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筋肉は1年でどれぐらい増えるものなのか?

muscle

 

筋肉の成長に関するご質問をいただきました。いつもありがとうございます。内容を抜粋しますと、

 

ネットなどで調べると、筋肉の増加量は1日7gとか1年で3キロが限界だ、みたいな意見を良く見るのですが、この理屈ですと役者が3ヶ月で肉体改造とかはほぼ不可能な気がします。実際、筋肉というのはどれくらい増えるものなのでしょうか??

 

とのこと。確かに、この問題は、筋トレをやっている人には非常に気になるところかと思います。

  

 

で、結論から言いますと、「よくわからない」というのが 正直なところです。といっても実証研究がないわけではなくて、筋肉の成長スピードは個人差が大きすぎるので、ハッキリした平均値が出しにくいんですね。そのへんを見て行きましょう。

 

 

その1・遺伝の問題

筋肉の発達スピードを決める大きな要素が遺伝であります。人によってタンパク質の合成速度は大きく異なるので、自然と筋肉の発達にもかなりの差が出てきちゃうんですな。

 

 

有名なのは2011年の研究(1)でして、体格・年齢・食事などがよく似た若者たちを集めまして、彼らに12週間の筋トレをやってもらったんですね。すると、結果は以下のようになりました。

Muscle growth mirna

 

あまり筋肉がつかなかったグループ(白)にくらべて、 筋肉がとても増えたグループ(黒)は、実に4倍も筋肉量がアップしております。ほぼ同じ体格の人が似たようなトレーニングをしても、遺伝子が違うだけで、これだけの差が出ちゃうわけですね。

 

 

その2・体質の問題

これも遺伝と関わってくる話ですが、人の体質は大きく以下の3つに分けられます。

 

  • 外胚葉型:栄養の吸収が悪くて細身になりやすい
  • 中胚葉型:筋肉がつきやすくガッチリした体型になりやすい
  • 内胚葉型:代謝が遅いので脂肪がつきやすい
 

当然ながら、中胚葉型がもっとも筋トレの効果が出やすく、逆に外胚葉型は筋肉をつけるのには不利。具体的には1994年の論文(2)がありまして、外胚葉型と内胚葉型の若者を集めて、彼らに12週間の筋トレをやってもらったんですね。

 

 

すると、結果には大きな差が出まして、外胚葉型は320グラムしか筋肉がつかなかったのに、内胚葉型は1.6キロも筋肉が増えていたんですね。なんと5倍の差であります。

 

 

まとめ

そんなわけで、生まれつきの性質によって筋肉のつきかたは4〜5倍も違いますし、その他にも、

 

  • 食事の内容
  • 筋トレをやってる年数
  • 日常の運動レベル
  • 男性ホルモンの分泌量

 

なんかでもタンパク質の合成スピードは変わってきますので、明確な数字を出すのはまず不可能かと思われます。ハリウッドの役者さんが数カ月で肉体改造に成功するのは、

 

  • かつてハードに筋肉を鍛えたことがあるので、筋トレを再開したときに筋肉がつきやすい(俗に言う「マッスルメモリー」)
  • 単純にステロイドを使っている

 

の2つが大きいのかなーと思います(推測ですが)。まずは自分の体質を理解するのが大事って感じですかねぇ。

 

 

Muscle by Fernando Rojas Braga from The Noun Project


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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