果を確認したところ、
- ストレスを再評価したグループは成績が向上したうえ、評価への不安が少なく、試験日のコルチゾール(ストレスホルモン)も低下していた
- また、ストレスを再評価した学生は、プレッシャーのかかる試験を「これは実行可能な課題だ!」と考えることができた
みたいな結果だったそうです。研究チームいわく、
ストレスは一般的に否定的な影響を与えるものと認識されているが、ストレスの再評価は、ストレスのメリットを個人に伝え、脅威の評価を減らし、そのおかげで最終的な結果を改善する。
ということで、過去の研究とも非常に整合性が高い結果ではないでしょうか。今後、手のひらに汗をかいたり、心臓がドキドキしたりするような場面に出くわしたら、「これはパフォーマンスアップに役立つのだ!」って事実を思い返してみるといいかもしれませんねー。