運動すると食欲が増える!カロリーが暴走する!はどこまで正しいのか?のメタ分析
運動って食欲に影響するの?って問題を調べたメタ分析(R)が出てたんで、内容をチェックしときましょう。「運動をすると食欲は増えるの?増えないの?」って問題ですね。
一見シンプルな疑問ですけど、これがなかなかややこしくて、
- エクササイズをしても食欲に影響はないのだ!と指摘するデータがある(R)
- いや、エクササイズで安静時の代謝が上がると、やっぱ食欲は上がるでしょう!というデータもある(R)
みたいに相反するデータがあるんですよ。健康系の調査ではよくあることですけど、なかなか難しいもんですねぇ。当然ながら、「運動すると食欲が増える」場合は、その数字も考えつつダイエットしなきゃいけないわけで、減量をしたい人にとっては大事な問題と言えましょう。
ってことで、この新しいメタ分析では肥満に悩む人を対象にした過去の研究をピックアップ。みんなに何らかの運動プログラムに参加してもらい、参加者の食欲を測定した研究だけを選んだらしい。果たして、太りぎみな人が運動をした場合に、食欲は増えるのか減るのか?ってことですね。
では、分析の結果をまとめて見てみましょうー。
- すべてのデータをまとめた場合、運動をしたグループと運動をしなかったグループの間で、その後の摂取カロリーの差はなかった
- 4つのRCTと2つの非盲検試験(割と質の高い研究)だけを分析した場合、運動をしている人は、運動をしていない人に比べて1日の消費カロリーが102kcal多かった(効果量は小さい)
- 摂取カロリーの前後の変化を報告した研究では、運動をしたグループは摂取カロリがー57kcal減少していた。が、質の低い研究を除外すると、この結果は数字が逆転した(+67kcal)。まぁこのタイプのデータはバイアスがかかりやすいので、そのせいがあるのかも
- 食欲の変化については、空腹時の満腹感には変化がなかった。毎日の空腹感と満腹感も、運動しようがしまいが差はなかった
- 以上の結果は、運動のつらさや性別による違いは見られなかった
という感じでして、データの選別によってバラけた結果が出てて、なんともわかりづらいっすね。
が、結局ところ、最も信頼性の高い結果に絞り込むと、
- 運動をすると、何もしない場合より1日あたり102kcalほど多くカロリーを摂取する
- ただし、全体的にみれば食欲とカロリー摂取に対する運動の効果はわずかなものだろうなーとは言える
ぐらいの解釈になりますかねぇ。この結果は、過去に健康な体重の人を対象に行われたメタ分析(R)の結果とそこそこ一致してまして、「運動による食欲の増加はかなり小さい」と言えそうであります(一部の人には重要な違いになるかもですが)。
あと、今回のデータを見て印象に残ったのは、
- 全体のデータの質は低めで、質が良好と判定された研究は全体の約20%ぐらい
- さらにデータごとのばらつきが大きく、運動で体重がめちゃくちゃ減る人もいれば、ほとんど効果が出てない人もいる(これは食事の質やら遺伝、心理、環境などの原因が大きいんだろうなーって感じ)
- ただ、今回の研究では、肥満の人の体型改善(特に内臓脂肪)にはやっぱ運動は有効だよなーと思わせる結果が出ている
といったあたりでして、やっぱダイエット研究って信頼性の担保が難しいよねーって印象っすね。そのため、今後の研究では、もうちょい運動による摂取カロリーの増加は大きめに出そうな気もしております。そこはご留意ください。
いずれにせよ、要点としては「運動は食欲とカロリー摂取量に小さな影響しか与えなさそう!」ってことなんで、もし「運動で食欲が暴走したらどうしよう……」と悩んでいる方がいた場合は安心しても良さそうっすね。