糖質を減らしまくった食事って腎臓に石ができちゃうんじゃないの?みたいなメタ分析のお話
ケトジェニック・ダイエットってどうなの?みたいな疑問は昔からありますな。ケトジェニック・ダイエットってのは、とにかく炭水化物をカットする食事法のことで、
- めちゃくちゃ体重が減る!(これは個人的に疑問が多い)
- てんかんの治療に良い!(これには一定の証拠がある)
- 脳のパフォーマンスが爆上がり!(これはめちゃくちゃ怪しい)
みたいに言われております。とにかく賛否両論が多い手法でして、個人的には「別に実践は止めないけど不調が出たらすぐやめてくださいねー」ぐらいのスタンスですね。
で、新しいメタ分析(R)では、「ケトジェニックの副作用ってどんな感じ?」ってポイントを調べてくれててためになります。結論から言ってしまうと、
- ケトジェニックって、腎結石のリスクが上がるんじゃないの?
みたいになります。腎結石ってのは名前のとおり腎臓の中に石ができちゃう現象で、尿のなかにふくまれるシュウ酸などがカルシウムと結びついて発生するんですよ。腎臓のなかにおさまってれば問題は起こさないんですけど、尿管に落ちてくると激痛が発生するのが悩みどころ。その苦痛は「世界三大激痛のひとつ」と言われるぐらいで、私は経験したことがないんですけど、以前に知人が苦しむ姿を見たことがありまして「これはヤバそうだ……」と思ったのを覚えております。
この研究が何を調べたかと言いますと、
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先行研究から、ケトジェニックの腎結石リスクについて調べたものから、割と精度が高い36件をピックアップ。2,795人のデータを分析する
- ピックアップした研究の調査期間は3.7±2.9年ぐらいで、ケトジェニックを続けた場合の腎結石リスクをチェックしている
って感じになってます。普通の食事をしてる人は年に男性0.3%、女性0.25%ぐらいの確率で腎結石が発生するんですけど、果たしてケトジェニックを続けてたらどうなのか、と。
それでは、分析の結果なにがわかったかと言いますと、
- 36の文献のうち、35件で「ケトジェニック・ダイエットで腎結石の発生率が上がる!」とされていた。「腎結石にはならない!」と報告したのは1件だけだった
- ケトジェニック・ダイエットを続けた場合、腎結石の発生率は以下のようになる
- 全体の腎結石の発生率は5.9%
- 子供の場合、腎結石の発生率は5.8%
- 成人の場合、腎結石の発生率は7.9%
ってことで、ケトジェニックを続けた場合に腎結石が起きるリスクは、ざっくり言って一般人の7倍ぐらいになるんじゃないか、と。これはなかなか怖い数値が出ましたね……。
ちなみに、この分析で得られた他の知見を申し上げますと、
- ケトジェニック・ダイエットで発生する腎結石は、尿酸結石が48.7%、カルシウムベースの結石が36.5%だった
- ケトジェニック・ダイエットと腎結石の関係については、出版バイアスは見られなかった(つまり、ケトジェニックに有利すぎたり、不利すぎるような結論は出てないと思われる)
みたいになります。んー、尿路結石いやだなぁ……。
もちろん、この研究にも難点はありまして、その点はご留意いただく必要はございます。例えば、
- データごとにおけるケトジェニック・ダイエットの方法がバラバラ(糖質の減らし方にバラつきが多い)
- 家庭環境やらエクササイズの有無で統計を調整していない
- あくまで「結石ができるかどうか」を調べただけで、腎臓の機能にダメージがあるかまではわからない
といったあたりは、まだ今後の評価を左右するポイントになりそうな気がしております。
ここらへんをふまえた上で、個人的には「まだケトジェニックが危険とは言い切れないものの、実践の際はかなりの注意が必要だし(水分補給に注意するとか)、腎臓に問題がある人にはおすすめできないかなー」ぐらいの印象を持ちました。超低糖質系の食事をやっている方はお気をつけください。