寿命を予測するためにはシンプルなポイントに注目しようねーという研究の話
「自分は長生きできるんだろうか?」と思ったときには、だいたいみんな身体検査の結果なんかを参考にするわけです。血圧、コレステロール、肝臓の数値みたいなやつですね。
さらに、海外のゴリゴリ系バイオハッカーなんかは、数百のバイオマーカーを参考にしてたりすることもあったりして、自分の健康レベルを判断するのに凝り出すと、本当にきりがなくなっちゃうわけです。
もちろん、海外のバイオハッカーが使っている指標も健康を考える上では大事なんだけど、なにごともシンプルであるに越したことはなし。あまりに複雑な指標を使ってると、健康のことを考えているだけでも1日が終わりかねないですからね。もっとシンプルな指標で、自分の長生きレベルを判断できたほうが良いのは間違いないわけです。
では、『私たちの寿命を予測する最強の指標は何か?』ってことで、新しい研究(R)では、そのへんを調べてくれていて助かります。私たちの寿命を予測する要素はいろいろあるけど、なかでも最強のものはどれなのかを調べたわけですね。これがわかれば、とりあえず日常では、そのポイントにだけ気を配っていれば良いわけで、かなり楽になりますな。
この研究は、アメリカの「国民健康栄養調査(NHANES)」のデータを分析したもので、2011〜2014年に収集された50〜80歳の3,600人分のデータをチェック。寿命を予測するためによく使われる指標のなかで、最も寿命を正確に予測するものはどれなのかを調べたんですよ。
ここで比較の対象になった指標ってのは、以下のようなものです。
- 年齢
- 性別(男性と女性で健康リスクが異なる)
- BMI
- 人種・民族(遺伝的背景や社会経済的要因が健康に影響を与える可能性があるため)
- 学歴(教育水準は健康リテラシーや行動に影響する可能性がある)
- アルコール摂取量
- 喫煙
- 自己評価による健康状態(自身が感じる健康度は、主観的ながら予測力が高いとされている)
- 糖尿病
- 心疾患(心筋梗塞や狭心症などの病歴)
- 癌
- 精神疾患
- 脳卒中
- 癌(過去または現在の癌診断)
- 移動能力の問題(関節炎やその他の要因で日常的な移動が困難な状態)
- 身体活動量(アクティビティトラッカーで測定される日々の活動レベル)
でもって、分析の結果どんなことがわかったのかと言いますと、
- 寿命を予測するうえで最も重要なのは「身体活動量」だった!
- その次に大事なのが「年齢」で、続いて「移動能力」→「自己評価の健康状態」→「糖尿病の有無」→「喫煙」という順位だった。
って感じだったんですよ。日常の活動量が大事だってのは常識ですけども、こいつが年齢や病歴、喫煙を上回る予測力を持つってのは、ちょっと驚きっすね。
この研究結果を考える上では、当ブログでおなじみの「心肺機能(VO2max)」の重要性を理解することが、めっちゃ役に立ちます。簡単におさらいすると、心肺機能ってのは、運動中に体がどれだけ効率よく酸素を取り込めるかを示す指標で、健康の重要なバロメーターなんですよ。
事実、アメリカ心臓協会などは、2016年に心肺機能を「バイタルサイン」の一つとして位置づけるよう提言したほど。一説には、心肺機能が低いと喫煙や高血圧よりも死亡リスクが上がるとも言われてまして、それぐらい心肺機能ってのは死亡リスクを判断する大事な指標になるわけですね。
まぁ心肺機能の強さってのは、生まれつき決まっちゃうところも大きいので、努力だけでは完全にコントロールできないんだけど、日々の身体活動量であれば自分の意志でコントロールできるのが良いとこっすな。
また、もうひとつ「日々の身体活動量」が良いのは、一般的なアクティビティトラッカーでも十分に客観的な数値を計測できるところでしょう。この研究でも、手首に装着するタイプの安い活動量計を使ってますんで、大がかりな検査をしなくても済みますからね。とりあえず、安価なスマートウォッチを一個買って、日常の活動量をモニタリングしてみるだけでも、自分の寿命を予測するのには十分に役立ちそうであります。
そんなわけで、今回の話をまとめると、
- 「寿命を正確に予測する方法は何か?」という問いに対して、これまで多くの指標が考えられてきたが、どれも検査がめんどうだったりして実用性が低かった(テロメアの長さとか)。
- しかし、割と大きめなデータセットを分析してみると、実は「日常の活動量」ぐらいのシンプルな指標を参考にするだけでも、自分が早死にするかどうかのリスクは見極められるっぽい。
みたいになります。ちなみに、「日常の活動量」を増やす方法や、健康の維持に役立つ「活動量」の目安としては、以下のエントリも合わせて参照してみてくださいませ。