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今週末の小ネタ:酒でネガティブな感情はまぎれるか? ほうれん草のルテインでダイエットがブースト? 低脂肪乳、意外と意味ない?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

酒を飲んでもネガティブな感情は治らんぞ!みたいな話

やりきれないから酒を飲む!」みたいな人は少なくないかと思うんですが、新たに「酒を飲んでも気分はまぎれんぞ!」と主張するデータ(R)が出ておりました。

 

 

これはミズーリ大学などのテストで、実験デザインを軽くまとめると、

 

  • 110人の男女が参加し、そのうち58人が一般の社会人、52人が境界性パーソナリティ障害の診断を受けた人だった(境界性パーソナリティ障害の人は、飲酒問題を起こしやすいので実験対象にしたらしい)

  • みんなに3週間にわたって日記をつけてもらい、飲酒の有無、緊張、寂しさなど、さまざまなネガティブな感情を評価するよう指示。アルコールを飲んだ時は、「罪悪感や憂鬱感が薄れた」や「リラックスして落ち着いた気分になった」みたいに、どんな理由でアルコールを飲んだのかを評価してもらう

  • さらに、酒を飲んでから3時間の間に、酒でネガティブな感情のレベルがどう変わったかも調べる

 

みたいになります。アルコールがネガティブな感情をやわらげるかどうかの実験って意外となかったんで、貴重なデータになってるんじゃないでしょうか。

 

 

でもって、結果はこんなふうになりました。

 

  • アルコールはネガティブな感情をやわらげず、「ネガティブな感情を対処するために飲む」人は、かえって症状が悪化しやすい

 

  • アルコールは不安のスコアに影響を与えず、「不安や鬱に対処するために飲酒している」と答えた参加者は、その後、ネガティブな感情が増加していた

 

ってことで、現実にはアルコールがネガティブな感情の対策になるケースはほとんどなかったらしい(あくまで、今回の研究で用いられた不安や抑うつに関連する尺度とについては、ですが)。

 

 

まー、個人的にも酒で嫌な感情に対処できたケースはないなーと思ってまして、アルコールはポジティブとネガティブな感情のどちらをもブーストしてるだけなのかもしれんですな。いまんとこ、ネガティブな感情に立ち向かうには、結局は運動がベストな感じですかねぇ。

 

 

 

ほうれん草のルテインでダイエットがはかどる?

ルテインってのはほうれん草などにふくまれるカロテノイドで、抗酸化作用が高いおかげで「脳機能を改善してくれるのでは?」などとも言われてる成分のひとつです。

 

 

で、新しいデータ(R)は、「ルテインで減量がはかどるかもだぞ!」って結論になってておもしろかったです。

 

 

これは肥満の中年48名を対象にしたRCTで、みんなを2つのグループに割り当ててます。

 

  1. 低カロリー食+ルテインのサプリを飲む(1日20mg)
  2. 低カロリー食+プラセボのサプリを飲む

 

実験期間は10週間で、ダイエットの結果をチェックしたところ、

 

  • どちらのグループも同じぐらい体重とウエストサイズが減った
  • 体脂肪率の減少は、ルテインを飲んだグループの方が上だった
  • プラセボグループは筋肉が減ったが、ルテイングループにはそのような現象は見られなかった(つまり、ダイエットでも筋肉量が保たれた)
  • 内臓脂肪、総コレステロール、LDLコレステロールも、ルテイングループのみ減少していた

 

だったそうです。全体的にルテインに有利な結果が出てまして、研究チームは「ルテインがいろんな受容体に働いて、エネルギー消費が増加するのでは?」と推測しておられました。いちおうのメカニズムもあるみたいっすね。

 

 

もちろん、これは小規模&肥満体な人しか対象にしてないので、健康で普通体型の人がルテインで同じ結果を得られるとは限らないのでご注意ください。しかし、ダイエットのおともに、とりあえずほうれん草を増量しとくのはアリでしょうな。

 

 

 

低脂肪乳、意外と意味ない?問題

動物の脂肪の取りすぎは体に良くない!ってのは間違いなく、それならば「低脂肪牛乳は体に良いのでは?」って考えに行き着くのは当然のこと。それでは、本当のところはどうなのかってことで、「全乳 vs 低脂肪乳」について調べたデータ(R)が出ておりました。

 

 

実験の内容をチェックしとくと、

 

  1. 4歳から6歳までの子供およそ50人を集めて、3ヶ月間のRCTを実施

  2. 普段から全乳を飲んでいる子供たちを、1)全乳を続けて飲む、2)低脂肪乳に切り替える、のいずれかに割り当てる
  3. 子供たちには、1日に1食分以上の乳製品を摂取するように指示(1食分は、250mlの牛乳、40gのチーズ、200gのヨーグルトなど)

  4. 研究の前後に、子供たちの体組成と血圧を測って血液検査も実施

 

みたいになります。乳脂肪たっぷりな食事から低脂肪乳に切り替えたら、なにが起きるかを調べたわけですな。

 

 

で、結果です。

 

  • 全乳を摂取する子供と、低脂肪乳を摂取する子供のあいだに、体重、ウエストライン、コレステロール、血圧、血糖値に有意な差は見られなかった

 

  • 低脂肪乳を摂取する子供たちは、全肪グループと比べて、食事中のナトリウムの摂取量が301±109mg/d増加した

 

ってことでして、最終的には全乳でも特に子供たちが太ったわけではなく、健康への悪影響も見られなかったらしい。

 

 

この結果を受けて、研究チームは「健康な子供であれば、肥満や健康への悪影響を心配することなく、全脂肪乳の製品を安全に摂取できる」と結論しておりました。やっぱ低脂肪の意義ってそこまでないんですかねぇ……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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