良いアイデが浮かばないなら「サイコディスタンス」を増やせばいいじゃない
アイデアマンは作れる!
こないだ「良いアイデアを思いつくのに必要な要素」をいくつか並べましたが、その後、大事なポイントが抜けてたことに気づきまして。
というのも、「良いアイデアを思いつく力は天性のもの」と言われたのは昔の話。ここ数年の心理学の世界では「アイデアマンは作れる!」って考え方が普通になりつつあります。
なかでもよく聞くのが「サイコロジカルディスタンス」って言葉です。直訳すると「心理的距離」になりますが、かたっ苦しいので、ここでは「サイコディスタンス」と呼びます。必殺技みたいですけど。
心理的な距離によって発想は変わる
サイコディスタンスは、その名のとおり何らかの出来事に対するメンタルの距離のこと。この距離の遠さによって、アイデアの浮かびやすさが変わるというんですな。
たとえば、「5万円をもらえる」という出来事があった場合、
- 距離が遠い場合:1カ月後に5万円をもらえる=「美味いものを食うか…」
- 距離が近い場合:いま5万円をもらえる=「これで借金を返すか…」
といった感じで、同じ5万円でも心理的な距離によって発想が変わっていくわけですね。これがサイコディスタンスです。
遠距離のイメージを持つと問題解決力が上がった
で、良いアイデアを思いつくには、サイコディスタンスが遠ければ遠いほど吉。この現象については実証研究も豊富で、たとえば2009年の(1)実験では、132人の男女を2つのグループにわけて、まずは次のような説明をしたんですね。
- この実験で得られたデータは、ここから3km離れたインディアナの大学に送られます
- この実験で得られたデータは、ここから3200km離れたカリフォルニアの大学に送られます
要するに、あらかじめ参加者のメンタルに、異なった距離のイメージを植え付けておいたわけです。
その後、全員に「監獄の罪人がロープ一本で塔から抜け出す方法を教えてください」という大喜利みたいなお題を出して、アイデアの質に違いが出るかをチェック。すると、遠距離のイメージを持った参加者ほど問題解決が上手くなり、実際に良いアイデアを思いつきやすくなったんですな。
とにかく広々としたイメージが大事
ここでおもしろいのが、解決したい問題とは直接の関係がなくても、サイコディスタンスさえ遠くなれば良いアイデアが出てるとこですね。上記の実験では、ほかにも「天井が低い部屋より高い部屋で考えたほうが良い」って結果も出てまして、とにかく広々としたイメージが浮かべられれば何でもいいみたい。
こういった現象が起きるのは、人間の脳には、サイコディスタンスが遠くなればなるほど抽象的な思考が活性化するからであります。自分から遠いイメージに接することで、より発想が自由になっていくみたいなんですな。
つまり、創造性をアップさせる方法は超簡単。たとえば、
- 遠い国に出かける(というか遠い国の写真を見るだけでもOK)
- 壮大な時間の流れを描いたSFを読む(タウ・ゼロとか)
- まったくの異文化の人とコミュニケーションを取る
みたいな感じ。空間でも時間でもいいので、とにかく自分とはかけ離れたものに接するのはありかと思われます。なんか良いアイデが必要になったときは、ぜひお試しください。