「長生きしたけりゃデブのほうがいい !」は大間違い
肥満と健康に関するご質問をいただきました。
肥満のほうが健康という説についてはどうお考えでしょうか? 太り過ぎはよくないのでしょうが、過体重ぐらいなら逆に健康でもおかしくないように感じますし、そういう科学的なデータもあるんだそうです。
とのこと。確かに「肥満=不健康はウソだ!」って意見は昔からありますねぇ。日本では新見先生の「長生きしたけりゃデブがいい 」で有名になった説かと思います。
太りぎみのほうが死亡率は低い?
ネタ元になったのは2013年の論文(1)で、アメリカ疫病対策センターが288万人の健康データを解析したところ、BMIが25~30の過体重グループのほうが普通体重より死亡率が6%も低かったんだそうな。つまり、ちょいポチャのほうがスリム体型より長生きなんだ、と。
もうひとつ有名なのが2005年の論文(2)で、アメリカの成人約4万人分のデータを分析したら、過体重グループが一番長生きだったというんですね。ほかの指標を見ても、普通体重と過体重グループでは健康レベルにさほどの差はなかったらしい。
これが事実であれば、デブは問題なし!ダイエットのほうが体に悪い!って結論になりそうですが、残念ながら現実はそう甘くありません。というのも、上にあげた論文は、ここ数年で他の研究者からボコボコにされてるんですよ。
数値を補正したら「やっぱり太った人は不健康」
その代表例が、ボストン大学のアンドリュー・ストークス博士。2014年に彼が出した論文(3)によれば、従来の研究は参加者の「体重の変化」を考慮に入れてないから無意味だというんですな。
たとえば、肥満の人が糖尿病にかかって痩せたとしましょう。すると、この人は「痩せてても病気」のグループにカウントされてしまい、本当は肥満のせいで病気になった事実が消えちゃうんですね。
がんやアルツハイマーなどBMIの低下につながる病気は他にもたくさんありまして、単純に一時期の体重を見ただけで正しい数値を出すのは不可能。そこで、体重の変化を組み込んだうえで数値を補正したところ、
- 普通体重の人がもっとも死亡率は低く、BMIが上がるごとに死亡率も上がる
- 糖尿病や心疾患の発症リスクも、普通体重の人が一番低かった
- アメリカにおける死亡率の33%は過体重が原因になっている
って結果だったそうな(4)。なんとも常識どおりの結論ですねぇ。
この他にも、2013年にはハーバード大の研究者たちが「肥満でも健康なんてデタラメだ!」と声明を出したりもしてますし(5)、この説に関しては「間違いだった」って結論で良いのではないかと。もちろん標準体重だから健康とは言いきれませんが、何だかんだで肥満は不健康のトップ要因だと申せましょう。