収入が多くなるほど不幸は減るけども幸福にはならない
これまで、いろいろとお金と幸福の関係について書いてきた当ブログ。新たに出た論文(1)によれば、収入が多くなるほど不幸は減るけども、決して幸福度は増えないんだそうな。
これはブリティッシュコロンビア大の研究で、12,291人の幸福度データを統計処理にかけたところ、収入が増えても幸福度には関係がない一方で、日々の悲しみや怒りといったネガティブな感情は減る傾向があったんだそうな。
なんかワケのわからない話ですけども、研究者によれば、
幸福と不幸は、完全に真逆の関係にあるわけではない。もちろん、幸福と絶望を同時にあじわうのはムリだし、その意味で関連性はある。
しかし、幸福と不幸は、それぞれが独立した状態だという証拠は少なくない。端的に言って、不幸が存在しないから幸福を感じるわけではないし、その逆でもないのだ。
とのこと。人間の心理のなかでは、けっして幸福と不幸は対義語じゃないんだ、と。
この説明で思い出したのが、「ファスト&スロー」で有名なカーネマン博士の2010年の論文(2)。このなかで、博士は、幸福には以下の2種類があると言っております。
- 記憶ベースの満足感:過去の体験や未来への展望をもとに感じる幸せ(例:去年のタイ旅行は楽しかったなぁ…)
- 経験ベースの幸福感:人生の一瞬ごとに感じる幸せ(例:いま食べてるタイラーメン超うまい!)
なんでも、「記憶ベースの満足感」はお金が増えるごとにアップしていくけども、「経験ベースの幸福感」は年収75,000ドルで頭打ちになっちゃうんだそうな。
この区別を使うと、「去年のタイ旅行は最高だったが、いま食べてるタイラーメンはまずい!」といった状態は確かにあり得るんで、幸福と不幸をまとめて体験することは可能ではあります。「経験ベースの幸福感」は、マインドフルネスに近い状態のような感じもしますね。
また、今回の論文のような現象が起きる原因については、
大量のお金が手元にあるほど、さまざまな不幸に対処しやすくなる。そのため、お金持ちには、貧乏な人よりも困難をコントロールできる感覚が生まれやすい。
たとえば、自宅の屋根に雨漏りが起きたとしよう。このとき、お金があれば簡単にトラブルに対処できるが、貧しい人は、数ヶ月にわたって雨漏りに悩むことになる。
とのこと。お金があるとトラブルに備えやすくなり、安心感が生まれるんだって話ですね。なんか保険の宣伝みたいですが(笑)
この研究から得られる教訓としましては、お金が手に入らないなら、とりあえずはマインドフルネスを訓練して、せめて「経験ベースの幸福感」ぐらいはアップさせよう!って感じでしょうか。どうぞよしなに。
credit: 401(K) 2013 via FindCC