鼻呼吸テープが【体に良いことだらけ!】はどこまで本当なのか?
読者さんから「鼻呼吸テープの記事が消えてますが、なにか圧力でもかかったんですか?」みたいなご質問をいただいたんですよ。
鼻呼吸テープってのは、睡眠時に口に貼り付けるテープのことで、↓みたいなやつですね。
口を強引にふさぐことで鼻呼吸をうながし、それによって睡眠の改善が見込めるとされております。
で、調べてみたら、確かに鼻呼吸テープのエントリが消えてますね……。もちろん圧力がかかったわけではなく、理由はよくわかっておりません。blogrerの問題のような気もしますが、そこらへんは謎。うーん、怖い。
というわけで今回は、気を取り直して「鼻呼吸テープはアリかナシか?」ってのをまとめておきます。ちょうど、最近はTikTokでも鼻呼吸テープが流行ってるようですし、新しい見解もふくめて書き直しておくのもよいでしょう。
さて、そもそも「口呼吸は良くない!」と言われるようになったのは、1957年にコンスタンチン・ブテイコ博士が、不健康な人は睡眠中に呼吸が荒く、口呼吸が多い事実を指摘したからであります。事実、2005年の研究(R)では、鼻呼吸ができている参加者は、口呼吸の人と比べて血中酸素濃度が10%高いという結果が出てたりします。
というと、「口のほうが大きいのになんで酸素不足になるの?」って疑問がわきますが、口を開けると舌根が後方に回転して喉が狭くなるんですよ。そのため、夜に口を開けると気道が狭くなり、いびきや無呼吸の原因になりやすいんですな。
その後も、口呼吸の悪影響を指摘する声は続きまして、血液中の酸素濃度の低下だけでなく、歯ぐきの出血や虫歯などの歯科疾患、高血圧などのデメリットが指摘されてたりします。かくいう私も、鼻炎が改善するまでは口呼吸バリバリだったので、あの時は1日中眠かったなぁ……って記憶がありますね。
では、この問題に口のテーピングが解決策になるかと言えば、現時点ではデータの支持がない状態です。いちおう2015年のパイロット研究(R)では、鼻呼吸テープが睡眠時無呼吸症候群の緩和になるかも?と報告してますが、サンプルサイズが小さすぎて有意な結論を導き出すことはできてないんですよ。
また、2022年に台湾の大学から発表された研究(R)では、鼻呼吸テープを使った人は口呼吸を「マウス・パフィング」に置き換えているだけだった、とも結論づけております。要するに、鼻呼吸テープを使ったからと言って口呼吸が改善するわけではなく、たんにテープで止めた口の両サイドを開いて、そこから空気を吸ったり吐いたりしているだけだったというんですな。
まぁ普通に考えれば当然の話で、テープで口を閉じたからといって、鼻づまりが急に治るわけがないですからねぇ。そうとなれば、
- 口呼吸の人ほど鼻が詰まっている可能性がある
- その状態で、テープで口をふさぐと、鼻呼吸ができなくて苦しい
- 苦しいから、閉じた口から無理やり呼吸をしようとする
みたいな状態になるのが当然でしょう。言い換えれば、鼻呼吸テープをちゃんと使える人ほど、そもそもテープの必要がない、という話になっちゃうわけですな。
逆に言えば、口呼吸しかできない人は鼻に問題がある可能性が高く、そんな状態で口を強引にふさいだら、気道が塞がれてしまうリスクもあるでしょうしねぇ。幸いにも、いまのところ鼻呼吸テープで大きなトラブルが起きた事例はないんですけど、それなりのリスクはあるだろうなーって気がしております(あくまで推測ですが)。
そんなわけで、個人的には鼻呼吸テープは積極的におすすめしておりません。イビキや無呼吸症候群にお悩みの方は、テープより先にお医者さんへ行くことをおすすめします。