体に良い体脂肪と悪い体脂肪を区別しておこう
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ひとことに「体脂肪」といってもいろいろありまして、それぞれ体に良かったり悪かったりします。
脂肪といえば、かつては単なるエネルギー貯蔵庫ぐらいにしか思われてなかったんですが、1990年代から研究が激しく進化。「実は体脂肪もホルモンを出してた!」って論文がどんどん出てきまして、いまではほぼ内分泌器官みたいな扱いになっております。
というわけで、気分よく暮らすには良い体脂肪となかよくなるのが大事。代表的なところを並べておきます。
皮下脂肪:見た目は悪いが体へのダメージは少なめ
皮膚の下につく脂肪。ほかよりも目立ちやすいタイプの脂肪で、お腹がたるんだり、腕がぷよぷよしたり、脇腹の垂れ下がったりする原因になっております。その点で見た目にはよくないものの、よほど増えない限りはカラダにあたえるダメージは少なめ。いっぽうではレプチンやアディポネクチンのように食欲と代謝をコントロールするホルモンを分泌する働きもあるんで、皮下脂肪を減らしすぎてもカラダに悪影響が出てくるんでご注意ください。
皮下脂肪のベストラインは、男性が15-10%で女性22-18%ぐらい。適度なレベルを保つのが大事であります。
内臓脂肪:体へのダメージデカめ
内臓のまわりにつく脂肪。ビール腹や太鼓腹の原因になる脂肪で、外から触ってカチカチだったら内臓脂肪がたまってる可能性が大であります。アラフォーを過ぎたオッサンによく見かけますな。いちおう内臓脂肪もレプチンとアディポネクチンを吐き出すんだけど、皮下脂肪にくらべるとかなり少なめ。いっぽうで全身に炎症を起こす物質(インターロイキン6)を激しく分泌させる働きを持っております(1)。何度も書いているとおり炎症は老化の最大原因のひとつなんで、ぜひとも内臓脂肪には対処しておきたいところです。
幸いにも内臓脂肪は皮下脂肪より減りやすいんで、普通に「カロリー制限+筋トレ」をやっとけば真っ先に消えていくはず。
肝臓内脂肪:体へのダメージ最凶
肝臓の内部にできる脂肪。要するに内臓脂肪の一種なんですが、さらに全身に破壊的なダメージをもたらすことが知られております。有名なのは2009年の調査(2)で、肥満の患者さんの肝臓内脂肪をチェックしたところ、
- 内臓脂肪の量が同じでも、肝臓内脂肪の割合が多いほうが、
- 悪玉コレステロールの数値が高い
- 中性脂肪も多い
- インスリン感受性が悪化しがち
って傾向が出たんですね。基本的には肥満になると肝臓の脂肪も増えていきますが、特に酒と果糖の摂取量が多いかたはご注意ください。
心臓周囲脂肪:体へのダメージ大凶
これも内臓脂肪の一種で、心臓のまわりにつきやすいタイプ。焼き鳥で鶏ハツをたのむと、たまに黄色い物質がたっぷりついて出てくるケースがありますけど、あれが心臓周囲脂肪です。こちらも肝臓脂肪に負けず劣らずの凶悪さで、炎症を起こす物質(インターロイキン6とかTNFアルファとか)を吐き出す量は、ほかの内臓脂肪にくらべてもかなり多め(3)。当然、心臓にもダイレクトにダメージをあたえるんで、早死にのリスクが高まることになるわけです。
こちらは運動不足が原因で増えやすいんで、心配な方はHIITで対処するのがよさげ。
筋肉間脂肪:運動機能をさまたげる脂肪
筋肉のあいだにつく脂肪。これが多いほど霜降り肉になっていくわけですね。
足の断面図。左が運動してる人の足、右が運動してない人の足
内臓脂肪ほどダイレクトな悪影響はないものの、筋肉間脂肪が増えると体を動かしづらくなるんで、どんどんエクササイズをやる気が起きなくなっていくことに。対策としては筋トレか最大心拍数の75%ぐらいの有酸素運動がオススメですが、ウォーキングだけでも筋肉間脂肪は減っていきますんで、ぜひ少しずつ活動量を増やしていただければと(4)。
殿大腿部脂肪:適量なら体に良い
尻と太ももにつくタイプの脂肪。これは「下半身の脂肪は健康で頭がいい証拠」にも書いたとおり、とくに女性にとっては代謝が良い指標になっております。また、殿大腿部脂肪には、パルミトレイン酸を吐き出す作用もあるのがありがたいポイント(5)。パルミトレイン酸にはインスリン抵抗性を改善する効果がありまして、やはり代謝の改善に役立ってくれるんですな。
もちろん、殿大腿部脂肪でも増えすぎれば悪影響は出てきますが、男性は体脂肪を15%以下、女性は体脂肪を22%以下におさえておけば問題なし。逆に体がうまく動くために役立ってくれます。
褐色脂肪:増えれば増えるほどよい
「痩せる脂肪」として取り上げられるケースが多い脂肪。肩甲骨のあたりなどに少量が存在しております。実際は筋肉に近い細胞でして、脂肪と違って自らエネルギーを作り出す働きが強め。おもに寒い外気に反応して熱を出し始めるため、「冷たいシャワーがダイエットとアレルギーに効く!」や「摂氏19度の部屋で眠ると脂肪が燃えやすくなる」って説の根拠になってたりとか。
とはいえ、努力で褐色脂肪を増やすのは難しいし、エネルギーの生産量もダイエットに役立つレベルではないので、あくまで「たまには冷たいシャワーでシャキッとするか!」ぐらいの感覚でいいかも。