歳を取ると代謝が落ちて、昔と同じぐらい食べても太っちゃう!はどこまで本当なのか?
「歳を取ると代謝が落ちる!」みたいな話をよく聞きますな。若いころはほっといても体脂肪が燃えるから食ってもスリムなままだけど、歳を取ると摂取カロリーを消費してくれなくなり、結果として太りやすくなっちゃうのではないか、という考え方ですね。私もアラフィフの世界に足をつっこみはじめてますんで、これが事実かどうかは気になっちゃうところです。
ってことで、近ごろ出た研究(R)では、「人間の総エネルギー消費量は年齢によってどこまで変わるのか?」ってのを調べてくれてて参考になりました。具体的には、
- 29カ国の6,421人(うち64%が女性)を調査し、自由に暮らしている人の1日の総エネルギー消費量を分析している
- 参加者の年齢は、生後1週間から95歳までのほぼ全寿命にわたっている
というわけで、本研究は、これまでに行われたヒトのエネルギー消費に関する調査で最大規模でして、類似のデータのなかではもっとも信頼が置ける内容になっているんじゃないでしょうか。参加者の1日の総エネルギー消費量を測定するためには二重標識水を使ってまして、この点でも精度が高めでいいですねー。
というわけで、分析の結果なにがわかったかを見ていきましょう!
- 筋肉量と脂肪量を調整すると、総エネルギー消費量は男女ともに生涯を通じてほぼ変わらない
- ただし、筋肉の量が多いほどエネルギー消費量は多くなり、成人のエネルギー消費量は60歳くらいまではほぼ一定で、それ以降は減少に転じる傾向が見られる。このパターンは男性でも女性でも変わらないが、それぞれの平均値の絶対値は男性のほうが高い(男性の方が平均して筋肉量が多いから)
- 筋肉の量は成人期に入ると一定になり、中年から老年期にかけてゆっくり減っていく。体脂肪率は中年期にピークを迎え、その後は一定の傾向を示す(老年期になると筋肉量と脂肪量がまとめて減っていくため、体脂肪率はほぼ同じになる)
- 加速度計による運動量の研究によれば、中年から老年にかけて身体活動は着実に減る。歳を取ってエネルギー消費量が減るのは、このせいかもしれない
そんなわけで、「60歳までであれば別に筋肉のエネルギー消費量は下がらない!」って結論でして、人によってはわりと驚きの結論かもしれません。世の中には、30を超えたら代謝がガンガンに下がる!みたいな発言もありますからね。
念のため、上記の話をもっと端的にまとめてみると、
- 一般に「歳を取るとエネルギー消費量が下がる!」と言われるのは、たんに活動量が減り、そのせいで筋肉が減ったからである可能性が高い
- 1日のエネルギー消費量はほぼ筋肉の量で決まるっぽいので、歳を取っても筋トレをしてれば問題が起きづらくなる(臓器の活動が低下する傾向もあるので、一概に筋トレをしてればOKって話じゃないですが)
- エネルギー消費量に男女の差はない。男女差があるように見えるのは、たんに筋肉量の違いによるもの
みたいになりますね。結局は「すべては筋肉だ!」って話でして、個人的にも「ちゃんと運動してれば大丈夫そうだから今後も筋トレをがんばろう……」って気分になりました。中年を過ぎても代謝にハンデがないってのは良い話ですよねー。
ちなみに、余談ですが、本論のグラフを見ていると、同じぐらいの年齢で同じぐらいの筋肉量を持っている人でも1日のエネルギー消費量に4倍近くの差が出てまして、「やっぱエネルギー消費量って個人差が激しいんだなー」とか思わされました。4倍の差ってのは相当なもんですからねぇ。
最後に本研究の教訓をひとことでまとめると、
- 年齢は言い訳にならないから、とにかく生涯筋トレだ!
みたいになりましょう。がんばろう……。