運動後のドリンクは「ノンアルコールビール」が最強説
運動後の疲労回復のために、スポーツドリンクを飲む人は多いでしょう。しかし、残念ながら、いまのところスポドリにはかんばしい報告がなくて、
みたいな話を過去に取り上げてきたわけです。糖分と電解質の組み合わせでは、そこまで運動後の炎症や酸化ストレスはやわらがないみたいなんですよね。
では、運動の後はなにを飲むべきかってことで、「ノンアルコールビールが最強なのでは?」って研究(R)が出ていておもしろかったです。運動後のパフォーマンス、疲労回復、健康改善のためには、ノンアルコールビールの方がはるかに良い可能性が高く、通常のスポーツドリンクより完全に上かもしれないというんですな。
この研究は、ミュンヘンマラソンに申し込んだ男性277人を対象にしたもので、研究チームは全体を半分にわけて、
- 半数の男性には、レース前の3週間とレース後の2週間、ノンアルコールビールを毎日約1~1.5リットルずつ飲んでもらう。
- 残りの半数には、ノンアルビールと同じような味の偽ドリンクを飲んでもらう。
って感じに割り振ったらしい。そのうえで、レース前とレース後に数回の採血を行い、さらには全員に「レースのあとで風邪を引かなかったか教えてねー」と頼んだんだそうな(マラソンぐらいハードな運動をすると、そのあとで風邪を引きやすいので)。
すると、ノンアルコールビールを飲んだグループは、
- 偽ドリンクを飲んだグループよりも、風邪の発生率が3.25倍低かった
- 血液中の炎症マーカーも低く、免疫反応が全般的に改善されていることが示された
って違いが見られたとのこと。ノンアルビールで免疫システムの働きが改善し、そのおかげで運動後の炎症がおさまって風邪を引きにくくなったわけですね。すげー。
このような効果が確認されたのは、ノンアルビールにはポリフェノールが豊富だからです。ビールのポリフェノール量は昔から有名で、2022年に行われたレビュー(R)でも、
多くの研究が、適度なビール摂取が心血管疾患に有益であることを明らかにしている。しかし、ビールに含まれるアルコールの存在は、アルコール摂取が個人によってはリスクをもたらすことから、懸念すべき問題となりうる。
(その点でノンアルビールは)、酸化ストレスの予防(脂質およびタンパク質の酸化の低下)、内皮機能の維持(内皮機能障害の低下)、酸化LDLコレステロールの低下において、従来のビールよりも効果があることが示されている。
対照的に、従来のビールは、ノンアルコールビールと比較して、HDL-コレステロール値(心血管を守る要素として知られる)を上昇をより大きく誘導することが示されている。従来型ビールのポリフェノール含有量は、ノンアルコールビールよりも高い傾向にあるため、この効果はアルコール含有量のみに起因するものではない。
と指摘されてたりします。適度なビールは心臓や血管のリスクを下げると言われてきたものの、アルコールが体に悪いのも確実なので、それならば、ポリフェノール量が多少は減ってしまうとはいえ、ノンアルビールのほうが優秀なんじゃないかってことですね。アルコールには炎症を起こす働きもあるんで、それを省いたノンアルビールが、健康飲料として使える可能性は高いでしょう。
念のため、この研究は、ドイツのビール会社から資金提供を受けているですが、「サプリ会社がスポンサーになってる研究ってどこまで信じていいの?問題」でも書いたとおり、いまのところスポンサーの影響はそこまでなさそうなんで、個人的にはまぁ今回のデータも信じていいんじゃないかと。
研究チームいわく、
ノンアルコールビールは、運動からの回復のための合理的な飲み物になり得る。長時間の激しい運動の後、ノンアルコールビールは水分、ポリフェノール、炭水化物を供給してくれる。
とのこと。これを見ると、確かにスポーツの後にノンアルビールを飲むのはアリっぽい気がしますな。
ちなみに、2016年の研究(R)では、男性アスリートたちを集めて、運動の45分前にノンアルコールビールを飲んでもらったところ、その後の脱水症状は水を飲んだ場合と同じぐらいで、ナトリウムとカリウムの比率については水分よりも良好だったらしい。どうやら、ノンアルコールビールは、電解質バランスの維持にも役立つようですね。これで抗炎症効果も得られるんだったら、確かに最高かも。