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糖質制限ダイエットの解説にありがちな6つの間違い

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 ここんとこ、「インスリンは肥満ホルモンではない」ってシリーズ(1,2,3,4)を書いてたら、「長い!」とのお叱りいただきましたので(笑)、「糖質制限ダイエットの解説にありがちな間違い」として、要点のみをざっくりまとめてみることにしました。



間違い1 インスリンを大量分泌させるのは糖質だけ!
食後にインスリンが出るのは糖質だけ!タンパク質と脂肪は太らない!って説ですが、これは明確に間違い。数々の実験により、肉や魚、チーズでもインスリンは急上昇することがわかっております(5)。具体的な例を出すと、牛肉はケロッグのシリアルよりもインスリンがドバドバ出ちゃう(6)。血糖値が上がらなくても、インスリンを出す食品はいっぱいあるんですよね。


間違い2 インスリンが大量分泌されると糖が脂肪に変わる!
たしかにインスリンには糖を脂肪に変える働きがあるんですが、この現象はよほど大量の炭水化物を食べない限りは起きないことが知られております(7)。じゃあ、あまった糖質はどこに行くかというと、筋肉のグリコーゲン貯蔵能力がアップしまして、そちらへ保管されることになります。


間違い3 糖質をとると基礎代謝が落ちる!
糖質をとることでインスリンが出て脂肪が燃えにくくなるって話ですが、これもいくつかの反証データがありまして(8)、どちらかというとインスリンレベルが高いほうが代謝が良い(=脂肪がよく燃えている)って結果が出ております。また、食後のインスリン値と代謝について調べた研究でも、やはり炭水化物と脂肪の比率は体のエネルギー消費とは関係がないとのこと。


間違い4 糖質はコカインと同じ中毒性がある! 
炭水化物はコカインと同じ中毒性があるので食べ過ぎちゃうんだ!って説。白澤卓二先生のお話(9) によりますと、


白砂糖や炭水化物を摂ると脳のA10神経系というところが刺激されます。すると、ドーパミンという物質が分泌されて、強い快感をもたらします。このメカニズムは、コカインなどのドラッグを服用したときとまったく同じです。

って仕組みで、これはこれで間違ってはおりません。が、実際のところ、ドーパミンは脂肪を食べても分泌されるんですよね(10) 。もっといえば、運動やお酒でもA10神経系は刺激されるので、糖質だけをドラッグあつかいするのはかわいそうな感じ。


間違い5 脂肪や肉で太るのは難しい!
肉好きなわたしとしては、この説が本当なら非常にうれしいんですが、炭水化物と脂肪の太りやすさをくらべた実験では、カロリーが多ければどちらも同じように太るって結果が出てしまいました(11)。もちろん、脂肪と炭水化物では体内の代謝はかなり違うんですけども、一歩引いて見ると、太りやすさには違いは出ないみたいです。


間違い6 インスリンが体重増加の元凶である!
糖質制限ダイエットの理屈は、糖質を摂る→血糖値が上がる→インスリンが出る→糖が脂肪になる→太る!というものですが、タンパク質でもインスリンは出ちゃうし、糖は脂肪に変わりにくいし、べつに代謝も落ちないしで、「インスリンこそ悪だ!」って主張にはムリがありそう。


まとめ
そんなわけで、「糖質制限ダイエットの解説にありがちな間違い」でした。「糖質制限ダイエットは新しい栄養学!」なんて主張もございますけど、実際のところは、そこまで理屈が確立されてるわけじゃないんだよーって話であります。


もちろん一方では、糖質制限ダイエットが良い成績を出しているのも確かなので、個人的には、インスリンよりも脳のセットポイント理論のほうが、糖質制限が効く理由を上手く説明できるんじゃないかなーと思う次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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