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今週半ばの小ネタ:人間は架空のロボからほめられても伸びる? アレルギー体質の人は新型コロナにかかりにくい? たった1日の運動不足でも筋肉に脂肪が溜まる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 人間は架空のキャラからほめられてもスキルは伸びるのか?

京都のATRから「人間はロボットやCGからほめられても伸びる!」ってデータ(R)が出てておもしろかったです。どんな話かと言いますと、

 

  1. 96人の大学生を集めて、キーボードを特定の順番で叩くトレーニングをしてもらう

  2. その際に、デスクに置かれたロボットまたはPCのCGキャラが「さっきよりタイピングが速いです!すごいです!」とほめてくれる環境を作る

  3. なにもほめられずにトレーニングをした参加者と、トレーニングの上達ぶりを比べる

 

って感じです。でもって、どんな結果が確認されたかと言いますと、

 

  • ほめられたグループは、ほめられなかったグループに比べて、パフォーマンスががっつり向上していた(ほめがない場合は3.3%で、ほめられた場合は8.1%の改善)
  • 2台のロボットにほめられたグループは、1台のロボットだけにほめられたグループに比べて、さらにパフォーマンスが向上していた(1台の場合は8.1%で、2台の場合は14.5%の改善)
  • ロボットとCGを比べた場合は、ロボットのほうがパフォーマンスが向上していた(ただし有意差はなし)

 

だったそうです。ロボットでもCGでもなんでもいいから、架空の存在からほめられるだけでも人間はスキルの習得スピードが上がるのではないか、と。しかも、大勢のロボやCGにほめられたほうが人間はやる気が出るんじゃないか、と。これはおもしろいっすね。

 

 

まぁ「『ほめ言葉』じゃなくて『フィードバック』が効いてるのかも?」って可能性もありますけど、1台より2台のほうがパフォーマンスが上がってるところを見ると、やっぱシンプルに「人間はほめられたほうがモチベーションがあがる」ってことなんでしょうね。この結果を見て、あらためて「他人をほめまくることにするぞ!」とか決意をあらたにした次第です。あと、めちゃくちゃほめてくれるロボットとか開発してもらったら、ピアノの練習にも身が入るかなー、とか。

 

 

 

アレルギー体質の人は新型コロナを発症しにくい?説

アレルギー体質の人は新型コロナを発症しにくいのでは?みたいな報告(R)が出ておりました。こちらはクイーン・メアリー大学の研究で、どんな話かと言いますと、

 

  1. 15,227人(大部分が女性、95%近くが白人)に少なくとも1回の追跡調査票に回答してもらい、COVID-19の発症状況を把握し。家庭環境、仕事、ライフスタイルなども調べる

  2. 最終調査票に回答した14,348人(平均年齢は59歳)のコロナウイルス感染をチェックし、新型コロナにかからない人の特徴を調べる

 

みたいになります。あくまで観察研究なので原因はわからないし、COVID-19の綿棒検査の監視が行われていたわけでもないので無症状の感染を見逃していた可能性もありますが、なかかなおもしろい研究になってるんじゃないでしょうか。

 

 

でもって、結論を申し上げますと、

 

  • 湿疹などのアトピー性疾患がある人や、花粉症や鼻炎がある人は、新型コロナに罹患するリスクが23%低かった
  • 喘息を患っている人を含めると、ステロイド吸入器の使用を考慮しても、感染のリスクは38%低くなった
  • アレルギー体質で新型コロナ陽性により入院したのは32人だけだった

 

だったそうです。うーん不思議。

 

 

くり返しになりますが、あくまで観察研究なので、なんでアレルギー体質と新型コロナの発症リスクが関係したのかは謎です。アレルギーのおかげなのか、まったく別の理由があるのかはよくわからないんですよね。ただ、生まれつきハウスダストアレルギー&花粉症に悩む人間としては、「アレルギー体質でもたまには良いニュースがあるんだな……」とは思いましたが。

 

 

 

たった1日の運動不足でも筋肉に脂肪が溜まっちゃうのでは?説

順天堂大学から「たった1日運動しないだけでも筋肉に脂肪がたまるかも?」って話(R)が出ておりました。これはマウスとヒトのふたつを対象にした試験で、軽くデザインを見ておくと、

 

  1. マウスの片脚をギプスで固定して運動できないようにする

  2. 24時間後の変化をみる

 

って感じで運動できないマウスがどうなったかをチェックしたところ、たった1日の運動不足でもインスリン抵抗性が悪化し(糖をうまく処理できなくなった状態)、さらに筋肉内に脂肪の材料が倍増しちゃったんだそうな。どうやら、筋肉に脂肪の材料がたまるのがインスリン抵抗性をもたらしてるようで、「1日で!?」って気になるわけです。

 

 

 

さらに、研究チームはヒトでも同じような実験をしてまして、

 

  1. 人間の片脚をギプスで固定して運動できないようにする

  2. 参加者の筋肉をチェックして24時間の変化を調べる

 

って感じで調査を行ったところ、結果はほぼマウス実験と同じ。やっぱりたった1日の運動不足でも筋肉に脂肪の材料が蓄積しちゃって、やっぱりインスリン抵抗性が起きちゃったらしい。んー、これは怖いですな。

 

 

研究チームは、プレスリリースで「ステイホームや座りすぎといった不活動が注目される今、新たな生活習慣病発症予防法の開発に有用な成果である」とおっしゃってまして、私も「どんな軽い運動でもいいから体を動かしておこう……」とかあらためて思いましたねぇ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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