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現代人がますます忙しくなってるのはなんでだべ?問題を考えよう!「処方箋編」ーーオリバー・バークマン「4,000週間」

 

前回のエントリでは「4,000週間」って本のなかから、「なんで現代人はそんなに忙しいの?こんなに技術が発達してるのに!」みたいな話をまとめてみました。ざっくりまとめてしまえば、

 

  • みんな現代文明のせいで効率を求めすぎてるからでは?

 

 

みたいな話でして、テクノロジーで便利になったはいいが、それが人間の「もっと達成せねば!」って気持ちに火をつけてしまうのが問題なのではないか、と。

 

 

ってことで今回は、バークマンさんが提唱するいくつかの処方箋を見てみましょうー。

 

 

 

処方箋1.苦痛を「人生の一部」として受け入れる

  • 多くの人は「やらなければならないことのほとんどをやる気がしない」という現象に悩まされることが多い。これは当然のことで、何か重要な活動をするときには自分の限界に触れねばならないため、実際には不快感が生じる可能性が高い。

    たとえば、クリエイティブなプロジェクトは自分にとっては重要かもしれないが、自分にその仕事ができるかどうか、他人がそのプロジェクトをうまく受け止めてくれるかどうかは、自分でコントロールできない。そのストレスよりは、SNSをチェックする方が良いのは当然と言える。

 

 

  • この問題をクリアするためには、「不快感は避けねばならない」という概念をあきらめて、「問題がある」や「不快感がある」という状態を、人生の障害ではなく「人生の本質」や「プロジェクトがうまく進んでいる証拠」としてとらえるほうが、実際には時間をうまく使うことにつながる。

 

 

 

処方箋2.「もっと仕事をしたい」という衝動を抑える

  • プロジェクトを1日か2日で終わらせようと大々的に取り組もうとすると、たいていの人は焦りに負けてしまい、なにも達成できないことが多い。事実、心理学者のロバート・ボイスによる研究では、学者仲間の執筆習慣を調査したところ、執筆を日常のささやかな活動にとどめている人のほうが、実際にははるかに多くの仕事をこなしていることがわかった。

 

 

  • 生産性が高い学者たちは、たとえ絶好調であっても、決めた時間が来たらあっさりと作業を止めて、決めたルーチンを守ろうとする傾向があった。「もっと仕事をしたい」という衝動を抑えれば、最終的にはより多くのことが達成できる。

 

 

 

処方箋3.退屈なものにひたすら時間をかける

  • 現代のテクノロジーは、人間から忍耐力を奪っている。「忍耐」というと古臭くて退屈なイメージがあるが、加速する世界のなかでは、「忍耐」こそが大きなことを成し遂げるための重要なツールになっている。

 

 

  • 忍耐力を鍛える方法として、退屈なものごとにあえて時間をかけるというやり方がある。たとえば、ハーバード大学の美術史家であるジェニファー・ロバーツは、すべての新入生にエドガー・ドガの絵画を3時間かけて見つめるように指示している。たいていの場合、みんな最初の1時間ほどは耐え難い苦痛を訴えるが、やがてドガの繊細なタッチや構図のおもしろさがわかりはじめ、さっと絵画を見ただけでは味わえない興味と時間の流れを味わえるようになる。

 

 

 

処方箋4.「無目的」な活動や趣味を始める

  • 現代人は、心理学者が「怠惰嫌悪」と呼ぶ現象にとりつかれているケースが多い。頭では休息が必要だとわかっていても、ダラダラすることへの嫌悪感があって適切に休むことができない。

 

  • ちゃんと「休む」ためには、まずは「休息はすばらしいものだ」という考え方をやめる必用がある。多くの人は、一週間の休暇の始まりにビーチで横になっても、「すぐにリラックスできなければ!」という気持ちが大きく、せっかくの休憩を「なんらかの価値を達成すべき場」としてあつかってしまう

 

  • そのためには、「無目的」な活動や趣味を始めるのもよい。たとえば、ロッド・スチュワートは、余暇を利用して歴史的な鉄道模型を作っているが、この趣味はミュージシャンとしてのブランドには何も貢献していない。このように、なんらかの目的を達成するための手段ではなく、それ自体を目的した活動をはじめるとよい。

 

 

 

処方箋5.量を固定する

  • 生産性を高めるためには、量を固定するアプローチも有効である。基本的に、あなたが「重要だ」と思うことの大半は達成が不可能なので、まずは「厳しい選択は避けられない」という前提に立って、意識的に重要なことを決める必用がある。

 

  • そのためには、「オープン」と「クローズ」というふたつのToDoリストを持つのが有効である。オープリストは、あなたが抱えているすべてのタスクを書き出したもので、ひたすらすべてを書き出すことに注力する。

    オープンリストができたら、そこからタスクを10個まで選んでクローズドリストに送りこむ。クローズドリストのエントリ数は10個までなので、これを超えてはいけない。また、クローズドリストには「既存のタスクが完了するまで、新しいタスクを追加してはいけない」というルールがある。この作業により、自分の限られた能力を把握し、それをどのように使うかを意識的に選択することができる。

 

 

 

ってことで、バークマンさんが考える「現代人の時間がない問題への処方箋」でした。時間術の本にしてはほぼタスク管理の紹介がないのがユニークですが、これもバークマンさんが「なんで現代人はこんなに時間がないの?」を掘り下げたからだと申せましょう。

 

 

退屈なものごとにあえて時間をかけることが時間管理のトレーニングになるってのは、個人的にも前から思ってたことでして、瞑想の訓練なんかも「結果をすぐに求めない心の構え」みたいなものを養ってくれますもんね。同じ絵を3時間見つめるってのは、ちょっと自分でもやってみるか……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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