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自然の中でエクササイズをすると頭は良くなるし、運動がより楽しくなるしで、良いことだらけよねーという話

 


このブログでは「運動は自然のなかで行うといいよー」って話をさんざん書いてます。いわゆる「グリーン・エクササイズ」の考え方で、緑があふれる場所をちょっと歩くだけでもストレス解消効果を得られると考えられているんですよ。

 

で、ビクトリア大学などが行った研究(R)もグリーン・エクササイズに関する内容で、ここで何を調べたかと言うと、

 

  • 室内の運動と自然の中での運動は効果が違うのか?

 

みたいになります。屋内の運動でも十分なストレス解消効果は認められているんですが、果たしてエクササイズの場所を変えただけで、メリットの大きさは変わるのかという問題を調べてくれたわけです。

 

この研究は30人の大学生を対象にしていて、みんなのワーキングメモリと集中力をテストしたうえで、建物の中や自然道を交互に15分ずつ歩かせた後、認知テストを繰り返したんだそうな。

 

すると、ほとんどのテストで「屋外の散歩」は「屋内での散歩」に勝ってまして、特にグリーン・エクササイズは、ワーキングメモリと集中力を大きく上げてくれたらしい。もちろん屋内でもストレスは解消されるものの、グリーン・エクササイズは脳の働きを激しく改善するかもしれないわけですね。

 

このような結果が出たのは、おそらく自然には以下の働きがあるからだろうとされております。

 

  • 自然のなかにいると、エクササイズで酷使された注意力が定期的にリセットされる。そのおかげで、私たちはより簡単に集中を取り戻し、推論の機能がブーストする。

 

  • 自然はエクササイズで興奮している人間の脳さえもリラックスさせるため、いろいろな心配事を打ち消すことができ、激しく回転する脳を静かにさせる。

 

これらのプロセスは、運動が脳に与える生理的なメリット(脳の血流や酸素の流れがよくなるなど)にプラスで発生するもので、やはりエクササイズの効果を最大化するには自然がベストなのかなーとか思うわけです。

 

ちなみに、近年は、グリーン・エクササイズの効果を検証したデータが増えていて、「自然の中のほうが運動をさらに楽しめるようになる」ってメリットが報告されてたりします。

 

 

  • 中国で行われた研究(R)では、運動不足の若い人を集め、公園かジムの両方でウォーキングを指示したところ、外を歩いたときの方がストレスがかなり軽減され、運動をより楽しめるようになったと報告している。

 

  • UCSDの研究(R)では、高齢の男女の活動を調べたところ、自主的に外を歩いた人は、屋内を歩いた人に比べ、1週間で約30分多く運動していた。

 

  • UIBKの研究(R)では、健康な男女にアルプスの山を3時間かけてハイキングするように指示。その後、別の日に、アルプスの傾斜をまねたトレッドミルで同じ量の運動をしてもらったところ、心拍数モニターの数値はトレッドミルよりも屋外のハイキングの方が大きかったのに、運動の楽しさはハイキングのほうが上だった。

 

 

ということで、実際には屋内より運動していたとしても、自然の中のほうが楽に感じられるわけですな。屋内よりも精神的な負担が軽いうえに、脳機能まで上げてくれるんだから、まことによいエクササイズだと言えましょう。

 

ちなみに、以上のデータをふまえて、グリーン・エクササイズを行う際は、以下の点にご注意ください。

 

  • 可能な限り自然が多い場所を選ぶ:多くの研究では、たとえ屋外で運動をしても、都市化された環境(商業地区とか繁華街とか)では、公園や森林のような緑豊かない環境での同様の運動よりも、メンタル改善の効果が格段に下がってしまう(R)。

 

  • 1回40分以上はあんま意味がないかも:2022年のメタ分析(R)では、公園や森林を15分ほど歩いたり、ゆるやかにジョギングしたりすると、かなり気持ちが落ち着くと報告されている。ただし、運動が40分以上続いたり、体力を消耗するぐらい体を動かしたりすると、同じメリットは得られなかった。

 

ってことで、グリーン・エクササイズを行う際は、できるだけ緑が多いところで5〜15分ぐらいの軽い運動(早歩きとかジョギングぐらいの)をするのがベストなんじゃないでしょうか。まぁ運動については、屋内だろうが屋外だろうが1日5分でいいからやったほうが良いのは確実なんで、あくまで「せっかく運動するなら自然のなかでやるほうがさらにメリットが多くていいですよー」ぐらいの提案になりますが。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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