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薬をのぞいてメンタルの改善に効きそうなテクニックを徹底的に調べたぞ!という研究の話

 

鬱病の代替療法はなにが効くか徹底的に調べたよー」ってデータ(R)が出ておりました。鬱病の治療には、抗鬱薬、心理療法、または両者を併用するのが定番ですけど、その他にも、

 

  • ハーブ
  • サプリ(ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス)
  • ヨガ
  • カイロプラクティック
  • 瞑想
  • リラクゼーション
  • 鍼灸

 

みたいにいろんな方法がありまして、それぞれに「効果があるんじゃないの?」と考えられてきたんですよね。あくまでサポート的な役割ではありますが、本当に使えそうなものはやはり押さえておきたいところです。

 

 

実はこれまでも代替療法のレビューはあったんですけど、取り上げられている方法に偏りがあったりして、なかなか「これは網羅されている!」と言えそうなものは少なかったんですよね。その点で今回のレビューは、2002~2018年に実施された26件のメタ分析を選び、そのすべてをまとめたアンブレラレビューになってまして、現時点で過去最大の内容になっております。

 

 

でもって、この研究でわかったことをダダーっと見ていきましょう。

 

  • 鍼灸治療:抗鬱薬と併用した場合、電気鍼の治療は鬱病の重症度を下げるかもしれない。が、かなり証拠としての質は低いので注意。寛解率については抗鬱薬との併用による効果はないかも

 

  • アロマセラピー:アロマセラピーに関するメタ分析はゼロ。しかし、吸入アロマセラピーとアロマセラピーマッサージに関する研究では、「抗うつ効果があるかも?」ぐらいのことは言える。

 

  • バイオフィードバック:最近のシステマティックレビューを見てると、何らかの効果を示したRCTが1件しかないので判断不能。

 

  • サフラン:中程度の質のメタ分析では、、8週間の治療まではプラセボより有意に高い効果を示すとの報告がある。ただしデータの質はまだ低いので注意。大きな副作用は報告されていないが、全体のサンプルサイズが小さく、出版バイアスのリスクも高い(つまり、都合が良いデータばかりが世に出てる可能性が高い)

 

  • クルクミン:6つのRCTの結果から、鬱病の重症度を下げる可能性はある。ただし、やっぱりデータの質はまだまだ低い。

 

  • 漢方薬:漢方薬に関する296件のRCTを対象とした系統的レビューでは、全体的に出版バイアスのリスクが深刻。そのため、プラセボよりも効果があるかどうかはなんにも言えない。

 

  • 催眠療法:催眠や自己催眠の技術に関するメタアナリシスは、この概要の掲載基準を満たしていない。このトピックに関する唯一のレビュー126には6つのRCTが含まれており、そのうち1つのRCTのみが軽度の一次うつ病を持つ成人を対象としていた。体調不良の患者と健康な成人の混合サンプルにおいて、(自己)催眠は抑うつ症状を減少させるのに有効であると思われた。

 

  • 光療法:高品質なメタ分析では、抗鬱薬+明るい光療法を行うと、鬱病の重症度をやわらげる可能性はある。ただし、そこまでの効果がないって報告もあり、どこまで使えるかは謎。

 

  • マッサージ:鬱病の患者にマッサージ療法の効果を調べたメタ分析はなし。ただし、体調不良の患者と健康な成人であれば、マッサージ療法は抑鬱症状に効くかも。

 

  • ヨガ:データの質が低すぎて現時点ではなにも言えない。

 

  • プロバイオティクス:データの質が低すぎて現時点ではなにも言えない。

 

  • 音楽療法:鬱病の重症度に対して中程度の効果があるかもだが、データによって効果の差が大きすぎるため、やっぱりなんとも言えない。

 

ってことで、わりとメジャーなところだけをピックアップしましたけど、どれも現時点では「データの質が低すぎてなんも言えん!」って結論がめちゃくちゃ多いですね。メンタルの悪化にはいろんな原因があるので、これといった対策を見つけるのは難しいんでしょうなぁ。

 

 

ただし、そんな状況でもこれなら試してもいいのでは?」って手法がふたつだけ見つかってまして、具体的には以下のようになります。

 

 

  • セントジョンズワート:軽度から中等度の大鬱病患者であれば、セントジョンズワートがプラセボより効く可能性があるかも(データの質は中等度)。標準的な抗鬱薬と比べた場合も、セントジョンズワートは同じぐらいの効果がありそう。

 

  • マインドフルネス系の認知療法(MBCT):大鬱病患者に対するMBCTの中程度の質のメタ分析では、MBCTは抗鬱薬の投与を受けている患者と比べて、鬱病の再発リスクを有意に減少させると報告されており、これといった副作用は報告されなかった。

 

 

このふたつもデータの質は中程度ってところではありますけど、「なんか薬以外の方法も試してみたいなー」とか「鬱ってほどじゃないけどメンタルを改善したいなー」みたいな方は、まずここから手を付けたほうが実りは大きそうな感じがしますねぇ。個人的にはマインドフルネス系は日常的にやっとくのがよいかと思いますが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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