「お菓子!お菓子を食べたい!」を瞬時に解決する視覚化&脱中心化テクニック
「うおー!体に悪いものが食べたいぜ!」って衝動に襲われることは、誰にでもあるはず。お菓子やらポテチやらアイスやらラーメンやらへの衝動ってのは、空腹じゃないときでも私たちに渇望を生み出し、実際にそれらを口にしないと解決できなくなっちゃうんですよね。
その対策については、このブログでもいろいろ書いてますが、最近の研究(R)では、
- 体に悪いものが食べたい!は視覚化と脱中心化でクリアだ!
って結論になってて、使える内容になっておりました。どちらも耳慣れないワードかもですが、くわしくは後述するとして、まずは実験の内容を見てみましょう。
実験の参加者は108名の男女で、平均27歳でみんなイギリス人。まずはみんなに4種類のチョコレートが載った皿を見せたあとで好きな銘柄を選んでもらい、その後でチョコの包装を解き、匂いを嗅ぐように指示したんだそうな。その後、好きなチョコレートの「好き度」「食べたくなる度」を評価させたんですが、このときに全体を3つのグループにわけてます。
- 視覚化グループ:自分が小川のそばにいるところを想像してもらい、小川に流れる葉っぱの様子をひたすら想像する。
- 脱中心化グループ:自分が小川のそばにいるところを想像してもらい、その葉っぱに自分のなかに浮かんだ思考や感情を乗せ、それが小川に流れていくのを想像する。
- 対照グループ:なにもしない。
少しくわしい方はご存じのとおり、この脱中心化ってのは、第三世代認知療法でメジャーな「川と葉っぱのイメージ訓練」と同じものです。頭に「チョコが食べたい!」って気持ちや「うまそうなチョコ」のイメージが浮かんだら、その気持を葉っぱに乗せたイメージを浮かべ、それが下流に流れていくところを想像するやり方ですね。
で、実験の結果、視覚化と脱中心化を行ったグループは、「チョコレートを食べたい!」と感じる回数と強さが減りまして、ついでにチョコレートへの欲求の発生も抑えられたそうな。お菓子への強い欲求が、視覚化と脱中心化で改善されたわけですね。
それでは、なんでこういうテクニックが有効なのかって話をすると、第一に不健な食品への渇望は、「侵入→精緻化」ってプロセスで起きるからです。どういうことかと言いますと、
- ストレスを感じたり、お菓子屋の前を通ったりといった状態がトリガーになり、「あのチョコはうまかったなー」みたいな記憶が呼び起こされる。これが侵入の段階であり、ここで脳の働きをストップできれば、激しい渇望にはつながらない。
- 侵入の段階で何もしないと、今度はチョコレートの質感、におい、味わいが頭のなかで何度も展開され、どんどんイメージが詳細になっていく。これが精緻化で、このステージが進むほど欲求は強くなり、渇望を抑えるのは難しくなる。
みたいな感じです。トリガーが過去の記憶を引き出し、その記憶を脳内で掘り下げることで、不健康な食品への強い欲求が生まれるわけですね。
なので、不健康な食品への渇望を減らすには、侵入か精緻化のプロセスを妨害せねばならないのですが、ここで視覚化と脱中心化が役に立つんですよ。こちらも簡単に説明すると、以下のようになります。
- 視覚化:侵入が起きるためには、脳の想像力と記憶力を使ねばならないため、視覚・空間的なワーキングメモリを使った作業に取り組むとよい。たとえば、テトリスで遊ぶと食欲が減るのは、ゲームをプレイすることでワーキングメモリの容量が使われ、「チョコの記憶」を引き出す余裕がなくなるからだと思われる。
そのほかにも、食べ物とは関係がないイメージ(自然の風景、遊んでいる動物など)を思い浮かべてみても、同じような効果を得ることができる。つまり、侵入が起きたら(=なにか不健康な食品に接したら)、「ここは視覚化だ!」と考えてなんらかのイメージを呼び起こすとよい。
- 脱中心化:精緻化が起きると、人のなかには「食べたい!食べたくてしかたない!」という強い感情が起き、これに立ち向かうのはなかなか難しい。しかし、ここでチョコを葉っぱに流すイメトレをすると、「ああ……チョコの欲望は一過性の反応であり、必ずしも現実を正しく反映しているわけではないんだな……」といった認識が生まれる。
この練習を重ねると、多くの人は、すぐにチョコレートの渇望から自分を切り離すことができるようになる。なので、精緻化が起きたら(=不健康な食品への感情が暴走したら)、「ここは脱中心化だ!」と考えてなんらかのイメージを呼び起こすとよい。
というわけですが、基本的には「視覚化」の段階で食い止めるほうが楽なんですけど、つねに成功するわけじゃないでしょうから、「精緻化」対策も心がけておいたほうが良いでしょうね。
ちなみに、脱中心化の方法ってのは他にもいろいろあって、以前に紹介した「バスのイメージ」なんかも、よく使われますね。これは、自分のバスの運転手だとイメージだと想像するやり方で、「自分の思考と感情はバスの乗客のようなものであり、運転手としての仕事は、自分の思考が何を言っているかに関係なく、計画したルートを忠実に守ることだ」と考える、というものです。
ある研究(R)では、チョコレートバーの画像を見ながら3分間ほど「バスのイメージ」を使った参加者は、やはりお菓子への渇望が格段に減ったんだそうな。これはちょっとの練習で実践が可能なので、「困ったらバスか葉っぱだ!」と覚えておくとよいかもしれませんな。