食後のインスリン量の増減が多いほど太る!は本当か?「インスリンは肥満ホルモンではない・その3」
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こないだ「インスリンは肥満ホルモンではない(1)(2)」って話を書いたところ、「インスリンの量じゃなくて増減率が問題なのでは?」ってご意見をいただきました。つまり、空腹時のインスリン量は高くてもいんだけど、食後のインスリンの増減が大きいほど太るんだ、と。
言われてみれば「インスリンは肥満ホルモンではない(2)」では、インスリンの量が慢性的に多い人を対象にした研究しか見ていないので、そのへんの疑問は残るところです。そんなわけで、インスリンの増減で肥満になるのか?について考えてみましょう。
ただ、そこそこマニアックな話になっちゃうんで、結論だけ知りたい方は一番下の「まとめ」に飛んでくださいませ。あと、わたしはあくまで「糖質制限ダイエット賛成派」ですので、くわしい人体の仕組みに興味がない方は読み飛ばし推奨(笑)。
本当にインスリンの上昇はデブの原因なの?
おさらいしますと、インスリンには脂肪細胞に脂肪を取り込ませる働きがありまして、たしかに食後のインスリン量が増えると同時に体脂肪も増えていく傾向があります。というと「これぞインスリンの上昇で肥満が起きる証拠!」って感じですが、これまたそう簡単には行きませんで。ここで面白いのが1997年の論文(1)で、マウスのサイトカインに関する遺伝子をカットして、肥満との関係性をチェックしたんですね。サイトカインは脂肪細胞に炎症を起こしてインスリン抵抗性を上げる(=体を太らせる)作用がありまして、こいつを効かなくすることで、 インスリンが急上昇しない特殊なマウスができあがるわけです(つまりインスリンの増減率はゼロ)。
もしインスリンの急上昇で肥満が起きるなら、当然、このマウスは絶対に太らないはずですが、現実はさにあらず。特殊マウスに大量の食事を与えたところ、普通のマウスと同じように太っちゃったんですね。
2007年にも似たような論文(2)がありまして、こちらはJNK1って炎症物質をカットして、インスリンが急上昇しない特殊マウスを作った実験。これまた普通のマウスと同じように太ってしまいました。
もちろん、どちらも状況が特殊すぎるって意見もありましょうが、ことインスリンに関しては、マウスと人間の作用はほぼ同じでして、どうにも無視するわけにはいかないデータかと思います。
ちなみに、人間の肥満とインスリンの増減率については、2004年の論文(3)が参考になる感じ。肥満と代謝の関係を調べた研究なんですけど、ざっくりと結論をまとめますと、
- 食後のインスリンが増減しにくいのに太ってる人は結構いる
- 食後のインスリンが増減しやすいのに痩せてる人も結構いる
って話です。これまた「インスリンの増減率が問題だ」って説には不利なデータではないかと。
まとめ
そんなわけで、ここではインスリンの上昇と肥満について考えてみました。ポイントをまとめると、- マウス実験ではインスリンの増減と太りやすさは関係がないという結果が出ている
- 人間を対象にした観察研究でもインスリンの増減と肥満の関係に矛盾する結果が出ている
って感じです。他にも、炭水化物と脂肪の太りやすさを調べたら差がなかったって話とか、食後にインスリンがドバドバ出る生活をしてるのに太らない人たちがかなりいるってデータなんかを見ても、やっぱり「インスリンの増減率が問題だ!」って説には素直にうなずけないところです。
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