「ポジティブ思考」は有効だけど、「妥当性」がないと死ぬから注意してねーという話
このブログでは、「ポジティブでいよう!」みたいなメッセージをディスることが多かったりします。確かに、ポジティブ心理学の基本は「幸せな気分を作り出すこと」なんだけど、実際には単純に「明るいことを考えればOK」というほど甘い話ではないんですよね。
でもって、新しい研究(R)もポジティブな思考のダークサイドに関するもので、まずは大きな結論から申し上げますと、
- 「妥当性」がないとポジティブ思考は逆効果になるぞ!
みたいになります。簡単に言えば、ポジティブな思考が「自分にとって本当だ!」と感じられなければ、幸せどころか逆に気分を害することさえあるんだよーって話ですな。
では、どうすればポジティブ思考を効果的に活用できるのか? ってことで、研究チームは「自己検証理論」って視点を取り入れることを推奨しておられます。
この理論がどんなものなのかを理解するために、事例で考えてみましょう。皆さまは、以下のような状況に直面したことはないでしょうか?
- 朝起きた瞬間からスケジュールがぎっしりで、「今日は忙しいけど充実した1日になるはずだ!」とポジティブ思考を発動させる。
- しかし、実際には心の奥で「本当にそうかな?」という疑問が湧き、逆にモチベーションが下がってしまう。
これはポジティブ思考が裏目に出る典型例で、そのメカニズムを説明してくれるのが「自己検証理論」であります。この理論では、ポジティブな思考をただ抱くだけでは足りず、それを「自分にとって正しい」と感じることが不可欠だと考えるんですな。この事例で言えば、「今日は忙しいけど大丈夫!」と自分に言い聞かせても、どこかに「本当かな?」という違和感があった場合は、その思考がむしろ逆効果になるって話です。つまり、「その考えがどれだけ自分にとって正しいと感じられるか」が、ポジティブ思考を上手く使うための重要なポイントなわけで、これを研究チームは『妥当性』と呼んでいるわけですね。
この考え方を確かめるために、研究チームはこんな実験を行っております。
- 参加者に、自分の「強み」を書き出してもらう。この際、紙に書き出す時に使う手を、利き手か利き手ではない手のどちらかにランダムに割り当てる。
- その結果、利き手で自分の強みを書いた参加者は自尊心が向上した。一方、利き手じゃないほうで書いた場合には、効果がほとんどなかった。
この結果から何が分かるのかと言うと、「妥当性を感じる行動」がポジティブな効果を高めるカギだってことです。この実験では、利き手で書くことで「自分の考えは正しい!」って感覚が強まったんだと考えられるんですよ。
こう考えると、「過去の楽しい記憶を思い出して気分を良くする!」っていうメンタルの改善テクニックが裏目に出ちゃうのも、納得しやすくなるんじゃないでしょうか。要するに、ポジティブな感情が強くなるほど、その直後に湧き上がるネガティブな思考を「この考え方は妥当なのだ!」と感じられる可能性が高まるわけですね。たとえば、幸せな記憶」といったネガティブな考えが浮かんだ場合、それが一層「真実味」を帯びてしまうんですよ。
そうなると、「良い妥当性を感じるにはどうすればいいの?」ってところが気になりますが、そこで役に立つのが感情の力であります。例えば、ポジティブな感情(希望や感謝、喜びなど)は、思考の妥当性を強化する重要な役割を果たしてくれるというんですね。
具体的には、ネガティブな思考に妥当性を持たせないためにどうすればよいのかと言いますと、以下のような方法が提唱されております。
- 書き出して捨てる:ネガティブな思考を紙に書き出し、それを物理的に捨てるだけでも効果があったりします。ある実験では、紙に書いたネガティブな考えを捨てることで、その思考が心に与える影響を大幅に減らせたそうな(この方法は拙著「超ストレス解消法」で紹介しましたな)。この方法を使って思考を「具体化」し、それを「取り除く」だけでも心理的な変化が生まれるってのは手軽で良いですね。
- リアリティのあるポジティブ思考を選ぶ:ポジティブ思考を抱く際には、その思考が自分にとって「リアル」であることが重要。たとえば、「今日は素晴らしい日になる!」という漠然とした考えよりも、「今日は会議でうまく発言できるように準備したから、うまくいくはずだ」といった具体的で現実的な思考のほうが効果的だって話です。当たり前のようでいて、意外と見過ごしちゃう人が多いので、ぜひこれは心がけたいですね。
- 感情を利用する:希望や感謝といった感情は、妥当性を感じるための強力なツールになるとのこと。たとえば、「今朝は寒いけれど、暖かいコーヒーが飲めて幸せだ」といった小さな感謝の気持ちを日常に取り入れるだけでも、ポジティブな感情が妥当性を強化してくれるんだそうな。これも心がけておきたいところですね。
- ネガティブ思考を「問いただす」習慣をつける:ネガティブな思考が浮かんだときには、「これは本当に正しいのか?」と問いただしてみるのも有効。その思考を根拠づける証拠が少ない場合、それを妥当性のないものとして扱う練習をすると良いでしょう。
- 小さいルーチンをくり返す:自己検証理論によれば、妥当性の感覚は、繰り返しによって強化されるケースが多め。たとえば、朝のルーティンをきちんとこなしたり、仕事で小さな目標を達成することで、ポジティブな考えに対する妥当性を強めることができたりします。
ってことで、今回は自己検証理論のお話でした。「ポジティブでいれば幸せになれる」という考え方は確かに間違いじゃないんだけど、それを実現するには「妥当性」というプラスの要素が必要だってことは押さえておきたいところですね。自己検証理論の知見を活かすことで、ポジティブ思考をうまく使えるようになるでしょうね。