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あなたのパフォーマンスを最大まで高める「正しい目標設定とは?」のメタ分析

 


 

スポーツに効く目標設定の方法とは?

仕事でも勉強でも運動でも、パフォーマンスを上げるためには目標設定が欠かせないのは当然の話。自分がどこに向かっているのかがわからなかったら、そもそも何をしていいかわからないですからね。

 

 

といったところで、新しいデータ(R)は、「スポーツに効く目標設定の方法とは?」ってところを深く掘り下げていて勉強になりました。あくまでスポーツに特化した研究ですが、その内容は、仕事や勉強にも十分使えそうなので、チェックしておくとよろしいかと存じます。

 

 

これは、過去の研究から27件(参加者数1,764名)をピックアップしたメタ分析で、「どのように目標を設定すると、スポーツのパフォーマンスが上がるのか?」って疑問について、わりと精度が高い結論を出してくれたものです。取り扱われたスポーツは、ダーツ、ゴルフ、バスケ、水泳、サッカー、ランニングなどで、幅広いスポーツに対する目標設定の有用性を調べてくれてますね。

 

 

で、すべてを分析したところ、まず全体の結論としては、「目標設定はスポーツのパフォーマンス改善」に中程度の正の効果が見られたそうです。効果量の大きさはd = 0.47でして、大まかに言えば「目標作成は効果がある」ってことですね。まぁこれは当たり前の結果ですな。

 

 

 

パフォーマンスアップにはプロセス目標が最強説

それでは、さらに具体的に掘り下げて、「どのような目標設定をすればパフォーマンスが改善しやすいのか?」ってところを見てみると、以下のような特徴がありました。

 

  • 他のすべてのタイプの目標(パフォーマンス、アウトカム、マスタリー、エゴ)よりも、プロセス目標のほうがパフォーマンスアップに優れている

 

プロセス目標ってのは、特定のゴールではなく、そこに到達するために必要な道筋に注目した目標のことです。たとえば、もっとテニスが上手くなりたいのであれば、「1週間に5時間練習してフィードバックを受け取る」ってのがプロセス目標になります。これは運動以外でも有効で、たとえば「料理が上手になりたい」ときは「30日間でレシピ本の料理をすべて作る」という感じで設定します。

 

 

念のため、その他の目標設定も説明しておくと、

 

  • パフォーマンス目標:「ランニングのタイムを20%縮める」とか「制作コストを半分にする」とか、目標の達成に必要な数値の改善を目的にする目標。

 

  • アウトカム目標:「ランニングの大会で上位に入る」とか「プレゼンで優勝する」など、結果にフォーカスするタイプの目標設定。

 

  • マスタリー目標:「ランニングに必要な心肺機能を10%上げる」や「プレゼンのトーク力を上げる」のように、自己の能力改善に特化した目標設定。

 

  • エゴ目標:「ランニングでライバルに勝つ!」「プレゼンで他社に勝つ!」みたいに、他人に勝つことを中心とした目標設定。

 

みたいになります。もちろん、これらのやり方も効果はあるんですけど、プロセス目標に比べれば威力は低い感じですね。

 

 

まぁ言われてみれば、プロセス目標以外のやり方は、どれも自分でコントロールできない側面が大きいので、そのぶんだけ失敗のリスクも高いですからねぇ。その一方で、プロセス目標は自分でコントロールしやすいので、そのおかげでモチベーションを維持しやすいんでしょうな。

 

 

 

 

短期、フィードバック、共同目標、近づく目標

また、このメタ分析では他にも使える知見を提示してくれていて、これまた参考になります。いくつか紹介しましょう。

 

  • 短期目標は長期目標よりもパフォーマンスが上がりやすい。短期目標と長期目標を組み合わせた場合は、ちょっとだけ効果量が上がる(あくまでほんの少し)。

 

  • 目標設定の効果は初心者(未経験者)のほうが格段に大きく、経験豊富な人への影響はかなり下がる(だいたい効果が2.5倍ぐらい違う)

 

  • 進捗状況のフィードバックを受ける場合も、大きなパフォーマンス改善効果が得られる

 

  • 参加者が自分で目標を設定するよりも、研究者と参加者が共同で目標を決めたほうが効果が大きくなった

 

  • 何かを避ける目標(「練習に寝坊しない」とか)よりも、何かに近づく目標(「タンパク質をもっと摂る」とか)のほうが効果は大きい

 

  • メンタル面への効果

    • プロセス目標は、一般的に自己効力感、内発的興味、満足感を高める

    • パフォーマンス目標は一般的に不安症状を減らし、自信、努力へのモチベーション、満足感を高める

    • マスタリー目標はしばしば不安症状の軽減と関与の増加に効果がある

 

 

ということで、いずれも「スポーツじゃなくても当てはまるポイントばかりだなぁ」って印象でして、上記のポイントをふまえて目標を設定してみるのはアリでしょうね。

 

 

 

まとめ

話をまとめると、このメタ分析が示す目標設定のポイントは、以下のようになります。

 

  • ゴールまでのプロセスに注目して、1週間から1ヶ月の短い期間で目標を立てよう!(「参考書を1日5ページ」とか「HIITを週2回1日10分」みたいな)

 

  • もしコーチや尊敬できる仲間がいる場合は、その人たちの意見も聞きながら目標を決めよう!

 

  • 同僚やコーチから定期的にフィードバックを受けたり、自分自身で進捗状況を記録して、一定期間ごとに目標は見直そう!

 

  • プロセス目標を作る時は、「何かを手に入れる」タイプの目標にしよう!

 

こうして見ると、私が目標を設定するときも、「本は1日4ページずつ80日で書く」みたいなやり方に落ち着いてますんで、それなりに正しかったんだなぁとか思いました。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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