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今週末の小ネタ:ストレスが下がる発酵食品と食物繊維の摂取量、泣いている赤ちゃんをあやすのに最適な方法、生まれつきのルックスでコミュニティに入れるかどうかが決まる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

ストレスを下げてくれる発酵食品と食物繊維の摂取量とは?

発酵食品と食物繊維でストレスが減る!ってデータ(R)が出ておりました。ストレス対策というと運動や瞑想が定番ですが、毎日の発酵食品と食物繊維にも、主観的なストレスを下げる働きがあるんだそうな。

 

 

実験の参加者は18~59歳の健康な男女45人で、まずは参加者を2つのグループに分けてます。

 

  1. 食物繊維と発酵食品の摂取量を増やす食事法を行う

  2. 普通の健康的な食事を続ける

 

ここで使われた食物繊維と発酵食品の摂取量を増やす食事ってのは、以下のようになります。

 

  • 食物繊維多く含む野菜や果物(玉ねぎ、ネギ、キャベツ、リンゴ、バナナ、オート麦など)を毎日6〜8皿、穀物を1日5〜8皿、豆類を週に3〜4皿を目標に摂る。
  • 発酵食品(ザワークラウト、ケフィア、コンブチャなど)を毎日2〜3食取り入れる。

 

とにかく食物繊維と発酵食品を増やそうぜ!ってタイプの食事でして、研究チームは、この食事法を「サイコバイオティック・ダイエット」と呼んでおられます。かっこいい……。

 

 

実験の期間は4週間で、最後にみんなのストレスレベルを調べたら、結果はこんな感じになりました。

 

  • サイコバイオティック。ダイエットを実践した参加者は、普通の健康食を実践した参加者と比べて「ストレスを感じにくい!」と報告した

 

  • また、食事法の徹底とストレスの感じ方には相関があり、4週間の間にサイコバイオティクスを厳格に実践した人ほど、ストレスの感じ方も軽くなっていた

 

  • 睡眠の質はどちらのグループでも改善されたが、サイコバイオティック食品を摂取している人の方が、睡眠が改善しやすかった

 

ということで、腸に良い食事を続けた人ほど睡眠が改善し、同時にストレスも減りやすかったらしい。

 

 

このような変化が起きる理由はまだ謎だらけですが、データを見ていると、サイコバイオティクス食を続けたグループは、腸内細菌が生み出す化学物質のレベルが激しく増えてるんですよね(腸内細菌のバランスはそこまで大きく変わったわけではない)。おそらく、これらの化学物質がメンタルに良い影響を与えているんだろうなぁ……と思われるわけです。

 

 

もちろん、あくまで小規模な試験なので予断は禁物ながら、腸がメンタルにつながっているのは間違いないところですからねぇ。上述した「食物繊維が豊富な野菜を1日6〜8皿」と「発酵食品を1日2〜3食」ってのを目安にしてみると良いかもしれません。

 

 

 

 

泣いている赤ちゃんをあやすのに最適な方法とは?

泣いている赤ちゃんをあやすのに最適な方法とは?」を調べたデータ(R)が良い感じだったのでメモ。これは理研の黒田久美先生らのチームによる研究で、泣いている乳児を落ち着かせる確率を高めるにはどうすればよいのかを調べてくれたものです。子育てにお悩みの方には、めちゃくちゃ有用な研究ですね。

 

 

研究の概要をざっくり申し上げますと、

 

  1. 赤ちゃん用の心電計とビデオカメラを用意する

  2. 「母親が赤ちゃんを抱っこする」「ベビーカーの赤ちゃんを母親が押す」「母親が赤ちゃんを座ったまま抱く」など、いろんな方法で赤ちゃんをあやしてもらう

  3. どの行動が、赤ちゃんをもっとも落ち着かせるかを比べる

 

みたいになります。赤ちゃんを落ち着かせるためによく使われる行動を比べて、なかでもどれがベストなのかをチェックしたわけですね。ちなみに、赤ちゃんの変化は、行動と生理の両面から1秒以下の精度で追跡してまして、これもまたすばらしいですね。

 

 

でもって、その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 大泣きしている赤ちゃんは、抱っこしたまま5分ほど歩き、その後で8分ほど座ったまま抱っこをキープ(この時点では、赤ちゃんを横たえない)。その後で赤ちゃんを横にして寝かしつけると、赤ちゃんが静かに眠り続ける確率が上がる。

 

という感じだったそうです。 シンプルに母親が抱っこしただけでは赤ちゃんの鎮静効果は得られず、抱っこしながらの散歩と、そこから8分のクールダウン時間が必要らしい。

 

 

 

「抱っこで歩くのが大事」ってのは非常におもしろい結論ですけど、これはヒト以外の哺乳類でも見られる現象で、たとえばネコ科の動物が乳児を口に加えて運んでいるときって、子供は丸くなって静かにしているじゃないですか。これは「輸送反応」と呼ばれる状態で、親に運ばれる最中の子供ってのは、おとなしく丸まることで、親の子育てに協力しているんだそうな。それと同じ反応が、おそらくヒトでも見られるわけですね。うーん、かわいい……。

 

 

というわけで、乳児のガン泣きにお悩みの方は、抱っこしながらの散歩と8分クールダウンをセットにしてみると良いかもしれません。お試しをー。

 

 

 

 

生まれつきのルックスで「コミュニティから排除されるかどうかが決まるかも?」という話

私たちが他人を評価する際は、おもに『温かさ』と『有能さ』を参考にする」って考え方があるんですよ。これは社会心理学で使われる定番の考え方で、

 

  • 温かさ=信頼性、親しみやすさ、親切さ、社交性など。

  • 有能さ=の概念には、知性、創造性、認識された能力など。

 

っていう2つの軸を使って、私たちは他人の印象を決めているんだよって話です。当然、「温かさ」ばかり高くて「有能さ」が低いと「この人は良い人だけど頼りないな……」と思われるし、逆に「有能さ」が高くて「温かさ」が低いと「この人は自信家だけど冷たい人だ……」と思われちゃうので、両者のバランスを取るのが大事。

 

 

これは、2000年代の初頭から何度も確認されてきた考え方で、個人的にも、かなり使いやすいアイデアだと思っております。「いまの自分は『温かさ』と『有能さ』のどちらの印象が強いか?」と考えてみるだけでも、自分の印象を調整するのに役立つんじゃないでしょうか。

 


で、スイスのバーゼル大学の研究(R)も、この『温かさ』と『有能さ』にまつわるものでして、まず大きな結論から申し上げますと、

 

  • 私たちの生まれつきの顔立ちは、『温かさ』と『有能さ』の印象を左右している。
  • そのため、生まれつきのルックスによって不公平が生まれてしまう

 

みたいになります。通常、『温かさ』と『有能さ』は個人の能力を示すものであるはずが、生まれつきのルックスも『温かさ』と『有能さ』の判断に使われるため、本人の能力とは無関係に印象が決まってしまうよーってことですね。

 

 

これがどんな研究だったかといいますと、

 

  • 合計480人の参加者に異なる男性の顔を提示する。この顔写真は画像処理がほどこされ、「温かさ」と「有能さ」の印象が変わるように操作されている。
  • 参加者はそれぞれの顔写真を2秒間見た後、「この人物がコミュニティから排除されるのをどれぐらい許容できますか?」を尋ねる。

 

みたいになります。研究で使われた顔写真は以下のようなもので、右側の写真が「有能さ」の高い顔で、上段の写真が「温かさ」が高い顔になるように調整されてます。それぞれ微妙な違いではありますが、なんとなくわかりますな。

 


 

でもって、調査の結果は、以下のようになりました。

 

  • たいていの参加者は、「顔が冷たくて有能そうに見えない人」を、「コミュニティから排除してもいいのでは?」と考えていた。
  • 一方で、「温かみがあるけど有能ではなさそうな顔の人」は、「コミュニティから排除しちゃダメでしょう」と考える傾向があった。

 

というわけで、みんな「冷たくて有能じゃなさそうな顔」はコミュニティから排除し、「有能じゃなさそうだけど人が良さそうな顔」はコミュニティに入れておこうと考えるわけですね。人間が顔で判断されがちなのは昔から言われてきましたが、コミュニティからの排除レベルまで左右されるのはチト怖いっすね。

 

 

研究チームいわく、

 

この研究結果は、人間の顔の第一印象が、道徳的な判断にも影響を与えることを示唆している。冷淡で無能そう顔を持つ人は、他者からの支援を受けにくく、最悪の場合、傍観者が積極的に排斥を試みることさえ考えらる。しかも、その判断は、すべては被害者の顔を一瞥しただけで行われる。

 

とのこと。ここらへんのバイアスは自分でも意識しといたほうが良いだろうし、ついでに「自分の顔タイプってどんな感じだろう?」ってところを自覚しておくのも重要かもですな……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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