ライフログは過去の平凡な記憶を喜びに変えるが、リアルタイムの喜びを減らす
ライフハック界隈でよく聞く「ライフログ」。毎日の食事や行動をすべて記録していく方法ですが、個人的には特定の目的があるときにデータを取るぐらいで、まともに実践したことはありませんでした。なにせ、イマイチ意義がわからなかったもんで。
と、そこで参考になりそうなのが、ハーバードビジネススクールから出た研究であります(1)。これは135人の学生を対象にした実験で、夏学期の初めに「タイムカプセル」を作ってもらいまして、その中に、ちょっとした会話を書き残した紙や、何気なく描いた落書きといった、超平凡な記録を入れさせたんですね。
当然、学生たちは、すぐにタイムカプセルへの興味を失っちゃったんですが、数カ月後に再び中をのぞいてビックリ。以前はなんとも思わなかった平凡な記録が、予想に反して非常に感動的なものに感じられたというんですな。
続いてもう1つの実験では、学生たちに以下の2パターンで記録を取ってもらいまして。
- 何もない平凡な日に彼氏(彼女)と行ったこと=平凡な記録
- バレンタインデーに彼氏(彼女)と行ったこと=特別な記録
すると、やはり数カ月後には、平凡な日の記録を読んだ学生のほうが、より幸福感を得ることができたそうな。
この実験から得られる教訓はと言いますと、
- 人は未来の自分の感情を予測するのが超ヘタ
- だから、何気ない日常でも記録するのは大事
って感じでしょうか。その点で、やはりライフログは重要みたい。
ただし、この論文には注意書きがついてまして、ライフログにはデメリットもあるというんですな。引用されているのは2013年の論文(2)で、旅行やイベントの写真や記録を残しまくっていると、あとでその出来事そのものを思いだせなくなり、ときにはニセの記憶が作り出されるケースもあるとか。
これは、カメラや記録に集中するせいで意識が現在に向かなくなり、現場の体験を味わう能力が下がってしまうのが原因らしい。確かに、旅行先で写真を撮りまくってたら、マインドフルにその場を楽しむことはできないですもんねぇ。
さらに、2010年の論文(3)では、「ライフログをSNSに上げたりするのって、不健全なナルシシズムを育てるだけじゃない?」って問題提起もされているようで、こちらも気になるところ。研究者いわく、「適切なライフログの量を調べるのはこれからの課題だ!」とのことなんで、当面はゆるく日常を記録をしつつ続報を待ちたいと思います。
credit: Marina Ćorić via FindCC