「炭水化物で頭が悪くなる!」は本当か?
「炭水化物で頭が悪くなるという噂は本当ですか?」とのご質問をいただきました。これは、確かに一部の糖質制限ダイエッターの間からよく聞く話でして、おそらくは「『いつものパン』があなたを殺す」って本がネタ元かと思います。
確かに糖質制限はメンタルに効きそうですが…
著者は神経内科医のパールマターさん。穀物が脳に与える影響について述べた一冊で、とにかく「炭水化物は悪!アルツハイマーもパーキンソン病も炭水化物が原因!」との姿勢が貫かれております。本書によれば、推奨される糖質量は「1日60グラム以下」とのことで、なかなかのスーパー糖質制限ですね。
実際のところ、当ブログでも「糖質制限がメンタルの安定に効く」なんて話を書いてますし、糖質の量を総カロリーの10%以下に減らすと神経系の不調に効くってガイドラインも紹介してるので、アルツハイマーや認知症の方が試してみるのは良いことではないかと。
ただし「糖質制限が脳の病気に効く」からといって、必ずしも「糖質をとると脳がおかしくなる」って話にはならないように思います。というのも…
高炭水化物食でも脳の病気と無縁の人が結構いる
以前に書いた「糖質は必要な栄養素なのか、それともただの毒なのか? その1」のなかで、世界には、総カロリーの7〜9割を炭水化物にたよっているのに、いたって健康に暮らす部族が結構いるって話をご紹介しました。実は、彼らは糖尿病や肥満とは無縁なのはもちろん、アルツハイマーや認知症といった神経系の病気にもかからないことが知られているんですね(1,2)。
この一点だけを見ても、「炭水化物は脳に悪い!」説にはムリがあるかなーと思うわけですが、さらに2007年にネイチャージェネティクスに出た論文(3)では、炭水化物の分解能力が高いほど脳のサイズも大きくなるなんて仮説もあったりとか。どういうことかと言いますと、
- 炭水化物を分解する酵素(アミラーゼ)が発達する
- 糖質を手早くゲットできるようになる
- 脳が効率よくエネルギーを使えるようになる
- 脳が発達する!
って仕組みが提唱されております。この説が正しいかはまだ不明ですが、糖質のおかげで人間が賢くなった可能性も十分にあるわけですね。
まとめ
個人的には、小麦にふくまれるグルテンが炎症を引き起こして、それが脳へのダメージを与えるって話なら納得なんですけども、「すべての炭水化物が脳に悪い!」って主張になっちゃうと、どうにも信用するわけにはいかない感じ。白米なんかは炎症を起こす作用がないので、マイルド糖質制限の範囲におさまっていれば問題はないと思いますがねぇ。
credit: Reigh LeBlanc via FindCC