週休3日にすれば幸福になるし逆に仕事がはかどるしで良いことだらけなんじゃない?みたいな観察研究の話
人間の労働時間はどんどん長くなっている!って話はよく聞く話で、世界でも問題になってる昨今でございます(日本の場合は総労働時間は下がりつつあるものの、有休の消化率が悪い問題がデカいっぽい)。
ってことで最近はいろんな対策が立てられてるんですけど、ここんとこアイスランド政府がやってた実験(R)はまことにシンプルで良い感じでした。簡単に言ってしまえば、
- 週休3日にすれば万事OKだぜ!
みたいな感じです。単純に出勤時間を短かくするだけで働く人の幸福度とワークライフバランスが上がるし、逆に生産性はまったく変わらないんだよーって話です(逆に生産性には向上が見られるケースもある)。
この実験はアイスランドの6つの職場で始まってまして、その後100の職場まで拡大して最終的には2,500人以上の労働者が参加したとのこと。具体的には、
- 2014年に、レイキャビク市議会が週休3日制のお試し運用をスタート。2017年には、アイスランド政府も同様の取り組みを開始
- いずれの場合も完全な週休3日制ではないものの、全体の労働時間を短くして、できるだけ週休3日に近づけるようにした
みたいになってます。当初は完全に週4日だけ働くわけにはいかなかったものの、
- 金曜日をメインに、その他の曜日の労働時間を短縮する
- 全曜日の始業時間を遅くし、終業時間を早くする
- 労働時間と生産性をグラフ化する
といった取り組みを4年ほど続けてみて、どんな変化が出たかをチェックしたんだそうな。アイスランド偉い。
さて、その後の調査やインタビューで結果がどうなったかと言いますと、
- みんな仕事のやり方を見直すようになり、時間をより効率的に使う人が増加
- サービス業のクオリティは変わらず、むしろ向上したと報告されるケースが増加した(例えば警察などは、以前より事件の解決率が上がった)
- オフィスや学校でも全体の幸福度が向上し、ストレスの症状が減少した
- 実験の参加者は、「仕事をこなすのが楽になった!」と報告
- 家庭でのストレスが減り、子供と過ごす時間が増えたと報告する人も増加
って感じでして、「良いことだらけじゃないの!」みたいな結果になってます。報告書に引用されている参加者は「働く時間が減ったのは天からの贈り物のようなものだ!」と言ってまして、なんともめでたい話ですなー。
ちなみにこの報告書では、ここまでの成果が得られた理由を「心理的距離のおかげでは?」と推測しておられます。簡単に言えば「プライベートの時間で、自分はちゃんと仕事から切り離されているなー」と感じられるかどうかを表す言葉で、この心理的な距離感が長ければ長いほど脳がリフレッシュして、翌日からより質が高い時間を過ごせるようになるんですよ。
心理的距離に関する報告(R)は過去にもありまして、ドイツの労働者にアンケートを取り、「仕事にどれだけ従事していると感じているか?」「勤務時間外にどれだけ仕事から切り離されていると感じているか?」を尋ね他ところ、
- 勤務時間は仕事にガンガンとのめり込み、週末にはガッツリと切り離された人ほど、翌週からポジティブな効果を得ていた
だったそうです。要は仕事とプライベートの明確な切り分けが大事っていう普通の話なんですけど、まぁ現実的にはなかなかうまくいきませんよね。私も気を抜くと仕事のことばっか考えますし。
その点で、企業側が無理やりにでも「労働時間を減らすぞ!」とアナウンスするのは、働く側の心理的距離を引き離すのに有効なんでしょうな。近ごろは「現代人は無駄に働きすぎでしょ!」って提言も増えてきましたし、今回のアイスランド実験みたいなことを、日本でもやって見たらいいよなーとか思った次第です。
それまでに個人でできる対策としては、ちゃんと休暇を取ってプライベートと仕事の切り分けを徹底するぐらいしか思いつかんですが、「とにかく労働時間を減らすぞ!」を暮らしの優先順位にして行動してみるのはいいかもしんないですね〜。