今週の小ネタ:フラボノールやっぱ脳に良い? ダークチョコでネガティブ気分が改善? テレビの見過ぎえ脳が縮む?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
フラボノールはどこまで脳に良いのか?を調べた観察研究のお話
フラボノールって脳に良いのでは?って考え方は昔からあったんですが、新しい研究(R)では、
- 1日にブルーベリーとオレンジを2皿分ぐらい食べると、それで摂取できるフラボノールのおかげで長期的に認知機能が向上し、脳の容積も大きくなるんじゃない?
みたいな結論になってておもしろかったです。フラボノイドの摂取量が多いほど、脳血流が増え、神経の炎症が抑制され、結果として認知機能が向上するんじゃないか?みたいな話ですね。
この研究はイギリスの双子研究のデータを使ったもので、1,126名に認知テストを行いつつクロスセクション解析を実施。ついでに、224名の参加者でどんな食物を食べているかを調べ、さらに16組の双子を対象に「12年でどれぐらい海馬のサイズが変わったか?」をfMRIで調べたらしい。
すると、結果はフラボノールに有利なものでして、
- 縦断的解析では、10年間の加齢による変化の改善は、フラバノンやアントシアニンの摂取量の増加と相関していた
- クロスセクション分析では、フラバノンやプロアントシアニジンの摂取量が多いほど学習の向上と相関していた
- アントシアニンの摂取量が多いと、脳の実行機能が向上し、反応時間が速くなる可能性があった
- fMRIの研究では、アントシアニンおよびプロアントシアニジンの摂取量が多い人ほど、12年後の海馬の体積が大きかった
ってことで、やはりフラボノールってのは脳の働きに良いのだろうなーって印象ですね。まぁポリフェノールに限らず抗炎症効果を持つものであれば、長期的にはみんな脳機能にメリットがある可能性はありますが、やっぱ日常的に摂取しておきたいですねぇ。
ダークチョコレートでネガティブな気分が改善するんじゃないか説
上記とつながる話ですが、ダークチョコレートにふくまれるフラバノールもいろいろと良い影響が示唆されております。そこで新しく行われた調査(R)もダークチョコレートの話で、まず結論からまとめておくと、
- カカオ85%のダークチョコレートを3週間毎日食べると、ネガティブな感情が減る……のかも?
みたいになります。昔から「ココアのを飲むと気分が良くなるのでは?」みたいに言われてきたんで、この仮説をあらためてチェックしたんですよ。
具体的にどんな調査だったかと言いますと、
- 3週間のランダム化対照試験で、48人の健康な成人(20歳から30歳)を対象に、ダークチョコレートが気分と腸内細菌にあたえる影響を評価
- 参加者は、70%のダークチョコレート、85%のダークチョコレート、またはチョコレートを摂取しないグループに割り当てられた
- ダークチョコレートを食べたグループは、いずれも1日30gのチョコレートを、朝、昼、晩に10gずつ分けて摂取した
って感じです。その上で、全員のポジティブおよびネガティブな感情を測定し(PANASを使用)、腸内細菌の多様性などを評価したんだそうな。
それでは、結果を見てみましょうー。
- 何も食べないグループと比べて、85%のダークチョコレートグループは、ネガティブな感情の減少が見られた。ポジティブな感情については、グループ間の差はなかった
- 85%のダークチョコレートを食べたグループの腸内細菌は、3つの評価基準のうち2つで多様性が増加していた
だったそうでして、昔から言われてきた「ダークチョコレートって腸内細菌を改善して、そのおかげで気分に影響を与えるのでは?」って仮説と一致する結果だったわけですね。もちろん、両者の因果関係を証明するものではないものの、ちょっとおもしろいですね。
ただし、注意点としましては、
- 何も食べないグループにはプラセボが与えられていないため、85%ダークチョコレートグループの効果が思い込みでしかない可能性はある
- 70%ダークチョコレートのグループに明らかな効果が見られなかったため、そもそも有意な効果を検出するには力不足だった可能性もある
みたいなとこは大事なので押さえておきたいっすね。正直、これだけだとまだ判断しづらいのですが、とりあえず「ダークチョコは腸内環境によくて、おかげで気分にも良いのかも?」って仮説は覚えておいてもいいでしょうね。
テレビの見過ぎは脳を縮めるのか?
テレビばっか見てると頭が悪くなるよ!とか昔は言われたもんですけど、実際にこの主張が正しいのかどうかを調べたデータ(R)が出ておりました。
これは20年間におよぶ前向きコホート研究でして、CARDIAって調査に参加した599人を対象に、テレビを見る時間と脳の大きさとの関連を調べたものです(ベースライン時の平均年齢30歳、フォローアップ時の平均年齢50歳)。
参加者は、研究のスタート時に過去12カ月間の1日の平均テレビ視聴時間を報告し、その後で5年ごとに再レポート。研究の最後に、参加者はMRIを受けて、脳の総灰白質体積、およびいくつかの脳領域(前頭葉皮質、海馬、内嗅皮質など)の体積を測定したんだそうな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 調査期間中、 参加者は1日平均で2.5時間テレビを見ており、いろんな因子を調整してみると、テレビを見る時間が長い人ほど、全灰白質の体積および前頭葉皮質の体積が小さい傾向があった
だったそうです。もちろん、この研究ではベースライン時の脳体積を測定していないんで、時間による脳体積の変化を評価することはできないですし、「テレビで脳が縮むのではなくて、脳の体積の違いがテレビ視聴に影響を与えるのでは?」って考え方も十分に成り立ちますんで、そこはご注意ください。
ってことで、まだテレビで脳が縮むかは謎なわけですけど、なんらかの関係がある可能性は否定できないよーってことでひとつ。